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中卒玲奈

後頭部を、ガン、と殴られた。

じんじんと血が溢れてきて頭がとにかく痛い。

割れるとは思わないがとにかく痛い。

振り向けなくて頭を押さえてうずくまると知らない男がぞろぞろ来た。


 そこで本屋が呼んだのは警察じゃないのかと気がついた。

だけど頭を殴られるくらい誰だってされている。泣くのも間違いだろう。

「うっわ、写真で見たとおりじゃん!」


誰かの声。

誰か助けを呼ばないのかと思ったが、店員がちょうど本が沢山入った段ボールを運ぶ荷台を動かして隠した。


「ごほん、ごほん……」


わざとらしく咳払いして俺と目を合わせたがる。咳払いする人が嫌いな俺は気持ち悪いと思った。

「マイ、やっちまわないのか?」


声が聞こえる。あぁ中卒の不良グループか。

確かに居たな。




 そう思ううちに意識が閉じていた。

目が覚めたとき聞いたのは「お前のせいで、俺は高校入ってからいじめられた!」だった。


そしてあたりは……

倉庫だろうか?

見慣れた店名の箱が。

あ。書店の裏側か。ここは、マイの店らしい。


「助けなかった!」


「……?」

 こいつと違う高校なのに、何を言うんだろう。

「お前が制服姿で歩いてるたびにむかついてたよ。中卒をナメんな」



マイのネックは中卒らしく、それに異様に劣等感を抱えて周りも異様に威嚇していた。

 芸能人とかに、結構居るだろうにと思うのだが中卒を口にされると顔を真っ赤にするのだ。

 俺にはよくわからない。そうやって騒ぐからナメられるんだろう。

他のメンバーの顔は、よく知らない。

いや、一人居た。

マイ、の横に隠れている鵜潮だ。


「こんなことしてないで、勉強しろよ、な?

また自己嫌悪して鬱になるだろ?」


マイとやらと、付き人Aがぞろぞろ向かってきた。縛られちゃいないが、複数だから分が悪い。


「お前に中卒の気持ちがわかるか」


わからない。

そんな台詞吐くくらいならいじめられようが通うくらいすりゃいいだろうに。勝手に転んで妬む。

同情の余地はなかった。こうしてる間も真面目に生きるやつなんか沢山いる。

ばかじゃないの?


と言おうとした、なのに声がまた出なくなっていた。びっくりしているらしい。

「えりなたちがここにつれてきたのは、マイの作品盗作したから」


付き人Aが腰に手を当てて言った。


 俺にとってはただの感情発散のための散文で、自分の書き物を『作品』として呼ぶことはこれまであまりなかった。

なんか異次元の話だ。

首を横に振るが、友人たちは揃って「こんな内容はマイにしか描けないよ」とか言う。



「バイトだってしてる、暇な高校生と違って……」


なるほど、それが妬みか。

「まじ、履歴書はどう書いてるん?」


隣に居たやつが俺の言いたいことを代弁してくれた。

「学歴コンプレックスを拗らせてる人に当たるとめんどくさいから高卒で通してるんだよ! わりといい案だろ?」


 こじらせてんのお前じゃね?


「マイの作品は、もうすぐデビューするんだから、邪魔されたら困る」



 心当たりでもなきゃ邪魔もなにもないと思う。大体、俺が書いてるものなんかお前らに話した覚えがないんだが。

アカウントも本名じゃないのに。


なんで俺と結びつけて待ち伏せることが出来た?


「邪魔してはいないけれど、それどんな話?」




こんな内容、は、彼らが語るあらすじの限りは一見趣味が似ていると思われそうな話だった。

 ただ、ある意味個性的だろうとは思うがお洒落な作品扱いは、なんだか違うような気がする。

 枝折さんのような『砂かけ』例を思い出す。

彼もその手のタイプに見えた。

 理解が追い付かない。マイと間違われていた?会いもしない、話もしないやつと。

マイは俺を睨み付けた。

誰かが告げ口するか、マイがストーカーしていなければ成り立たない。ただ、それができそうな人たちなら、最近心当たりがある。

もしかしたら……

 それに俺は、純粋に自分の性癖や好みを込めているだけであって盗作などと自分を否定されるのと同じだ。


 いろいろな経験があったこと、腕を切ってみたらなんだか綺麗だったこと、だけど周りはそうは思わないだろうことを、改めて起こしたら、それも盗作だなんてことがあるだろうか?


 頭が真っ白になる。

自分を同時に複製品にされたのと変わらない。

痛みを同時に、誰かの体感みたいに利用されたのと変わらない。

カンベと同じ。

俺が売り出さなくたって、誰かが俺を晒す。


そして、そのせいで、ファンが訪ねてきたり、口止めであちこち付きまとわれて、今みたいに。

デビューってことは、売り出すってことだ。

俺は鏡の中から出られない。漫画やアニメやドラマになれば、さらに俺はまたもう一人の自分に聞かれる。


 おまえはだれだって視界が暴力になって、囁かれ続ける。

自己が保てない。

俺は誰だ?

