8月・HAPPY[BLUE]BIRTHDAY:15
食後の珈琲が運ばれてくると、再びタバコを取りだし「で、何なんだ?」と話しを促してきた。
途端に心臓が早鐘を打ち出す。
聞いてもいいだろうか?
コイツに聞くのは間違いではないだろうか?
呼び出すべきじゃなかった……?
頭の中が忙しく自分の行いを振り返させてくる。
〈コイツが知らないと言ったら……〉
「ふん……」
城崎は唇を結ぶ俺を見て困った素振りをした。
そりゃそうだろうな、呼び出しくらって何も喋らないんじゃただ迷惑なだけだ。
テーブルに置いた飲みかけのグラスをじっと見つめ続ける俺に、呆れたのか、タバコを消して息を吐く。
「お前、芽衣に聞いたのか?」
心臓が跳ねて、顔を上げた。
「なんだ、聞いてないのか?……ふん」
城崎は戸惑う俺の表情にその答えを感じとったのか、また困った顔をして腕をくんで考えを巡らせているように視線を外した。
「まいったな……お前の聞きたい事は俺が話す事じゃないぞ。俺が言える事は……」
城崎はため息を吐いて言葉を吐き続ける。
「俺はお前の親父じゃない」
落ち着いた優しい口調……心臓が止まった。
手が、身体が、震える。
心臓が、痛い。
「……本当だぞ、俺とは芽衣が18歳の時に別れた。その後で芽衣が惚れた相手との子だからな、お前は。残念だが、俺は父親じゃないよ。だから、お前が芽衣に似ていて良かった」
柔らかな顔で優しげに目を細めて城崎は俺を見ていた。
が、直ぐに軽く息を吐いて体を動かし始めた。
[ここまでだ]という合図だろう。
「じゃあ、誰?!」
伝票に手を伸ばして立ち上がろうとする城崎に弾かれて声がでた。
驚いて目を見開いた城崎と正面から見合う。
「知ってるんだろ?あんた、俺が母に似てるって……だったら、俺の……俺の父親が誰か、知ってるんだろ?」
城崎の目が冷たく刺してきて、声が小さくなってしまう。
心臓が喉を這い上がってくる……喉が渇く……息を飲み込んだ。