10月・大切だから大事:11
文化祭2日目は3時まで。
一般客が帰ると同時に片付けが始まり、夕方6時からは生徒と教員達とで後夜祭が始まる。
何とかこの空気を変えたい……少しづつ不機嫌になる公平と、冷めた目を座らせていく麻琴に挟まれて居心地が悪い。
「美希さんはね、インドに行ってたの」
麻琴は一拍おいてはっきりすっぱりと言い捨てた。
「インド?!」
思わず出た大声に二人から睨まれる……教室の隅なのだ。
声を落として麻琴は話す。
「ずっと行きたかったんだって。1年の時からバイトして卒業してから行く予定だったのに……どうしても落ち着かないからって、突然夏休みの終わりに飛んでっちゃったの!知ってた?あんたのせいでインドよ、インド!!自分が傷ついたからって勝手に振りまくって、付き合わされた人が傷ついてないなんて思ってなかったよね?他のバカ彼女達がどうだか知らないけど、美希さんはあんたのせいでインドよ!あんたはいいわよ、勝手に自滅してバカみたいに復活したんだもの。美希さんはガンジスで身を浄めたって笑ってたけど、3㎏も太ったんだからね!おまけに単位稼がなきゃ進級危ないかもってヘラヘラ笑うのよ!」
ん?……それは公平のせいになるのか?
なんとなくポジティブにしか聞こえないのは気のせいか?
「お土産もしっかり頂きました!真剣に想ってた美希さんに失礼よ、公平!」
麻琴はスマホを取りだし、付けてあるストラップを見せた。
……リアルなシルバーの象がキラリと光った。
ふんっ!と怒る麻琴に冷たい視線を投げ掛ける公平。
と、戸惑う俺……居たたまれない。
太陽光に当たってキラキラと光る象を突き付けられ、沈黙が通り過ぎる。
なんだろう……確かに、公平の態度は可笑しい。
他の元彼女たちとは会うとニッコリと返して話しもするが、さっきの彼女にはそれがなかった。
前も名前が出ただけで驚いていたような?
母と同じ匂いのした[美希さん]は麻琴にとっても大切な友人らしい事は解ったけど。
〈ひょっとして、公平って〉