8月・HAPPY[BLUE]BIRTHDAY:13
母はある程度空からになった食器を片付けて次なる家事に従事し始めた。
洗濯は洗濯機がしてくれる……問題はない。
が、干すのはどうだろう?
しわくちゃでなければいいが。
掃除───四角い家は丸く……角のホコリは視界から外されるだろう。
明日自分がするから、ま、いいか。
何時間かかるかな?
何をしていようか。
部屋でゴロついていると、母が自室の汚れ物を手にして覗いてきた。
「留衣、シーツ洗うから、そこ退いて。この部屋も掃除していい?邪魔だから、昼過ぎまで外行ってて」
今日は俺の誕生日……なんだけどな。
邪魔って……
「わかった」
「うー。2時までには帰って来てね」
そう言いながら、ベッドからシーツを取り外して拐っていく。
俺は言い付け通り気温の上がる屋外に出る事にした。
家にいても暇だし、母の動きが気になって口出しをしてしまいそうだ。
ケンカになってはつまらない。
案の定、外は暑い。
行く宛てもなく、玄関先でボー……っとしてみる。
今日はどこに出掛けるというのか、母は教えてくれていない。
城崎に頼んでチケットを取ったと言っていた。
なんでアイツに……午後には城崎が迎えに来る。
なんでアイツが……高校時代の恋人。
母は20歳で俺を産んだ。
もしかして……と考えてしまうのは当然の事だろ?
それくらい城崎は母と近い存在のように思えてしまう。
ブチブチと玄関先の雑草を千切りながら考えてしまうのは、母と城崎の事。
俺は[父親]の事を何も知らない。
知りたいと母に聞けばいいだけの、それだけの事だけど、何故か聞けずにずるずると聞かずにいる。
〈……聞いてみようか〉
俺は立ち上がり、踵を返して家の中に入った。