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おれのスキルは魂の自由  作者: 星村直樹
7/9

7 剣術道場決戦の日

 ついに決戦の日が来た。おれは、見学ということで、ダーマット剣術道場に入った。見ていると、サム達より小さな子供がたくさんいる。逆に、傭兵上がりだと言っていた大人たちが何人もいる。完全に二グループに分かれている感じだ。当然大人たちは、師範代の傭兵仲間なのだろう。もしかしたら、他の大人は、こいつらが追い出したのかもしれない。


 基本稽古が終わり、乱取りとなる。いつもはいい加減に負けていた二人だが、今日は、相手をぼこぼこにしている。これで、奥にいる師範代の顔が真っ赤になった。


「乱取り止め。この後は、対戦稽古をしよう。サム、アイル、だれかを選べ」


「今日、見学に来ている友達でもいいですか」 


「いいぞ」

 どうせ二人が負けたら不戦勝だ。金づるは、ケガしないだろ。


「俺たち、子供のころから3人でちゃんばらしていたんです」

「チャンバラトリオだよなオレたち」


 その呼び方は、やめて。

「お、おう」


「じゃあ、サムからな」

・・おい、やっていいぞ

・・へい


「何すか」


「ハハハ、なんでもない。3本勝負だ」


ズバン  「一本」

ドバン  「一本」

バン 「一本」

「サムの勝ち」

 サムは、小手返し面を使うまでもなく、先をとって、3本とも1本勝ちしてしまった。


「おい、あいつらの目、普通じゃなかったぞ」

「おれもそう思う。アイル、下段解禁」

「いいの」

 アイルの下段は危険だ。


「勝負、始め」

「キエーーーー」

 傭兵のおっさんが突きを入れてきた。これが当たると本当にまずい怪我をすることになる。下段は、待ちの構えだ。相手が何を考えているか、これではっきり分かった。

ゴギッ

「ギャーー」

 アイルの下段が相手の足に当たった。傭兵上がりのおっさんは、足までちゃんと防具をしていなかった。おっさんは、膝をしこたま殴られてその場で動けなくなった。

「残り不戦勝。アイルの勝ち」


「ハハハ、君たち、今日は、なかなかいいよ。そこの君たちの仲間だと言っていた見学の子は、私が直接面倒を見てあげよう」


 師範代の目は、血走っていた。たぶん、おれを血祭りにあげて、サムとアイルを精神的に追い詰めようと考えたのだろう。


 道場か、この雰囲気、懐かしいな

 おれは、前世の郷愁に浸っていた。

「リュウト、油断するな」

「相手を見ろ、ありゃあ普通じゃないぞ」

「ごめん」


「ハハハ、初めてだもんな気後れするのは仕方ない」

 この素人が!


「ではよろしいか、始め」

 バ、バン 「一本」

 いきなり小手を狙ってきた。これで、戦意を奪って、ぼこぼこにしようと思ったのだろう。逆にきれいに小手返し面が入った。軽く面を当てたので、ついでに肩にも入れといた。


「いいぞ、リュウト」


「ハハ、君、なかなか筋がいいね。次」


ドン 肩 「一本」

 相手が上段に構えるものだから、先をとってしまった。


「ハ・、すごいな。次」

 どうなってる。サム達より強い。


 師範代も、今度は油断しなかった。ものすごい剣の打ち合いになった。はたから見れば、とても派手だが、要は、どっちがマウントを取るか、相手の剣を揺らしているだけだ。


「ウオー」

 焦れた師範代が大振りしてきた。


ズバン 抜き胴。

 師範代は、審判が1本を宣言する前に後ろ向きになったおれに突きを仕掛けてきた。おれはそれを避けて、待ちの先を取った。目の前に出した木刀に師範代が突っ込んできた。


「グエッ。貴様おれを突いてきたな」


「いや、そっちが1本取られたのに突っ込んできて自滅しただけでしょ」


「もう許さん、こいつらを血祭りにあげろ」


 そこから乱闘になったのだが、サムもアイルも遠慮をしなかった。傭兵たちは、ぼこぼこにされて道場から逃げた。サムは、それでも怒りが収まらず、師範代の襟首をつかんだ。


「お前、リュウトを突き殺そうとしただろ。謝れ」

「何言ってる。あれが、おれを突いたんだ」

「お前が、勝手にリュウトの木刀に突っ込んだだけだろ。そう言うなら、おれが突きの勝負をしてやる。かかってこい」

「うわー」

 サムの鬼のような顔を見て師範代は、這うように道場から逃げだした。


 二人が今までどれだけ我慢していたか分かった。


「悪いな、リュウト、巻き込んじまって」

「お疲れさん」

 アイルに肩をたたかれた。


 そこに道場の娘さんがやってきて、大先生が呼んでいるとサムを連れて行った。


「オレたち、道場を無茶苦茶にしちゃったからな」

「こっちは悪くないだろ。子供たちは、みんな残っているし。みんな清々したんじゃないか」

 そうは言ったものの、確かに子供たちも心配そうな顔をしている。ちょっと事情が分からない。


 しばらくしてサムが帰ってきた。サムの後ろをぴったりくっついている道場の娘さんが印象的だった。


「どうだった?」

「何の話だったんだ」


「あ、いや、おとがめなしだった。ここの師範は、今、王都で修業中なんだと。それで、若い時ちょっといた今の師範代が、つなぎで入ってきたんだけど、やりたい放題だっただろ。大先生も困っていたそうなんだ。おれらが追い出して、ほっとしているって言ってくれた」

「サムさんが負けるわけありません」


「なんだその雰囲気」

「おまえ、ジェシカ姉はどうするんだ」


「バ、こら」

「誰です。そのジェシカさんという人は」


「リュウト!」

「い、いえ、何でもありません」


 おれたちは、道場の娘さんにも逆らわないことにした。


「残ったのは、子供たちばかりです。サムさん、アイルさん、どうかこの子たちを指導してください」


「わかりました」

「おれ、床屋があるから、サムほどは」

 ズン おれがアイルに、肘鉄を食らわせた。いらんことを言うなという合図だ。

「うぉ、が、頑張らさせていただきます」


 心配していた子供たちが、うれしそうな顔になった。


「お前ら、慕われてんな」

「まあな」

「リュウトも来るか?」

「おれは、聖女様の相手をしなきゃあいけないだろ」

「そうだった」

「お互い頑張るか」


 リベンジ成功。おれたちは、すっきりした。

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