これも架空の世界で、ドラマの一部なのかもしれない。


「アカウントは?」


と聞きたかった。

そう、聞けばいいんだ。やめてもらえるように、会社宛に頼もう。

だけど、声が出てこなかった。

 またあんなことになるなんて認識したくない。

固まって動けない俺と、取り囲んでにやける複数人。

そういえば鵜潮が……なんだっけ、なにか。

頭がぼーっとする。




「何してるんだ!」


 ずきずきする頭を押さえていたら、誰かが叫ぶ声がした。

慌てたように彼らはドアから出ていく。遠くでパトカーの音がしていた。

 だけど、どうせうまく逃げただろう。なれてる不良が易々と捕まりはしない。

「……」

 場が静かになり恐る恐る外に出る。

「すずしろ……」


 道の真ん中。

歩道に見知った姿が立っていた。

 えっと。

むかし、なんて呼んだっけ。

なにが現実だっけ。

ふわふわしてよくわからない。


「すずしろ」


「久しぶり」


彼は、穏やかな笑みを浮かべていた。


「すずしろ……」


「ん? 大丈夫だったか?」


なぜ此処が?

なぜ此処に?

言葉が、出ない。


「ああ、そうか、ショックで言葉が……」


制服を着ているすずしろ、は一人何か納得しながら俺に近づいた。


「鵜潮たち、わけわかんないことしてるみたいだな。信じられないよ」


なにか、言わなければと思った。なんだっただろう。

「俺、ごめ、ん」


「なに?」


「とりもど、さなきゃって、思った……取り戻さなきゃ、ね、ぜんぶ心が、蛙に、飛んでなくなっていっちゃう、捕まえて池に戻さなきゃって、俺、きえちゃうと、思った」


「うん」


「その蛙も俺のなにか、だからそれは俺でもあって、だから、俺も、なくなるって」


道を歩く。

とりとめのない話をした。

意味のない話をした。

明日死ぬのか、明後日死ぬのか。

たいして変わらない気がした。


「俺もごめん。助けなきゃとかなんとか、空回りしてばっかで……」


彼もまた謝ったからびっくりした。



「別に、何も、求めてない」


 そのままでいい。

何かしたところで、しなかったところで、どちらも似たようなものだと思うから。

彼は真剣な目をしていた。


「お前はいつも、なんてことなさそうにしてるから、たまには、頼って欲しい」


そんなことない。とは、言わなかった。



「体温計ってさ、見たら熱あがるよな」



俺が言えたのはそんな言葉。

 彼にくっつきながら歩いた。

その日は、あんまり人は外出して居なかった。そのまま、近所だからと彼の部屋に行く。

 ポケットの携帯が震えたので取り出すと綺羅からのメールだった。

 アンチを中心に綺羅にあることを聞いてもらった。

その限り他にも『被害者』が居るようだ。


「結構前からあちこちで被害に合う人が居るみたいだよ。

バレたらわりと急に打ちきりになるとか、休載するんだけど大きな作家さんだとなかなかそうも行かない感じ」


「そういう人って、どうしてるんだろ」


「どうもできないから反対派に流れたんじゃない?」

しばらくやりとりをした。確かにあんなものを相手にするなんて個人に負担がかかりすぎる。

「すずしろ」


少しぼんやりした頭で、その腕を掴む。


「なんで、来たの」


「なんとなく。なんちゃって。綺羅ちゃんが鵜潮たちが溜まり場にしてる書店とか、教えてくれたよ。あの子物知りだな」


「うん……」


綺羅は、顔が広いらしいから。俺もよく知らないけど。

言葉がうまく出てこなくてうつ向いていた。


「お前のことだから、何も言いたくないだろ」


言いたくない。

信頼してるかとか、そんなんじゃない。

話しても楽にならない。 傍聴者によるセカンドレイプを知っているから。

カウンセリングによって、逆に事実を知る人に対する恐怖が生まれる事故もある。


「す、き」


嫌いだからじゃない。


「すき……」



 言葉にして、聞いて、また自分に恐怖して、また他人に恐怖しての繰り返しが嫌なんだ。


「……すき」


すずしろ、は、うわごとのように繰り返す俺に、小さく涙を流して、呟いていた。



「俺、バカだった、ごめん」

家に着いて部屋に通されたあとも俺はふらふらと記憶をたどっていた。こうなると景色なんかよく見えない。

鵜潮と居たのは、マイ、えりな、それから……


「俺が来たとき、堂名字 捺音が走るのが見えた。あいつ、優等生面してたのにな」


どうみょうじ……


「お金持ちっぽい名前」


すずしろは、クスクスと笑った。


「知り合い?」


「あー……ちょっとな」


ぼやかされてなんとなく不満だった。

けれど、言いたくないこともあるだろうと言葉を飲み込む。

つんつんと頬をつつかれた。


「そんなわかりやすくむくれてないで。聞いてもいいんだぞ?」


「むくれてませんー」


分かりやすくない。

わからないくせに。

不良グループの知り合い?

それとも学校が同じ?

