11月・母親至上主義!:16
倒れ込んだ俺に尽かさず馬乗りになった母はグイッ!と俺の胸ぐらを掴み上げた。
「このバカ息子がっ!」パンッ!
「いって……!」
「何やってんだっ!」パンッ!
「いっ……!」
「二人を巻き込んで!」パンッ!
「痛いっ……て!」
「当たり、前だ!バカ!!」パンッ!
「ごめっ……!ごめん!」
有無を言わさぬ往復ビンタを喰らわせてきた。
二往復させて激怒状態の母は掴んだシャツに顔を埋めて止まった。
俺は痛む顔を擦り、上半身を片腕で支えてその姿を見た……掴む手や肩が震えている。
もしかして、泣いてる?……母を泣かしてしまった。
「……ごめん、母」
泣かせるつもりはなかったのに……後悔と反省をする俺の上で、母はぼそぼそと何か呟きだした。
「母……?」
何かを口にするがよく聞こえず、聞き返す俺に母は眉間にシワを寄せた顔を上げた。
潤ませた目をしてはいるものの、泣いてはいない。
「この、バカ!何で勝手な事ばっかするんだ?!知りたければ聞けばいい!逢いたければ言えばいい!私は……あんたの母は、息子の疑問に応えてやれる覚悟も強さも持っている!!他人を頼られて情けない思いをさせるな!!」
俺を真っ直ぐに見て、目を吊り上げて喚きたてる。
面食らったけど、母の怒りがそこなのかと申し訳なくなった。
そうだ……俺には必ず問い掛ければ返してくれる母がいる。
城崎だって、[母に聞け]と繰り返していたのに聞かなかったのは俺で、心配かけて怒らせたんだ。
「ごめん」
ただ、母を悲しませたくなかっただけだけど、それは俺の自己満足に過ぎない考えだったようだ。
それでも俺はそうしたいのだけど、言わないでおく。