11月・母親至上主義!:7
母に話した方がいいだろうか?
父親に、[能見波留生]に逢いに行くと話した方がいいだろうか?
どういう人なのか、聞いた方がいいだろうか?
何故、離婚したのか……聞いてもいいのだろうか?
母を困らせてしまうような俺の疑問など、面と向かって口に出来る訳がない。
俺は、母に弱い。
母には“笑っていて”欲しいのだから。
今週には中間試験があった。
水曜日から3日間だ。
当然の事ながら、城崎に聞くのは試験が終わってからという事にしたけど、「『COLOR』って名前らしいぞ、能見さんの事務所」と公平は帰宅した後、ネットで検索したようだ。
試験の合間、貴重な休憩時間に検索画面を開いて見せてきた。
「ふーん……あら、この事務所って近くない?」
「そうなんだ、街の外れになるんだけど、バスで行けない距離じゃない」
「へぇー……3年間も近くに居たのに逢わないものね」
自然と溢れた麻琴の言葉にドキリとする。
確かに何処かで擦れ違えばあの色の髪だ、気付くと思うけど……。
「この人忙しいみたいでさ、殆ど日本にいないし、事務所に居る事もなくて、年中何処か飛び回ってんだって」
「なるほど。だから近くに居ても逢わないのね」
俺が聞かなくても二人から自然と情報が入ってくる。
興味本位だろうとしても、二人のこの何気無い気遣いは可笑しくて、嬉しい。
[ひとりじゃない]とは、こういう事なんだろうな。
試験は毎日午前中だけで終わる。
選択科目の違いで受ける時間数は1、2時間違うけど、俺達は結局いつもと同じようにウチに集まる。
「テストなんて嫌いだ」
「好きだ、なんて人いないってば」
「居たら……神経科に連れて行く」
ボヤく俺に麻琴が冷めた答えを返して公平がため息を吐く。