9月・真実と事実:14
夕食が出来上がるまで母に会う事もなかったから、食事時には平常心で居られた。
夕食にはいつもののように公平がやって来た。
「麻琴の件、目星がついたぞ」
食後に俺の部屋で公平はスマホを振りながら伝えてきた。
「早いな、どうやったんだ?」
「友達彼女は円満に別れられるってのがコツだ。別れてもお友達」
公平はベッドに座って自慢してくる。
それはいい事……なのか?
まぁ、本人がいいなら問題はないだろう。
呆れる素振りを隠してローテーブルの側に座る。
「前に留衣に気がある子がいるって話しただろ?あれ、女の子に聞いたんだ。その時その子にも麻琴の事聞かれたんだけど」
「お前の彼女に?なんで?」
「留衣はホント、疎いよな」
公平の呆れた声に少々ムッとする。
「怒るなよ、ホントの事だろ。ま、つまり、麻琴は自分で言うほど女友達がいない。常に俺達と一緒に居て、留衣とベッタリで、端から見たら2人は[彼氏彼女]に見える」
「……はぁ?!」
「だから、留衣と麻琴が付き合っていると。俺はほら、沢山[彼女]作ってたし、仲良し3人組の中で俺は[邪魔者]じゃないのかって、心配して話してくれてたんだけどな」
公平の報告は俺の知らない[他人の目]を報せるものだった。
そもそも[彼氏彼女]という枠組みがよく解らない。
一緒に居るだけでその枠に填められるというのが気に入らない。
「彼女たちに絶対聞かれてたのが『安住さんは本命じゃないよね?』と、『留衣くんと安住さんの関係は?』だったから、しっかり俺とは『ライバル』で、留衣と麻琴は『友達』だって納得させてたんだけどな、よく言われたんだよな『私も一緒に仲良くしたいな』って。絶対嫌だ!って断ってたんだけどな」
ヘラヘラと笑いながら話し続ける姿に口が挟めない。