11月・母親至上主義!:2
長い付き合いだからだろうか、二人は言い合いをしてもいつの間にか仲直りしていたりする。
俺の心配はムダに終わる。
良い事だが、ケンカ越しで喋りだされると気が気でなく、間に挟まり戸惑う俺のことも少しは気にしてもらいたいものだ。
「留衣、芽衣さんの本って明日発売だよな?」
俺に笑われてバツが悪かった二人は大人しくノートと格闘(麻琴は別)していたが、暫くして飽き始めた公平が問い掛けてきた。
俺も解けない問題に嫌気がさしてきていたから、丁度良かったが、
「そうそ、明日!……でも明日って委員会があるのよね」
「ん?じゃあ、美希もか……なら麻琴の分も買ってきてやるよ何冊いる?」
「2冊!芽衣さん、サインしてくれないかな」
「お、それ頼んでみようぜ!」
と ウキウキと会話を進め、俺が口を挟む隙間がない。
「……仲良いな」
ボソリと呟くと「「何?」」と仲良く怪訝な顔をしてくる。
「何で2冊?」
「保存用と観賞用。当然でしょ」
「芽衣さんの初めてのイラスト集だからな!」
仕方なく解っていた事を一応尋ねたが、答えは想像通りで呆れる。
母は画廊の仕事と同時進行で出版本の仕事をしていた。
だから忙しく、夏に倒れたのだ。
(ただの空腹だったけど)
母にとって初めての個人イラスト集だし、俺だって楽しみにしている。
「留衣ー、腹減ったー」
自室からドアを開けながら声を届かせる母に、二人は効果音を鳴らして急いで立ち上がり
「芽衣さん、本持ってきたらサインしてくれる?!」
「サイン欲しいんだけど!」
と勢いよく詰め寄った。
「……買わなくても城崎さんから前刷り貰ってココにあるよ?1冊だけど」
ファン心理を理解しない言動に沈黙が流れた。