11月・母親至上主義!:3
母はそういう人だ。
恐らく、”自分の本の為に大切な学生の小遣いを叩いて買わなくてもいいでしょ?“と言いたいのだろう。
だがそれは公平と麻琴には当然通じない。
「何言ってんの?!買うでしょ?!買わなきゃ!!」
「芽衣さんの本だよ?!買って、サインしてもらわなきゃダメでしょ!!」
ほら、母がたじろぐくらい怒鳴られた。
「「サイン、してよね!!」」
「う……う、ん。……わかった」
二人に気圧されて了承すると、隙間から俺に助けを求めてくる。
「留衣……お腹、空いた」
「準備する」
どっちが親だか……城崎に言われた言葉を思い出した。
『どういう躾してんだ?』……甘やかしてる?仕方ない、俺は母に弱い。
母には笑っていて欲しいんだから。
翌日、俺と公平は学校帰りに本屋に寄った。
母の本は平台前列に並べられていたけど、積み上げられていたはずの本は残り4冊……。
「えーっ?!これだけ?!」
嘆く公平の隣で俺は母の本の横に積まれた本に釘付けになった。
[能見波留生・写真集]──能見の新しい本が母の本の隣にあった。
「ちぇー……ま、いっかぁ。他の店で足りない分買おう……留衣?」
隣で微動だにしない俺に気付いて公平が首を傾げてくる。
公平にも麻琴にも伝えていなかった。
「……親父、なんだって」
静かに口にして、本を手に取った。




