表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

82/130

『魔王塔、四階。黒衣の死神(3)』


「そういえば名乗っていなかったな、諸君。我が名は『黒衣の死神』。短いつきあいだろうが、お見知りおきを」


優雅な一礼。


本当に大したものだ、尊敬すらする。


自分を『黒衣の死神』なんて名乗れる胆力、オレには絶対にない。


「ふん、行くぞ『黒衣の死神!』」

「その黒衣、死に装束にしてくれる!」

「黒衣より深い闇に帰りなさい!」


皇子たちもスゴいな。


キミ達、もしかして出会い方が違えば、いい仲間になったんじゃないの?


それとも馴染んだと思ってたこの異世界、まだまだオレが未熟だっただけか?


オレは後ろにいる仲間達を見る。


「スケさん的には、どうなのアレ。名前のセンス、とか」

「……独創的、ではあると思います」


いつもスケさんは控えめだ。


「シンルゥは?」

「詩人と道化の口以外から、ああいったセリフを耳にするのは貴重な体験ですわね」


さすがに同僚が相手だけに珍しく気遣っている。


そのオブラートも本当に薄いものだが。


「サキちゃんの友達とかは、ああいうセリフって使う?」

「サキュバスは多分言いませんけど……夢魔、インキュバスですと、潜り込んだ相手が、夢の中で望めばあるかも?」


夢の中ですら疑問形か。


「起きてるときは?」

「……どうかなぁ、って」


サキュバス、インキュバス界隈でもあまりない事らしい。


やはりオレはまともだった。


そして激しい戦いが始まり、やがて――。




***




皇子たちをボッコボコしたダメ吸血鬼が、一人たたずんで、いや、立ち尽くしていた。


「ふむ。他愛のない」


余裕を見せつけるようにして、倒れ伏す皇子たちを見下す黒衣の死神。


明らかにやりすぎである。


やられ役という事を忘れて……。


「ほ、本当に、他愛のない……」


黒衣の死神が焦っている。


もともと青白い顔ではあるが、それを差し引いても見事な顔面蒼白である。


「こんなはずでは……」


ぼそっと本当に小さく呟いたのはをオレは聞き逃さなかった。


完全に手加減ミスってんじゃねーか。


最初のセリフは『ふむ、他愛ない』じゃなくて、接戦を演じて『ほう、なかなかやるようだな?』だったはずだよねぇ?


「さあ、立ち上がれ! 諸君らの力、そんなものではないだろう!」


ポンコツ黒衣が皇子をはげましている。


多分、過去にこれほど人間を励ました吸血鬼もいないだろうな。


しかし、なかなか立ち上がれない。


奮戦していたからね。


三階で手に入れたポーションも使い切ったみたいだし。


「がんばって! 立ち上がって!」


妖精が倒れた三人の上で飛び回り、蒼い鱗粉をかけている。


しかしすでに何度もやっているので、ふりかかる粉の量も減っている。


三人は小さくうめき声をあげるだけで、指すら動いていない。


ダメじゃん、あきらかにダメじゃん。


「どうした、そんなものか! 人の愛とは、夢とは、希望とは、そんな簡単に打ち砕かれるものか! 絶望するにはいささか早すぎるだろう!」


しでかした張本人が、一番絶望した顔になっている。


無理はない。


雇用契約書には皇子を死なせた場合、損害賠償が発生するという項目をディードリッヒがつけている。


「立ち給え、諸君。人の世の平和を背負っているのであれば、今、立ち上がらずしてどうするのかね!?」


セリフそのものは悪くない。


いかにも慢心して余裕ぶった中ボスの態度にふさわしい。


ただその中ボスがコッチに向かって、すみません、こんなつもりでは、という顔ではなければな。


サキちゃんの術でこちらの姿は見えていないので、微妙に視点はズレているのだが謝意は伝わってくる。


だからと言って、許すわけではないが。


さてこの始末、どーしたものか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お読み頂き、ありがとうございます。
感想、評価、ブックマークで応援頂けると喜びます。
過去受賞作が書籍化されました!

主従そろって出稼ぎライフ!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