気になったりなんか。


「お前分かりやすいときと分かりにくいときがあるからややこしい」


すずしろ、は困ったように呟いた。

部屋で、二人きり。

座ったまま。

すずしろは俺があまり距離を詰めないで座ることに何も言わない。

チクタクと、時計の針が回っている。


「……、……」


チクタク、チクタク。

腕を切って、血を流して、どろどろになって、わけがわからないことを、叫び散らして、狂ったように泣きわめく自分をイメージする。


静かな時間。

頭のなかでは俺は暴れまわっている。

生きていけない!

生きていられない!!

死にたい!

死にたい!



 想像力が身に付いてよかったと思うのはこんなとき。

 悪かったと思うのも、こんなとき。

頭の中で暴れれば、大抵は収まってしまう。

頭の中までは、誰も止めに来ない。はずだった。

けれど最近は違う。

《やかましい三人》と呼ぶ男たちが常に後ろについてくる感じがある。

 誰かは知らない。

うるさくって嫌いなタイプ。

面影はどこか、中卒のグレたやつらに似ていた。








「なぁ、マイ、いいのか?」


頭の中で声が聞こえる。マイは端末を手にしたまま、小さく息を吐き出した。


『これ』が無くなったら本当にただの中卒。

何が残るだろう?

どんな嘘を重ねるよりも中卒無職という惨めさは勝る。

無力感から逃げたくて、コピペに手を出して書いた作品は、いつの間にか閲覧数を着々と増やしていた。


 こんなのプロだって誰だってやっている。

結果を手にしたやつが勝ちなのだから、文句を言われる筋合いはない。


なのに。

なのに、なぜこんなに苛立つんだろう。


 一番の得策は関わらず何も気にしないことだってわかっている。

わかっていても、目の前に『居る』事実からは目を逸らせない。


結局自分は、何にもなれてないと痛感する。

元になったひとつが、あの書店に居た彼だった。俺のファンが書き方がカンベに似てるとかいうんでカンベに聞いたらアカが違うとかいう。



えりなや上池たちにも言われて、デビューを気にするとこもあり人を雇って探させた。

まさかマジにつれてくるなんて思ってもなかったけど……




「上池春文」


 暗い空き教室の中。


携帯からアドレスを読み上げてマイは考える。


堂名字は、逃げるときしくったみたいだが、あまり見えてなかったっぽいから……まだ使えるんかな。


「春るん、もしもしー」


スピーカーを耳に当てて、マイは何か語り出した。

「チッ。かけてんのに、なかなか出ないとか、アリ?」


 まあ仕方ない。春文は学校じゃ地味キャラ。

俺の関係で大暴れしてるなんて誰にも言えないし言ったとしても誰も理解しないだろう。

 不登校ぼっちだから、相手もそうならどれだけ救われたことかね。

まあ、いるだけありがたいか。


「……わっ。不審者いる」

忍び込んでたら知らない女子が、すれ違う。


「いこ、つきまといか盗撮だよ」


盗撮って盗撮すると思われた?

失礼!!ぷんぷん!!



いや、もしかして、もしかしてだけど、他人の警戒心を認めない俺、めっちゃ性格悪いんじゃない?


