10月・大切だから大事:13
ゴミ出しをする子からゴミをもらい受けて歩くが……しまった、顔が判別出来ない。
クラスは、何組だっけか?
背は麻琴くらいだったような……などと考え、ボブショートを探して各クラスを覗いて回ると、運良く前方の扉から笠井が出てきた。
俺を目に止め名前を呟いたから気付けた。
笠井もゴミを捨てに行くというので、一緒にゴミ置き場に向かう……何故か取り巻きも3人ついてきた。
「あのさ、笠井さん友達多いよね?」
確かめてから本題に入ろうとする。
笠井は怯えているのか、大袈裟に頭を上下に振って頷き返してきた。
……そんなに怖いなら、誘わなきゃいいのに。
「そ。じゃあさ、悪いんだけど友達と参加してもらえないかな、後夜祭。麻琴がドタキャンされて相手がいないんだ。俺、麻琴と組むから」
簡潔に言葉にすると、笠井は微動だにしなくなり、代わりに取り巻きが騒ぎだす。
「何それ?!」
「酷くない?!」
「どういうこと?!」
「ああ、うん、ホント、ごめん」
「信じらんない!」
「最っ低!」
「有り得ない!」
「……うん、ごめん」
集団の女子は恐ろしい。
俺は素直に謝り続ける。
取り巻きは笠井を囲んで「可哀想」だとか、「酷すぎる」だとか口にしてきたが、反論出来るはずもない。
ドタキャンをする俺が悪いのは事実だ。
「ま、ことって……安住、麻琴?」
笠井は自分を慰め始めた取り巻きの中から、震える声を出してきた。
[へのへの]の[の]が揺らいで見える。
「う、ん。あの、ホント、ごめんな」
泣いてしまう……申し訳なく思い、焦る。
「……そ……ぉ」
返ってくる声が掠れて消えてしまう。