はじまり
1人目・2人目、登場。
それは突然始まった。
―∞†∞―
「ねぇ、ウルグアイってどこ?」
のどかな昼休み、のんびりパンをかじり、ちょうど僕は考え事をしていた。
昨日録画した映画への期待を胸に、今日の午後の授業の教師がいきなり腹痛かなんかで、これまたいきなり自習になったらなぁ、などとありもしない展開を考えながら、パンをかじっていた。
そうしたらいきなり、
「ウルグアイってどこ?」
だ。なんだそりゃ。
購買で残り1個のところで奪ったコロッケパン(しかも最後の一口!!)から目を離し、突拍子もない質問をかましてきた『彼女』を見た。
うわー。きらきらした目してる。
こりゃ答えなきゃあとが怖いや。
「ウルグアイは…」
一応クラスじゃトップを誇る僕は、
「アフリカの国です」
でたらめを言った。
「アフリカ!!」
嘘ばれたか?
「そりゃすごいね!!」
いや、何が?
「納得しました。ありがとう」
えっ、何に?
『彼女』は来たときよりきらきらした目で、自分の席に帰って行った。
『彼女』は一昨日転校してきた。
名前はなんて言ったかなぁ、あぁそうそう宮島咲々《ササ》だ。
なんて言うか、一風変わった女子だ。
見た目は悪くないし、むしろかわいいけど、何かどこか違う。
ざっくばらんに切られた黒髪?
いや、普通でしょ。
白い肌に桃色の唇。
うん、イケてると思うよ。
ものすごい寸胴体型でもないし、どちらかというとスタイルいい方かな。
じゃあ…なんだこの違和感?
結局訳わかんないけど、そんなかんじ。
それにさっきの質問は何だ?
地理の地図帳見ればいいのに。
あいにく僕はひねくれてるから、素直に答えなんか言ってやんない。
よくわかんないけど、まぁいいか。
さっき食べかけて止めたパンの最後の一口を、口へ放り込んだ。
うまい。
「木川樹!!」
フルネームで呼ばれた。
まだ口の中にはパンが残っていて、かといって無視するわけにもいかず、僕は口をモゴモゴさせながら呼ばれた方を振り返った。
…振り返らなくとも誰が呼んだか分かったんだけど。
「ねぇ樹!!」
呼び捨て…だよ?宮島さん?
「樹ってクラスで1番頭いいんでしょ?さっき誰かが言ってたけど」
うーん、そんなことな…
「ある!!あるから!!」
じゃあ、そういうことで…。
嬉しそうに笑う宮島咲々には勝てそうにない。
「頭いいってことは…まぁそうだよね」
何?
「ホラあれだよ。宿題見せてほしいな―なんて!!」
やだって言ったらどうするだろう?
困った顔が見てみたい気もする。
「ね!お願い、見せて!!まだ引っ越しの片付け済んでなくて、やる暇なかったの!!」
どうしようかな。
「あ、見返り?えーと、あ!私のアドレス教えたげる」
いらない、心底いらない。
わかったよ、はい。
机の中から青色のノートを取り出して、僕は宮島咲々に渡した。
大事そうに受け取って彼女は足早に席に戻る。
授業開始まであと10分。
ノート、きれいなまま戻ってくるといいな。
「咲々ちゃん、ノートの落書きすごいね!!」
「うん、だから今借りてるの!!」
うん、聞かなかったことにしよう。
まさか僕のノートにまでは…落書きしないよな?
あぁ、はやく家に帰りたい。
訳わかんない題名でゴメンナサイ…。
読んでくださった方、ありがとうございます。