9月・真実と事実:17
どれくらいだろうか、「うーん」と考えていた公平がふいに真剣な顔で
「留衣、本気で麻琴と付き合ってる事にすれば?」
なんて言うもんだから、目は開いたまま口も半開きになり、顔面凍結してしまった。
手元に転がる雑誌を拾って丸める。
「うん、冗談だ」
ゆらりと立ち上がり公平を見下ろす。
「落ち着け!冗談だって!」
ペコンっ!!
「……真面目に話す」
公平は頭を擦りながら床の上で正座した。
「麻琴、どこ行くんだ?」
「職員室だけど?」
翌日、教室から出ていこうとする麻琴を呼び止めた。
首を傾げる麻琴について俺と公平は立ち上がる。
怪訝な顔をしたまま先に立ち、麻琴はスタスタと歩いて目的地に向かう。
職員室に入り、用事を済ませるまで廊下で待ち伏せた。
俺達が出した[結論]は『何もしない』事。
ただ何もしないのではなく、麻琴が言わないのだからこちらも聞き出したりしない。
代わりに[目を離さない]。
つまり、麻琴が危害を加えられないように常に側に居続けるという事だ。
麻琴が動けば俺達も動く。
登下校は問題ないだろう。
授業中も、隣に俺、斜め後ろに公平で見張れる。
休み時間──麻琴が立てば立ち、歩けば歩く。
行き先がどこであれついていく。
職員室、特別教室、図書室、女子更衣室にトイレまで……。
「何なの?」
トイレに立った麻琴は行き先を聞かれて流石に問い返してきた。
「別に、気にするな」
にっこりと笑って答えた公平に目を細めて、それでも(当然だが)トイレに行く。
出て来るまで女子トイレの前に居ると、廊下を行き交う生徒に不審な視線を向けられた。
恥ずかしいが、仕方ない、麻琴の為だ。