「ほんと、人目を盗んで侵入して、お前が一番性格悪い」


横から声がした。


「今からでもさっきは性格悪いとか思ってしまってごめんなさい。俺が悪いです!って言ってこい」


「え、やめてー。俺、他校で有名人になっちゃうー」


上池春文が、もっさいめがねを外さないまま、俺をじろりと睨んだ。


「なんだよ! 昨日の件徴集かけてんだけど……」


「黙れ盗撮犯」


「盗撮とかしないからー。自過剰やめてー」


「胸に手を当てて振り返れ。

お前が自過剰じゃね?」


「ん? 3歩歩いたら忘れたー」


「チキン野郎が!」



そのチキンが好きなのはどこのどいつだよ……

マイは胸の動悸を抑えながら春文を睨み付ける。

「帰れば? ……ほんと」

めがねの奥が赤くなっている。

「なんだ、きちんと俺を意識して避けてたんだ」







マイたちのアカウントや成り済ましをどうすればいいのか、俺にはまだ答えが出せないでいた。


 最近は、雨が多い。


声は、出るときと出ないときがあった。

なれている人とは話すけど、ふと知らない人がその場に居ると、口が動いているだけになった。


 あの襲撃から数日経って、俺は目の前にキラキラしたものを見るようになっていた。

部屋に閉じ籠り、少し掃除をしてたら壁に、雪みたいに降ってくるものが見え出したのだ。


「こわ……い、しにたくない、まだしにたく、な」


遺書くらい書きたい。

遺書だけは書きたかった。

死にたいのに、死にたくないなんて言った。



 最後の願掛けも無駄だった。

なんで何をしても盗られるんだろう。

これじゃあ、無理矢理でも出ていかなきゃ、ずっと――

視虹症、光視症というものがある。

光がないのに、目の前に光がたくさんみえる。


硝子体が網膜に付着している部分に網膜が引っ張られる。

字にするとなんだか怖い。網膜剥離の危険があるので眼底検査というのをした方がいいらしいと、本には載っていた。


 めまいがして頭がぼーっとするときの幻みたいなのが、空間に漂っている。

 きれいだなと眺めていたらそれは、ふっと消えていた。


浅い息を繰り返す。

まだ生きてる。


 ばさばさと荷物をひっくり返しながら、部屋にしゃがんで膝を抱えた。目だけとは限らない。

ストレスや、心因性、認知のゆがみかもしれない。

だけど魔法でもかかったみたいに景色がかわってく。

現実を、忘れてしまう。

昔からときどきはあったけど、年に二回とかたいしたことはなかった。なのに今は間隔が短くなっていた。


昔読んだ本にもそんな人が居た。

 事故に合ってから光がきらきらしてるのが見えるようになったという。 計測は曖昧なもの。

本当に見ることが可能なのかも、見えたらどうなるのかも確かめる術はない。


「怖い……」


自分が、引っ掻き回されて世界が根底から壊されていくみたいだ。

昔、周りに話したら、精神科につれて行かれた。脳の検査も特になにも出なかった。


ノートも描くのが嫌になった。

 研究所や病院なんかには期待してない。


 もしも精神的なものだったならこの間隔が狭まらないようにするには、ストレスをためない以外ないだろうか?

これを話したら、作家がまた俺を使う……


「っ……!」


パニックになって、涙がぼろぼろと溢れてきた。

怖い。


こわい、こわい、こわい。

病気も嫌だ。

異質にもなりたくない。なにか検査されたくはない。

 どちらも認めたくない。

匿名でも相談したり吐き出せば作家が喜ぶだけだ。


誰も、俺が苦しんでいるとは言ってくれない。

苦しんでいて闘っているとは、言ってもらえない。

カンベやマイは、喜んでいた。俺の孤独を作り物だって言ってた。



 胸に手をあてる。

心臓は生きてる。

まだ景色は見える。

いつまで?

わからないけど、まだ俺は生きてる。

闘ってる。ずっと。

涙をぬぐっても、また溢れてくる。




外は、雨が降っていた。


しばらくぼんやり座り込んだままマイのことを考えた。

 例え中卒でも、いじめられていても『こんな孤独』にはならない。

いじめられるやつも、中卒もたくさんいて、珍しくない。

 マイは何に固執してるんだ?

カンベだって、枝折って人だってそう。


 俺よりもずっとマシな気がした。

人間と認められる人間なんだから。


俺はどうしたらいいんだ自己表現も、苦痛も、なにもかも売り物にして砂をかけられて。

 どれかひとつでもマシだったら、もう少しうまくやっていけた。


悪口ならいくらでも聞ける。


ただ、何も、俺を乗っとることはない。

何も、わざわざ呼び出すことはない。

何も、家についてきて部屋の写真をばらまくことはない。

 何も、わざわざ「リアリティ」だの「みんな喜ばない」とか余計な一言で砂をかけて反論する必要があるだろうか?

俺の中での常識が、彼らには何一つ、見当たらない。

これが『誰も悪くない』ならこの国はおしまいだな……


灰色の、空。

雨が降っている。

 少しだけドアを開けて庭先にだけ出てみた。


いまのとこ光は飛んでない。だけど、どんな感じかは覚えてる。

雪が降り、次に縦、横、と格子状に、光がうねってから広がって消えた。あれは、血管か何かを光が辿っていた形なんだろうか……

知識がなくてわからない。



――雨が降っている。

この静かな景色が好きだ。


傘をさして、パラパラと音が跳ねるのをただ、見ていた。

 その音を聞いていれば何かが洗い流されるようなそんな気がした。


何度考えてもカンベたちが自分の足で、自力でやっていれば起こらなかった事故なのだ。

自信を持ち自覚を持っていれば、わざわざ俺を狙わないで済む。



Q.気に入らない人が居たら自宅まで押し掛けて殺す気で妨害しますか?


