元百合豚は異世界に転生する。
今回もよろしくお願いします‥‥
────そうそう、時系列的には今から十四年前くらいに遡る。
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百合の間に挟まろうとするクソ野郎の手によって命を落とした俺は、何の因果か転生を果たしていた。
アニメでよくあるような、そのままの肉体での転生ではない。赤ん坊からの転生という、これまた厄介なものだった。
家柄も厄介だ。何しろ、そこそこ知名度のある貴族の家系──レインルース家の長女に転生したのだから。
そう、長女に。
その事実に気がついたのは、二歳くらいの時だった。
転生者が二歳にもなれば、自分で歩くことも出来るし、なんとなくで色んなことが出来るようになる。勿論着替えだって。
一人で着替えられそうだったので、思いっきり服を脱ぎ捨て全裸になった刹那、あることに気がつく。
「な、ないいいいいいい!!!!俺の、俺の────!!」
二歳児が怒号を鳴らす昼下がり。
驚いたのも無理はない。なぜなら‥‥
「────息子が‥‥very strong my sonが‥」
俺が一生懸命に育ててきた息子が、突如として親元を離れたのだった。そんなことがあろうものなら、誰だって焦るし驚くだろう。
そんな感じで、俺は女として異世界転生していることが分かった。
なんか大事なものを失った気がしてならないが、変わってしまったものは仕方がない。
息子がいないのなら、いっそのこと一人称も俺から私に変えてしまおう。そうしよう。
次の日、私は家の中を探索することにした。
自分の部屋で子供用のおもちゃで遊ぶのは気が乗らない。まあ、一応理由付けとして人形はもっておく。
だが、そうなると自ずと暇な時間が増える。
なので、父の書斎か何かを探して、この世界について知識を蓄えておくことにした。
「うーん‥‥困った」
まず突き当たった壁は、無駄に家が広いということ。どれだけ進もうとも行き止まりがない。無限地獄のようだ。
手当たり次第にドアを開けるも、良い結果は得られていない。
「ここだ!!」
いや、キッチン。
「ここか!!」
いや、別のキッチン。
「ここだろ!!」
また別のキッチン。
「ここですわ!!」
四つ目のキッチン。
とうとう、二歳児のこめかみに青筋が浮かび上がる。次第に、人形を持っていた右腕が振り翳され‥‥
「同じネタは三度までだろうが!!ってどんだけキッチンあんねん!」
地面に叩きつけた。
今分かっているだけで四つ‥‥いや十個近くはあっただろう。そんなにキッチンがいるとは到底思えない。
下らないことに呆れつつ、また書斎を探す。
が、私はある匂いに釣られた。
キッチンから流れくる好物の匂いに。
「ここかな‥‥?」
とあるキッチン(!?!?)に入ると、そこには好物であるシチューを作っているメイドの姿があった。
白銀の髪に蒼色の瞳。胸はないけど、現世離れも良いところな、絶世の美女がいた。
「か、可愛い‥‥」
私は一目惚れをした。
あぁ、これが百合の始まりか。
ご覧いただき、ありがとうございます。
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