11月・母親至上主義!:10
「どうする?」
「無理でしょ、車だし、もう行っちゃったし……」
公平の手からスマホが返ってきた。
俺達は戸惑いと困惑、どうしようもない衝動に襲われて頭が着いていかない。
その場で顔を見合わせて立ち尽くしたまま、どれくらい経っただろうか、
「……行く」
思い立ったが吉日。
俺は自分の衝動に従う事にした。
公平と麻琴も固い表情で頷き、着いてきてくれるようだ。
俺達は能見波留生の事務所[COLOR]を目指して歩き始めた。
昼過ぎに学校を出て本屋を探してバスを使い、目についた本屋を2店舗回った。
車に乗り込む能見らしき人物を見掛けて歩くこと20分……。
「どこ?」
「まだ?」
「……ここら辺……のはず?」
無鉄砲に事に挑むと良い事は無いと覚えた。
辺りの雰囲気も人通りは少なく、車の通りも少ない静かな商店街となった。
陽も落ちて街灯に灯りがつき始めた頃、「あった」──クリーム色であろう綺麗な壁に半面はめ込み硝子張りの窓、四角い3階建て。
植え込みで囲まれたその[家]の窓に[COLOR]のシンプルな文字列が張り付けてあった。
通りに向かって広々とした駐車スペースに黒いワンボックス車が艶光りしているだけで、建物に灯りはない。
「誰もいないみたいだな」
クリアな窓から中を覗き込んで公平が呟いた。
「そりゃー……あの車、ココと反対方向に走って行ったし」
麻琴が植え込みに座って呟き返す。
はぁ……見付けたのはいいが、どうしよう。
俺は[考えもなく行動すると後悔する]を覚えた。
「もう暗いし、帰る?」
「そうね、場所も判ったし……ああ!!」
公平と麻琴も何も考えてなかったようで俺は暗くなった空を見上げていた。