と聞いて全国民が賛成するわけがない。

もしするとしたら不良か、やくざってやつなんだろう。

ただぼーっと、雨に打たれていた。

懸命に生きたいと願うほどに、真逆に奪われていく。

 心も記憶も、頑張ろうとするほど全部無くなっていく。


「世界が真っ暗になっても、死ぬわけじゃない」


頭のなかで声。

   の声がした気がする。


「悪化したって、もしかしたら、少し物が見えなくなるだけ」



……そんなこと、わかってる。

「俺は、ずっと居るよ」


きっと彼は言う。

そんな言葉。

それに、今は頻繁じゃないじゃないか。軽度なんだ。病院に行ってもそう何かが見つかりそうな気がしない。

突き返されたら、また診てもらいには行きづらいし、何よりも、カンベが病院に手を回してるかも。マイとかも待ち伏せてるかもしれない。

 身の危険を思うと、もはやまともにどこかに出掛けることが出来ない。そんな諸々の理由があり行きたくなかった。


 だから確実にやばい、と思うまでは誰にも言わないことにした。

ただ、ノートを奪われて、自分の存在も奪われて、全部ネタだって扱われて、俺は架空の中にさえも存在を許されなくなって、

それで見えなくなるとか。

 そう考えたら、いくつ失えばいいんだと思って、泣いてしまった。


「いまのうちに絵、描いとこうかな……」


色があることの幸せを、知っている。

なにかが変わっていくのだろうか。


 たとえ持つものを全部失ったとして、

俺が救われることはないのかもしれない。







庭より先へは行けないまま迎えた夕方というのは、学校に行っていた頃よりも時間が重たく心に張り付くようだった。

 気持ちが悪くなり布団の中で寝ているのだけど……すぐ起きてしまう。目を開けるのが怖いから開けておきたくて。


寝ている間に、世界が真っ暗になるんじゃないかと考えると心臓がバクバクと早鐘を打ち、興奮状態が続き、手足は冷や汗をかいて湿る。

未だに、誰からも声がかかることはない。


 宇宙に放り出されたような孤独の中。


外は外で作り物みたいなテレビ番組や沢山の「俺みたいな本」が溢れ、気がおかしくなる。

 現実に居る誰か、身内ではない、誰か第三者に、手を繋いでほしかった。


メディアや宗教や政治に毒されていない、誰かからただ純粋な手を伸ばしてもらえたら、ここが現実だと知ることができるのに。

投稿していたアプリを開いて、感想を眺めた。

SNSは嫌いなほうだけれど毒されきっていない、一般的な言葉を聞けるから。

現実味を、俺はまだ生きてると、知ることが出きる。


来ていたコメント、感想になごんだら眠れそうだった。

そう、まだこれがある。

まだ、現実に居られる。

新しいメールが来ていたのに気づいて開く。


「移転に伴う、サイト閉鎖のお知らせ」



 違う場所を探さなければ。

こんなことならSNS自体していれば良かったけど、あれはいつのまにか機種非対応になってしまった。

自分の周りが次々閉鎖的になっていく。

そのうち、誰にも言葉が届かなくなるだろうか。携帯も最近は不具合が多い。


 俺そのものも、頭が痛くなったり、ぼーっとしたり声が出しにくいときと話せるときがあって、不具合が増すばかりだ。

 まだ見られるうちにと、サイトを見て回っているといくつか怪しいアカウントがあった。

その多くが、黒い猫、蝶、桜、紅葉の画像がプロフィールにあるアカウント。本人かはわからないが、マイの名前もいくらか見つかった。


 それらは、まるで俺に無理矢理似せてるような趣味や性質のプロフィールが多かったり、俺が書いていたものにわざわざ似せていると思う内容だったりした。

ドッペルゲンガーが大量に見つかった気分だ。


「なんだ、これ……」


 気味が悪いのは、なにより内容。

俺がどんな学生で、好きな食べ物は……というのを誰かから聞き込みして書いたような小説。

そしてアカウント名みたいな名前の主人公。

『ここも』

俺を書いてるみたいだ。




考えられたことだ。

たぶん暇な作家が居て、兼業してるのも混ざっているだろう。それに俺自体を消したいのかもしれない。

 騒動になったり直接コメントするのが怖いなら、俺が庇えばいい。

だから直接言えないことを、売り出したりしないで。

そのほうが卑怯なやりかたに見えてどんどん嫌いになっていく。

 アプリを閉じると、メールが来ていた。

木瀬野さんからだった。


「あちこちに聞く限り、


きみの親が、有名人なんだ。


それであちこちに手を回してるみたいだね。

自分まで掘り返されるからきみの情報を出せないのかもしれない」



 どういう意味か、わかったようなわからないような。

自分が明るみになるだけで、俺を捨てた親がどうにかなるのか……

 何も言わない親なんか親ではない。普通の一般人として生きていける方法を探せばいい。母には苦労があるだろうから。俺だけでも、縁を切る方法がないのだろうか。



今まで通りの一般人としてうまく普通の周りの人たちに紛れ込むには……見もしない形だけの親と縁を切るには。

知らないことばかりだ。

俺の邪魔をしてあちこちに手を回してきた理由が、自分が明るみになりたくないからなら。

縁さえなくなれば困らない。

 ひとつは、俺が死ぬこと。次元が変われば明るみにもならず、邪魔もされない。

それから、縁を切り一般的な個人情報を築き上げること。


警察とかも、確かそういうことが出来るんじゃなかったか。

 被害者を守るために、個人情報を与えることがどうとか、昔ドラマで見た気がする。

関係自体を断ち切り、俺が俺としての個人情報を獲得できたら、父とか言う知らない生物が、こちらに手を回し辛くなる。

 不用意に巻き込まれた人だって居ただろう。

だけど、それも減らせる。少なくとも俺に手を回せない分、犠牲が減るのは期待できた。


無理に出ていけば、殺されるならそれもまた本望だ。


親のせいで……ごめんなさい。


心の中で誰かも知れないたくさんの誰かに謝る。 俺を殺すまでの辛抱。または、俺に違う個人情報を築くまでの辛抱だから。

 メディアは嫌いになったけれど、だけど沢山の人に、苦しい想いをさせないで済む。

俺が出ていけば、それだけで誰かが自由になる。恨みからあんなものを作るなら、それも減るだろう。


そう考えたら自分にもメリットがある。


 たくさんの誰かを縛り付ける鎖を無効化することが出来る。

長い目で見れば、だけど。

親が権力者なら、

俺はそんなの関係ない、みんなの側に立ちたい。

 自分がどうにかなれば、誰かがこんな不毛な想いをしなくていいのだということに、親との繋がりで気付かされる。




生んだなら、俺を殺すのが、親の役目だ!




