9月・真実と事実:9
晩飯は家で食え!などと、言うのも面倒臭い。
通路へと消える公平の背中を見送り、リビングのソファーで気持ち良さげに寝ている麻琴に目を向けた。
自分で『同性受けが悪い』というくらいだ、相手は[女子]に違いない。
女子相手なら公平に任せるのが一番だ。
俺はどうにも女子が苦手で、クラスの女子の顔も覚えていないし、廊下で擦れ違っても気付かない。
全て[へのへのもへじ]に見える。
付き合いが長いからか?
麻琴の顔は判るぞ……うん、母とも雅ちゃんとも違うけどな。
黙っていれば可愛い顔なんだろうな……黙っていれば、な。
麻琴を見ていると睡魔が忍より、欠伸を溢して俺は部屋に入ってベッドに転がった。
平日昼間にゴロゴロ出来るのは非日常のようで少し気分が上がる。
うとうと仕掛けると[ピンポーン]と玄関の呼び鈴が鳴った。
誰だ?
起き上がろうとすると母の部屋から音がして、パタパタと足音が玄関に向かった。
そうか、この時間家には母しかいないのだから、来客時には母が応対するんだ。
「うー、ありがとー。上がってく?──そう?……ああ、留衣が帰ってるんだ。麻琴ちゃんが貧血なんだって」
母の話し方に来客者は城崎だと知れた。
城崎は俺と麻琴が居ると判るとウチに上がってきた。
「よ、いいご身分だな。昼寝か?」
ベッドに座っている俺に嫌味を吐いてくるから、グッと拳を握ってみた。
睨む俺のどこが可笑しいのか、〈クックッ〉と肩を揺らしながらリビングに向かって行った。
その後をイライラしながら追い掛けるようにリビングに向かう。