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マザコン!  作者: 束砂
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6月・さわんな!:5

この日、台詞通り夕飯時に公平は現れ、麻琴はおかずを一品持ってウチに来た。

母の居ない食卓は……案外普通だ。

二人ともいつものように俺の手料理を美味いと褒めつつ手と口を忙しく動かし、片付けを手伝うでもなくソファーで寛ぐ。


「麻琴、送っていこうか?」


「別に、1人で平気だけど」


「ん、そう?でもママさんに煮物の礼、しとこうかと……旨かったし」


時間も8時を回った頃、帰宅する麻琴に声をかけた。

麻琴は少し戸惑った様子で断ってきたが、公平が一緒に帰ると言い出し、任せる事にした。

二人が帰ると家の中は途端に静かになった。

後は風呂に入って寝るだけだ……となるとまた思い出す。


今頃母は何をしているのか……気になる。


勿論、母から連絡はない。

俺も連絡などしない───特に何もないからだ。

夜、家の中が静かなのは毎日の事なんだが、今日はやけに雨音が耳につく。


担当者の名前、何て言ったかな……確か『キノサキ』……母の『先輩』にあたる人だと交代した時に母が話していた。

考えるのを止めようとすると余計に頭の中を巡る。

翌日は想像通り寝不足となった。


「顔色悪くない?大丈夫なの、留衣」


登校中に麻琴に心配をされた。


「ただの寝不足……へーきだよ」


「どうせ芽衣さんの事でも考えてたんだろ、俺も考えてたけどな。早く帰ってこないかなぁ……朝会わないと調子出ねぇよ」


麻琴が呆れたように息を吐く音が聞こえ、俺は公平の軽さにドン引いた。


『彼女』はどうした?!


教室に入ると各自の席に向かったが、席に着いてから一瞬、隣で麻琴が動きを止めた気がした。


「どうかしたか?」


「別に、何も」


一応声をかけたが本人がそう言ったので気のせいだったのかと深く考えなかった……俺の頭の中は夕方帰宅する母の事で埋まりつつあったのだ。

とりあえず一緒に帰宅するであろう『キノサキ』の顔を拝んでやろう。

迎えにきたのだから、送ってくるはずだ。


家にはあげないぞ……あげたくないから。

……なんだこれ、なんだか不愉快だ。


今日は雨は降っていない。

だけど俺は今日も憂鬱としていた。


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