みんなが自由になる。


それで死ぬなら、笑顔で。








次の日の朝になるとなんだか身体が怠かった。

ずっと起きてたからか、はたまた雨で冷えたのか風邪を引いたのかもしれない。


「あんたいつまでさぼってるの!?」


 数日のリフレッシュだと思っていたらしい母が、部屋に乗り込んできた。今日は休みなようだ。


「みんな真面目に通ってるのよ!? どうすんのあんたそんなことで! ねぇ!」


布団から動かない俺を、揺さぶっている。


昔から具合が悪くても顔に出ない。

だからいつも、遊んでると思われる。

 休みたいと言うと信じて貰えないから、一度学校に行ってから帰ってくることもあった。


「……元気になったら、行くよ」


 そういえば、これ、休んでいるという感覚すらないな。

不登校と休学は違う。

休学届けを出して休んでいるからだ。

だけど母には同じことだった。

「元気って何!? 勝手にずる休みして! どんな理由があるの?」


父親なんだろ?

そいつと付き合ってたんだろ?

そいつ止めてくれよ。

なんて、言う気力はない。

理由なんか言えば、ただヒステリーになるだけだ。バカ姉と母は怒り方が似ている。


「あんたが、行くって決めたのに、行かなくてどうするの!」


 あのテレビ番組が打ちきりになって、あのお笑い芸人が干されて、あのポスターが町から消えて、あの本が売れなくなってあの映画がやらなくなるまで元気になれそうにないなんて、言うわけもない。

ああ、それが話題を集めて、町の人たちの口から話されて、というのもあった。

 俺の為に、沢山犠牲をつくるやり方が気に入らない。回収不能。

立ち直りたくて、行こうとしているからこそ、全部聞き流してしまいたい。

「さっさと自立しなさいよ!」


母は、釘をさして部屋から出ていった。

俺は庭より先に行きたくなかった。

本も、ポスターも、映画も不快だからだ。

 逃避するために耳にイヤホンを差し込んだのにそれさえも、引っこ抜かれることを知った。

携帯も、携帯できないくらい頻繁に通信障害。



うるさくて不気味で、視覚も聴覚も支配されている状態で外に向かいたくなかった。



出られるか?

頭の中で聞いて、混乱する。

出られるけど、誰かが居たら帰るかもしれない。

心が、追い付かない。

カウンセリングには行きたくない。

ノートも、かけなくなった。


ただ身体が重たい。

ぼーっとして、息苦しい。外に向かうだけのことを考えて、ぼーっとして、何処に向かうんだっけ? と5回くらい繰り返す。

なんだか、バカ姉が怒られてるみたいで、少し楽しくなった。

ぎゃーぎゃー泣き叫び俺の首を絞めたり走り回ったりするので母が怒るに怒れない問題児。

自分が怒られるところをバカ姉だと思えば、なんだか楽しい気分。


俺が少し休むと、「さぼり」で「自分で決めたことも守れない」。

復唱して、あははは!と笑う。


「クズだな!」


 バカ姉は暴力も振るうから更に輪をかけたクズだと思う。

とりあえず縁を切る方法……実際には切れないとしても、表面的にでも他人になる方法があるはずだ。学校は行きたいけれど行かなくても勉強は出来るからそんなに気にならない。これから先、卒業したって、未来がないんじゃ同じだ。

そっと部屋の戸を開けると電話する声が聞こえた。

 母が、廊下の向こうで電話を受けとるのをよく見るようになった。

少し前は、ガスが止まってお湯が出なくなった電話がいきなり来た。

 この前は、電話したあとで、いきなり水を止めないでと言ってきた。

夜そんなに寒かっただろうか?


 そして今度は、いきなりミシンの修理。

こないだまで使ってたくせに壊れたのだろうか。どこまでが偶然なのか、意図的なのかわからない。

 だけど、バカ姉や母まで利用しているとなれば、俺は心を殺さなきゃ、この家で生きられない。


――現実だけは、残ってるって思ってた。


僅かでも。

何も影響されない現実だけは、少なくとも部屋の中にまではないって。


「夜、カレーだからね!」

母はよくそんなことを口にするようになった。

更新した日に限ってだ。


 書いていた話を思い出す。

カレーを作る話があった。空想に出したものを、現実でも食べさせられるのは、どこまで現実か、もはやわからない。

グラタンばかり食べた日もあったっけ。

《《!PzkhXDzr|夕飯》》

食べたくない……

その日、カレーは食べないことにした。


もうやめて欲しい。

どうして、現実と架空を切り離すことが出来ないのだろう。


SNSに手を出そうとしたこともあった。

だけど、もし閉鎖したらみんなに迷惑がかかる。

ただ、生きたいだけなのに。


話すことも、見ることも、動いたり遊んだりも、全部なくしたら、生きる意味ってどこにあるんだろう?

