11月・母親至上主義!:8
またも俺の部屋で復習とテスト勉強を始めていた。
「……する意味がありますよーに。頑張れ、留衣」
昼飯を食べ終えた母からの[暖かいお言葉]だ。
堪えきれていない笑いを噛み締める公平と麻琴は、しっかりと母からサインを貰い大切に本を抱いていた。
この日は美希さんまでも本を抱いて母に会えた事を震えて喜び、目を潤ませていた。
母と美希さんが並ぶと何故[似ている]と思えたのか解った。
単純に似たような[絵描きバカ]の空気を纏っていたからだ。
母と会った美希さんは普段の[おっとり・フワフワ]が消え失せ、早口で絵について語り始め母を困惑させた。
「はぁぁ……感激過ぎて鼻血が出ます!」
「う、ん……大丈夫?もう出てるし……横になってたら?」
「はい!是非!芽衣さんのお部屋で!」
「いや、リビングでね。仕事部屋に入られるのはちょっと……」
珍しく焦って困惑しまくる母は見ていて面白かった。
麻琴は美希さんと一緒に居られるのが嬉しいのが全面に溢れていて、何時もよりはしゃいで見えた。
「いつもむさ苦しいおバカどもと一緒なんだもの、美希さんが一緒だと楽しいわ」
という麻琴の意見は最もだが、おかげで公平は不機嫌だ。
彼女を獲られたとでもいうように二人は美希さんを挟んで睨み会う。
落ち着いて勉強どころではない……してもしなくても変わらないけど。
美希さんが一緒だと[能見波留生]の話題は出来ず、残りの試験について(一応)頑張って勉強している振りをした。
そのおかげだろうか、テストの解答欄を全部埋める事が出来た。
「間違ってる……ココも、ココも……ココも!昨日教えたのに!」
問題用紙に答えを書く時間まであったのに、それを見た麻琴にダメ出しをくらった。
ついでに頭もペシっと一発叩かれた。
「まぁいいだろ?留衣なんだから」
公平による意味の解らない理由で麻琴は「そうね」と冷ややかに納得し、3人で今度こそ母の本を手に入れると息巻いて学校を出た。