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『魔王島、フィールドアタック編。行く手を阻むは、命無き骸たち(3)』


青い空の下、草原を警戒しつつ進む皇子たち。


作戦予定ポイントである大樹付近にくると、案内役のシンルゥが歩く速度をさりげなく落とす。


私情がからまなければ出来る部下なのだが、私情が絡まない事の方が少ない為、やっぱり扱いにくい部下である。


「魔王様、ご指示を」


対して、スケさんは常に仕事に忠実だ。


「よし。ちょっと襲わせる数を減らそうか? 当初の予定の三十体で強襲するんじゃなくて、二十体くらいにしよう。まず最初は囲むようにして、十体出してくれる?」


戦力の逐次投入はダメという話をどこかで聞いたことがあるが、撃退される為なので問題ないだろう。


むしろ、一気に三十体を投入して皇子たちが全滅なんてことになったらえらい事だ。


「かしこまりました。まずは足止めをいたします……――、――、――」


泉の時のように、再びスケさんが黒い眼窩に青い炎が灯る。


そして。


「え……きゃあぁぁああ!」


響く聖女の悲鳴。


突如として地面から突出した骨の手にブーツをつかまれた聖女がつんのめり、そのまま草原へ顔をうずめる。


さらに倒れ込んだ聖女の顔を、髪を、ノドを、新たに草をかきわけて生えてきた骨の手がつかみあげる。


「いや、いやぁぁ、イヤァァアアアア!」


悲鳴ではなく、もはや絶叫だ。


いや、これは怖い。


オレがああなっても同じような悲鳴を上げると思う。


「今行く!」


最初に動いたのは聖女の前を歩いていた皇子だった。


振り返り、すぐさま聖女を地にはりつけていた骨の手を、鞘におさめたままの剣で打ち砕いていく。


「無事か!」


聖女を助け起こしたところで、聖騎士の声があがる。


「バラン、油断するな! 数が多い!」


皇子が周囲に視線をやれば、草花をおしのけ、土にまみれたスケルトンたちが皇子たちを囲むように這い出してきている。


キッチリ十体。


だと思う。


動き回っていて正確には数えられないが、スケさんの几帳面さから言って間違いないだろう。


「囲まれる前に潰す!」


聖騎士が両手でかまえた大剣をふりかぶり、いまだ腰あたりまでしか露出していないスケトルンの群れへと突っ込んだ。


おお、思い切りがいい。


確かに今なら一方的に攻撃できるチャンスだ。


ではお手並み拝見。


「戦女神よ、我に力を!」


……あんまりご利益なさそうな掛け声とともに、振り上げた大剣をスケルトンに振り下ろす。


すると激しい音とともに、見事、頭蓋から腰まで、縦に真っ二つになるスケルトン。


「おっ、かっこいい」


ただし斬ったというより、カチ割ったというカンジだ。


線を引いたように真っ二つというわけではなく、粉々になった骨の残骸が右と左にきれいに分かれている。


続けざまに、二体、三体と面白いくらいにスケルトンたちを縦に横にと真っ二つだ。


あっという間に五体がバラバラにされた。


残りの五体は聖女の足をつかんでいたスケルトンで、こちらは皇子が戦闘中だ。


シンルゥはさりげなく聖女をかばうようにして遠ざかり、戦闘には参加していない。


「うーん、意外と実戦慣れしてるのか?」


余裕をもって、というほどではないが、まず負けはしないという程度にはゆとりが見える。


オレとしてはあまりよくない流れだ。


恐ろしい魔王が住まう道中の戦いとしては盛り上がりに欠けてしまう。


もう少し苦戦して欲しい。せめて気を抜けば全滅、それくらいの難易度に調整したい。


最初は三十体の骨を仕掛けるつもりだったし、これなら予定通り数で押すのもいいが……弱い敵ばかりと思われるのもよろしくない気がする。


「スケさん、このスケルトンの強さは? スケさんがこめた魔力で強さが変わるんだよね?」


従属支配のスキルは確かそんな効果もあると説明を受けている。


最初からは飛ばさないようにという予定だったが、今のはやっぱり最弱レベルだろうか?


「最低限、戦闘行動ができる程度の魔力を込めております」

「そう? じゃ力加減を五段階くらいで調整できる? これを最弱の五級として、今すぐ用意できる最高を一級とするカンジで」

「お望みとあらば」

「じゃ、今から……三級くらいの強さにしたスケルトンを五体出せるかな?」

「かしこまりました。では、早速……――、――、――……――」


すると、聖騎士のやや前方で、再び土が盛り上がる。


パっと見は先ほどと変わらないスケルトンが五体、白い頭蓋をさらして這い出してきた。


だが見かけは同じでも、動きが明らかに見違えた。


さっきまで、よっこっらどっこいうんとこしょー、と土から這い出してきたスケルトン。


しかし今回の五体は、よっ、ほっ、はっ、と三呼吸くらいで全身を土からあらわしたのだ。


さらにそこからの行動も、ギシ、ギシ、と音をたてて動いていたのが、キッシキッシと軽快に動く。


「お、機敏。アレは三級だから?」

「さようです」

「ん? おや、あれは?」


さらにこの五体のスケルトンはそれまでと違う所があった。


「む? 新手か……なんだと!?」


新たに迫ってくるスケルトン、その先頭に対して横なぎにはらった聖騎士の大剣が、スケルトンの持つ長方形の骨の盾で止められた。


「武具持ち!? 中級アンデットが複数で徘徊しているのか、この島は!?」


皇子が前衛の聖騎士に加勢するべく、その横に並ぶ。


あちらさんからすると、今回のスケルトンは中級という認識のようだ。


聖騎士の言うように、三級スケルトン達は骨の槍と骨の盾を持っている。


骨の武具とか簡単に砕けそうだが、そうでもないあたり普通の骨ではないのだろう。


しかしそんな装備も三級スケルトンの五体ともが持っているわけではなく、二体は素手……じゃないな。


なんか小さな骨の棒を持っている。


短剣とかこん棒か? しかしそんな短い棒きれでは素手と変わらない気がする。


と、そんなオレの心中の疑問に答えたのはスケさんではなく、聖女だった。


「……あっ!」


後方の棒きれ装備のスケルトンを見た聖女が、三人の背中越しに警告を飛ばしたのだ。


いつもお読みいただき、ありがとうございます(*'ω'*)

諸事情ありまして、一日二回更新に戻ります。

詳しくは活動報告に上げておりますが、ふーん二回に戻るんだー、落ち着かないねー、くらいの認識で大丈夫です。

今後とも、よろしくお願いいたしますm(__)m

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