 笑う意味も、無くなる。

現実で出来ない、遊んだり話したりは楽しかった。

誰かの賞に殺されて、俺はなくなる。綺羅から聞いた、アンチの人たちが気がかりだ。







玄関に来たまま座り込み、また立ち上がり、ドアを開けようとしてから……


行ったって無駄なことに気がついた。

そう。休んでたんだ。

携帯を見ると今はまだ閉鎖準備らしく、ギリギリ機能が残っているアプリから連絡が来ていた。


「成瀬には気をつけてね」

成瀬……見かけたことがある。枝折、と同じようなアイコンのアカウントだ。

部屋に引き返す。


 なんのために生きているんだろう?

いつでも死ねるのに。

隠蔽不可能にしないと、安心して死ねない。

頭がごちゃつく。

マイとかカンベとかが、 俺の人生を語ったところで、この直面を前にする本人に比べたら薄いのなんの。

頭が、ごちゃついて、うまく整理しきれない。




愛されたいなら、愛しなさいという言葉は嘘。部屋のドアを閉め、

ぼーっとした頭で、思う。

調子にのるゴミが沸いて、余計に邪魔するだけ。







『……普通の毎日が崩れる

疑惑を流されていたある日

 目が少し悪くなって、

夢と現実がわからなくなった病と戦いながら、


痛みをほっしてしまう主人公――――



「お前を救いたい」





ページを見たとたん吐き気がした。


「なに……これ……」


成瀬というやつのアカウントを探していたら目に飛び込んできたのは、俺が具合が悪くなったことを日記に書いてすぐ書かれたらしい、こんな身勝手な設定たちだった。

 救いたいなら、こんなこと書いてないですることがある。

人気取りにはなんだってネタにする。そして誰も止めない。

自分の日記に、それと似たネタにするのはやめてもらえませんかと書いておいた。

もし、ここの閲覧者だったなら何か察するだろうから。

これで、気を遣ってくれるかもしれない。

そしたら終わるだろう。

他人から聞きたくはなかった。



 昼が夕方に差し掛かる頃、昼飯を考えていたら長文メールが来ていた。


「応援に対して、その言い方! あなたって失礼ですね。

晒し者にして楽しんでるんですか。

私は確かにここに来てますけど客にやめろなんて言うとみんなの空気がわるくなります。

 貴方中心で世界回ってる訳では無いので。上手な方を見つけては根拠が無いのに「トレスだ」とか「シンクロ!?」とか一々言うようなやり方はやめた方が宜しいかと。

いや、やめてください。皆さんに迷惑です。こういうとこ向いてないと思いますよ、引退をオススメします。てか被害妄想激しすぎませんか?

盗作されてるとか何とか言ってますけどあなたが盗作してますよね。間違いなく。お相手にも迷惑なのでやめた方がいいですよ。

 私もなんかよくわからないサイト見ましたけど貴女には私のこと何の関係もないですよね。精神疾患持ちの人間が書く小説なんて面白くないので今すぐ消していただきたいです。 」



 確かに俺も晒し者にされた気分になったからやめて欲しいと言ったのだがあれは応援だったのか。

 それに、プロフィールに精神疾患持ちと書いた覚えはないし……上手な方を見つけたわけではなく、もしかしたら嫌がらせをしている彼らかもしれなくて気になるアカウントに目が止まるだけなのだが……

間違いなく?

なにが?


「励ましてくださりありがとうございます。

俺のためということなので、

俺の今の気持ちというのを汲んでいただけると期待しています。現時点のそういった応援は望んでいません。

感想などをいただける方がより直接の励みになります。どうかご理解ください」





返信しておいたが、それからの返事は期待できなさそうだった。






大量の俺のネタがあった。

 それが感想だった。

それからも、ずっと、更新内容はやたらとストーカー染みていた。



応援なんて口ばかりで。



 俺がやめてほしいと言うのを無視したアカウントは数時間後に今度は、内設された掲示板で俺のニセアカウントとやりとりを始めていた。

「あなた失礼ですよ!ネタにしないで!」

というのが成瀬になっている

「ごめんなさい」

と、俺のニセアカウントが謝る。設立の日付はまだ新しく、フォローの数も少ない。

俺とは違う。


こんな自演、そこまでして、いかなるときでも非を認めたくないのか……


すぐにいくらかメッセージが届いた。


「気にしないで」


「あいつはすぐアカウント消して似たようなことする常連だよ」


「フォロー、みんな外国ww買ってるから」


みんな知っているけど、じかには関わりたくないという感じだった。俺も関わりたくないけど、ニセアカウントまで作ってやりとりするやつだから嫌でも、アカウントを自演してでも強制的に引き込むつもりだ。


