11月・母親至上主義!:15
「……あ、れ」
やっと吐き出した掠れた声に能見は反応して顔を向けてきたが、俺の目線を追って山積みの本を見た。
「ああ、うん、芽衣ちゃんのイラスト集。この間出たんだよね、書店で見る度に買いたくなっちゃって、大人買いしたんだ」
〈えへへ〉と照れ笑いするが、相当の量だぞ……[売り切れ]になっていたのはコイツのせいか?!
〈なんなんだ、この人?!〉
俺は能見が[異常]なんじゃないかと思い始めた。
どうみても母の個人イラスト集は50冊以上はある。
異常だと思い始めるとニコニコと笑顔の能見が途端に恐ろしくなってきた。
絶句する俺に笑顔だった能見が少し真面目な顔を作り「僕ね……」と口を開いた時、階下の事務所から騒がしい声がしてきた。
よく聞こえてこなかったけど、何事かと気付き能見が話しを止める。
「留衣ー!!」
階段を上がってくる音とともに母の呼び声が上がってくる。
「母?!」
振り向くと開いた扉から階段を昇りきった母の姿が視界に入った。
「留衣!」
心配げな顔で、焦りをみせる母が駆け寄ってくる。
ああ、やっぱり心配をさせてしまった。
泣いてしまいそうな顔をしてい……
バキッ!!「いっ……?!」
一転、母の顔は鬼の形相に変わり、俺の左頬を母の拳が抉る。