9月・真実と事実:5
泣きそうな顔で挙動不審を見せていたクセに……
「俺達の時間を返せ」
「もしかして、心配したの?あんた達が?……あはっ」
「するだろ、お前が授業サボるとか有り得ないからな!」
「うふっ……ふふふっ……ごめん……ふふっ」
呆れて怒り半分な俺達を見て麻琴は嬉しそうに笑い声をあげる。
だが、その麻琴の服装は制服ではなく、体操服だ。
「麻琴、制服は?」
呆れて剥れる公平も、俺の言葉に改めて麻琴を見る。
「それ、自分のじゃないだろ。今日は体育ないもんな」
落ち着いた様で公平は麻琴のいるベッドに腰掛けた。
「ああ、えー……っと、頭痛がして保健室に来たんだけど、制服で寝るとシワになるから先生が予備を貸してくれた」
「熱あんのか?」
「ないない、もうへーき。あー……でも、ちょっとだけ貧血みたいだから、今日はもう帰るね」
公平の言葉に焦って答えて麻琴はベッドから出ようと足を出した。
「?」
白くて細い足には靴下も履いていない。
その先にあって然りの靴は……濡れている?
「送ってやろーか?」
「公平、サボりたいだけでしょ。いいよ、別に、一人で帰れるから」
拗ねた振りをする公平は気付いているのか、いなのか。
黙ったまま麻琴の動きを見ていた俺にちらりと目を向けてきた。
体操服のままで教室に戻り、鞄を持って明るく帰宅する。
その手には朝よりも1つ荷物が増えていた。