もはやこれは人としての尊厳が無いということな気がした。カンベも、成瀬も、マイも、みんな頭がおかしかった。


 助かりたくないわけではないけど、出版社とかには手が回っているみたいでカンベもそんなようなことを言っていた。

問い合わせても無視されたりもした。

この様子だと、恐らくは検証のためにどこかに出したところで住所だけ抜きとって成り済ましと隠蔽だろう。

誰かが来るのを待つしかない。自分の作品を思い出した。

「作者と  が幸せになりますように」


と、コメントに書いていた人がいくらかいたから、メッセージを書いた。

あまりいい内容も浮かばずそのままのことを書いた。



「ありがとうございます。


俺は、幸せになれない人間ですが


それを願われるだけでも

貴重なことです。」








次の日来ていた、メッセージを見た。







「幸せ、本気で願うわけないじゃん。書籍化しまーす! ネタ提供ありがと」


「悪魔がおこがましい」


「ネタ借りますね!」




ネタを借りるための綺麗事。

それが、あの言葉たちらしい。ネタ提供をしたわけではないけど、審査員は見抜かない。たとえ見抜いても封じ込めるだけだろう。


「みんな嘘をついてます!」


「あの書籍は、偽善の産物です!」

大声で叫びたかった。


ぼーっと、腕を見る。

少しの間リストカットをやめていたからだいぶん塞がって気にならないレベルになっていた。そんなことを考えながら、どうしたらいいのだろうかと、思った。



きっと今後、誰かが連絡してくることもない。

抵抗なんて無意味だ。

でも。無意味だとしても、俺には意義がある。


少しでいい、偽善の産物だと意地でも証明してやりたい。

当事者が本当は苦しんでいる。なのに私欲のためにネタに使う汚い集団だってこと。



 次にアンチの人のアカウントを探してみた。わりとすぐ見つかったのでコミュニティに入り、話をしてみた。

 随分前から名前を変えあちこちで荒らしていること、虚栄心についてなどが語られていた。そこでなぜか成瀬の名前もあがっていた。

強く年功序列を信じていて、見栄っ張りな部分があるらしい。カンベではないかとのウワサもあること。

それから……と辿っているうちに、フラッシュバックが起きた。

負の感情にあえて触れ続けているせいだろう、自分のなかの負の記憶も呼び起こしたらしい。なんとも言い難い、嫌な映像が流れ込んでくる。


「う……」


怖い。

必死に目を見開いて、部屋に居ることを自分にいいきかせる。怖いものなどないと言い聞かせる。

キモチワルイ、キモチワルイ……

映像も、本。歩くとつきまとってたどこかの記者。

頭のなかがぐるぐると回る気がする。息が苦しい気がした。

酸素を吸えているかどうか、改めて確認してしまった。

こんなものを視ながら、不特定な言葉たちをなぞる。

ストレスが倍になる。

知ってるけど、あえてやめなかった。

 その後もしばらく、いろいろなアカウントを探してみてから、一旦調べるのをやめた。

フラッシュバックが、それらの情報の負の空気で上書きされる気がした。



 飯の支度をしながらぼーっと、アンチコミュから抜けてアプリを確認する。やけに伝言板が荒れている。

理由は簡単なものだ。

自分がデビューできなくなるから。

俺には目立たれたくないから。

『嘘』が、バレてしまったから。


どうやら束になってかかれば怖くないと思っているみたいだ。

嘘、にもいろいろあるが、その嘘のいくらかは、あるアカウントが自作自演して偽の俺とやりとりしてたことだった。

俺が更新するだけで、成り済ました『偽』の言葉の信憑性がゆらいでしまう。

本人は真似、をしないからだし、俺のアカウントが少し新着に入ったり、誰かにコメントされると簡単に嘘がばれる。


アプリは移転のためか、それ以外なのかメンテナンスが増えていた。

なかなか反映されないものや、消されるものもあるとか、アクセスがどうとか。

個人で更新したのに数日かかるものなんかは、怪しいものとして盗作をチェックされているらしいとかメッセージで話されていた。






【作者からのお知らせ】

(別サイトに載せていたもの)


2019年4月16日


 いつも読んでくださってありがとうございます。

テレビでノートルダム寺院の火災のニュースがやっていましたが、同時に、この小説も炎上したようです。

驚かれるとおもい一度消そうか迷ってしまったんですが、もったいないからやっぱり少しの間置いときます。

タグに限りがあるので消えないようのせまーす。



『文章クソ』

『ズンドコドコドコドッコイショ』

『全然青春じゃない』

『ストーリー?なにそれおいしいの?』



全ページ数:464ページ(連載中)総読了時間:385分


ちなみに前日のアクセス数:4(前日)

です。

おわかりだと思いますが、ある悪質ユーザーが、頑張って荒らしてるんです。

しばらく更新をとめてたので、あまりアクセスされてないのに急に一気に目に止まるのは不審ですよね。




実はこういった

『合図を決めた不審火』が相次いでいるんです。ある出版社でも殺人事件が起きました。

火災インタビューを見ると

アズさんとか、マクロンさんなどわかる人はわかるような名前の人がならんでいますが、これはニュースに台本が用意されているということです。


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