10月・大切だから大事:7
「うー」と母は慰めに情けなく答え、じっとりと城崎を睨んだが、当の本人は素知らぬ顔で「じゃ、留衣君も帰って来た事だし、俺は帰る。芽衣、仕事しろ」と一睨みして後ろ手を振りながら帰っていった。
「くっそ、三白眼のクセに……バァカ、バァカ、城崎なんか楓さんに踏まれてしまえ!」
城崎が消えると、暴言を吐きながら母はスゴスゴと部屋に戻ってしまう。
「あぁあ、芽衣さんと文化祭が……!」
「残念……全く、融通の利かないヤツね!」
「全くだ、生け簀か無いヤツ!」
二人は意気消沈しながらも城崎の悪態には意気投合して暫く花を咲かせた。
この後の夕食時にも母と合流して[城崎バカ]談義は続く。
文化祭1日目は在校生徒のみで楽しむ。
1-2はクラスの席を半分に分けて、午前午後の2組に別れた。
席が近かった俺達3人は午前組で、クラスの[夜店ごっこ]の店員をする。
金魚すくいにヨーヨー釣り、綿菓子、ゴムボールすくい、射的など、祭りによく出る夜店の縮小版をクラスの中に構えた。
生徒だけだと気が楽。
多少バカな事をしても[ノリ]で乗りきってしまえる。
翌日の予行練習も兼ねて販売スキルを付けてみる──ハプニングだらけで騒がしいけど、充分楽しめた。
「あー、芽衣さんと回りてぇ……」
「はぁ……芽衣さんと遊びたい……」
3人で各クラスや部活の出店物を回りながら、公平と麻琴はボヤき続けた。
家では母がボヤく。
「いいなぁ文化祭……くっそ、城崎め……見てろよ!」
二人に文化祭の様子を聞きまくった母は夕食後、眉間にシワを作って部屋に籠った。
目がマジだ……何かしでかさなきゃいいが。