9月・真実と事実:15
何故[嫌]なのか解らないが、確かに公平が付き合っている女子を俺に紹介してきたことは全く無かった。
「それで、彼女たちが[留衣にストーカー憑いてる]って言ってた事を思い出したんだ」
すとーかー?
「なに?」
疑問符をたてる俺に公平はスマホを差し出してきた。
そこには弁天高の制服を来たボブショートヘアーの……[へのへのもへじ]女子が映っている。
「誰だ?」
「1-4、笠井理子。小学も同じ、中学も同じ。クラスは違ってたけどな」
かさい、りこ?
「……知らねぇなぁ」
「だろぅなぁ……お前、1度この子にチョコ貰ってんぞ」
公平は呆れた顔で面白そうに言った。
チョコ?
暫く頭を働かせて記憶を遡ってみた。
うー……んと唸る俺に
「小学6年だったかな、下校してる時に呼び止められて……」
「ああ、あれか」
と促されて脳裏に浮かんだ過去の記憶。
確か寒い日で、麻琴が風邪引いて休んでた。
公平と二人で帰宅途中に、名前呼ばれて振り向いたらリボンの掛かったチョコの箱を貰って──
「母にやった」
帰宅すると母がチョコくれて、嬉しくて、替わりに貰ったヤツをあげたんだ。
「あん時母が『寒かったでしょ』ってホットチョコ作ってくれたんだよな」
あれは美味しかった──感慨に耽ると途端に引き戻される。
「そうじゃなくて、その時の子が、笠井理子!お前の[ストーカー]!」
この子が?
「なんで?」
記憶に残っていない事で責められると困る。
「留衣、あのチョコのお返しとかしてないよな?」
「お返し?必要あったのか?もしかして、それで恨まれてるとか?!」
あの時は腹も減っていて、それに気付いて好意でくれたものだろうけど、それに何かを返してなければならないとは知らなかった。
でもちゃんと礼は言ったぞ。