9月・真実と事実:16
俺が人付き合いを疎かにした罰で麻琴が被害を受けているのか?
いつも一緒にいるから、弱い(?)麻琴の方に嫌がらせを?
「いやいやいや……お前[バレンタイン]って知ってるか?」
「バカにすんな、知ってる!毎年母と雅ちゃんに貰うぞ、チョ……コ……ん?あれ?まさか、そうなの?」
「そう!ストーカーってのは、好きな相手を執拗に追い詰めるヤツの事を言うの!笠井はお前の事が好きなの!」
半場怒鳴るように、呆れ果てた公平はスマホに映る女子を指差して説明してきた。
そこには[へのへのもへじ]が、笑ってはいないが、映っている。
「公平くん、その写真どうしたの?」
「友達彼女にメールして送って貰いました。コホン……これで解ったか?恐らく、麻琴に嫌がらせをしているのは[笠井理子]だ」
「いや、なんで麻琴が嫌がらせを受けるんだ?そいつ、俺に気があるんだろ?」
『気がある』なんて言葉、自分で言うと恥ずかしいな。
ふん、と胡座を組んで、腕まで組んで公平は偉人の如く[いい顔]を作った。
「俺の想像だけどな、笠井は留衣の側に居る麻琴が鬱陶しいんだ。自分には何も返事してくれないのに、麻琴はいつも留衣の側に居て、離れないだろ?まぁ、それは芽衣さんが居るからだけど、そんな事俺達以外に知らないじゃないか。麻琴の男嫌いも知られてないしな。というか、俺達とつるんでる時点で男嫌いとか思えないだろ」
確かに。
公平の発言は正しい。
麻琴は母に会う為にウチに来るし、ウチで飯食って過ごす。
俺や公平には興味がない。
だから登下校も自然と一緒だし、居る事がほぼ[当たり前]だ。
それを可笑しいとは、当人たちはまったく思わずにいる。
これが[慣れ]なのだろう。
だけどそのせいで[嫌がらせ]はないだろ?
「じゃ、俺がこの笠井に話しを着ければいいんだな?」
「いや、それはヤバい。お前、笠井に何て言うんだ?」
「麻琴に手をだすなって」
「直球だな。それじゃ麻琴と付き合ってるって言うのと同じだろ。留衣が出ていけば悪化しかねない」
「じゃ、どうすればいいんだ?」
俺の問いに公平は静止して悩みだした。
そこまでは考えてこなかったようだ。