10月・大切だから大事:5
あれが[笠井理子]か。
やっぱり[へのへのもへじ]だな……俺の目、可笑しいのかな?
母と雅ちゃん、麻琴はまともに[顔]が解るのにな……[慣れ]かな?
そんな事を考えながら教室に戻り、公平と麻琴に報告した。
「はぁ?笠井理子と後夜祭?」
「ああ、さっき頼まれた。単位欲しいし、麻琴はもう決まってるし、お前不参加だろ?他に相手いねぇし。やっぱ俺怖いのかなー?震えてたぞ、笠井」
「はぁ……だろーなぁ。そっかぁ……笠井とねぇ……」
俺の細やかな疑問に公平は呆れたように返し、ブツブツと何か呟く。
失礼なヤツだな、否定してくれてもいいじゃないか……そう思いながら
「そういえば麻琴の相手って誰なんだ?いい加減教えてくれてもいいだろ?」
決めたといいつつ、一向にその名前を吐かない麻琴に問い掛けた。
1-2では[夜店ごっこ]をすることになったため、麻琴は[のれん]を教室の出入口に飾っていた。
俺達は黒板を飾っている。
「……委員会の、センパイ……センパイも相手いないって言ってたから」
チラリと横目で答えてきた。
どこか挙動不審なところが気になったが、
センパイが女子であるのは間違いがなさそうだ。
明日は早目に登校するように取り決められて、それでも通常の下校時間を大きくずらされての帰宅となった。
少し陰り始めた時間に帰り着くと、リビングで母と城崎が睨みあっていた。
「何やってんだ?」
「ちょっと聞いてよ、留衣!城崎さんが文化祭に行っちゃダメだって言うんだよ!酷くない?!」
帰宅を報せて姿を見せると母はブスッ垂れた顔をして泣きついてきた。