10月・大切だから大事:3
翌日から麻琴は追い駆けてくる男供に「私、後夜祭の相手決まってるから!」と言い逃げするようになった。
後夜祭のためだけじゃないような気がするんだが……麻琴がそれでいいようなのでそれは伝えない事にした。
「公平はどうすんだ?後夜祭」
俺は暗黙の制約として男同士の参加不可というルールがあると麻琴に聞いて公平に尋ねた。
だよな、男子より女子が断然多いんだ、男子同士で組むとあぶれる女子が増えるもんなと、納得する。
[友達彼女]達と別れてから公平はめっきり大人しく、女子とつるむ事がなくなった。
「ん?俺?別にイベント単位いらねぇし、不参加で済ます。留衣は単位取って置かないと
後が大変だろ、頑張れよ」
ニヤっと笑って返してくるが、『別れても友達彼女は友達』。
そう言っていた通り、連日、公平の元には次々と女子がやって来た。
「ごめん、俺参加しないから」
と申し訳なさげにして答えると
「そうなの?じゃぁ……間くんは?」
と俺に振ってくる。
図太いな……誰でもいいんだな。
呆れている様の俺に気付いたのか
「ああ、留衣はダメ。相手決まってるから」
と勝手に公平が断りを入れる。
助かるけど……俺、相手いませんけど?!
「そっかぁ……残念」
悄気た振りして去って行く姿にそんな事言える訳もなく、無言で見送る。
「だから嫌なんだよ、留衣を女の子達に会わせるの」
その後ろ姿に一瞥を送り、ため息とともに吐き出す言葉に俺は首を傾げる。
「留衣って無口なだけなくせにモテるんだよな。遊びたいってコ、一杯いてさ、俺じゃなくて留衣と仲良くし始めちゃったら俺の立場なくなるっつーの」
公平は苦々しい顔でボヤいた。
なるほど……公平には公平の、プライドがあるらしい。
当然だろうけどな。
こうして徐々に文化祭&後夜祭に向けて校内の生徒たちはソワソワ感を増していった。
文化祭1日前、公平のガード(?)を抜けて俺は呼び出しをくらった。




