9月・真実と事実:21
「だから、私、誰にも嫌がらせなんてされてないわよ」
麻琴が憮然として言い切った。
「じゃ、なんであん時教室から出て行ったんだ?そんなに俺と組むの嫌だったのかよ?」
俺は納得がいかなくて、拗ねているような態度をとった。
「そ、そうだよな、それに、何で笠井を探すんだ?仲悪いんだろ?」
何処か戸惑いつつも、公平は俺の問いに合わせてきた。
麻琴はまた口隠りながらボソボソと話す。
「だって……私知ってるから……笠井さんが留衣と組みたいんだろって。だから私と組んだらまた泣くんじゃないかなって……先に笠井さんに留衣を誘うように言わなくっちゃって思って。そしたら美希さんとぶつかって制服濡れちゃったし、丁度、貧血気味だったし、保健室で寝てようと……」
「はぁ?」
「だって、笠井さんが留衣の事好きだって知ってるし、単位欲しさに留衣と組んだりしたら、また笠井さんたちに睨まれて文化祭が楽しくなくなるでしょ?折角、あの人楽しみにしてるのに!」
「何で笠井が楽しみにしてるって判るんだよ?」
「時々、留衣の事見てるし……委員会で一緒だから、話しして……」
「……仲良いんじゃないのか、それ?」
「仲良くなんかないわよ!夏休みにだって、言い合いになって水掛けまくられて大変だったんだから!勝ったけど!」
どうやら麻琴は笠井と[友達]らしい。
ふんっ!と鼻息荒くする麻琴に何故だか笑いが込み上げてくる。
「ああ、でも笠井さんじゃないけど、時々嫌がらせはされるわよ」
麻琴は思い出したようにまた口を尖らせた。
「「誰に?!」」
俺と公平は声を揃えて目を見開いた。