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『神霊草、またの名をマンドラゴラ(3)』


老司祭がパンっ、と手を叩き、大きく広げた。


「……さすが! さすが、さすが、さすがですな! まったくもって、どうも!」


驚いている、喜んでいる、というのはわかるが。


何がどのように、さすがでどうも、なのかはわからない。


「このようなみずみずしくも極上の神霊草があれば、昨夜ワシが求めた小銭など不要!」


小銭。


小銭と申したか、このおじいちゃん。


その小銭とやらのために、こんなホラーに再会するハメになったのに?


「こちらを持ち帰ればワシは即時、司教となるでしょう。港町の教区化も簡単に通ります」

「そ、そうなんだ。それは良かったよ」


若干、引き気味になってしまうくらい、喜んでいる老司祭。


ただ、問題が一つ。


サッちゃんが仲間というか子供というか、自分が繁殖させたマンドラゴラを譲ってくれるのかどうかだ。


もちろん、無理やりに奪っていく事もできるがそれは極力したくない。


意思の疎通はできないが、同じ島で暮らす友人、いや、仲間……いや、同居人なのだから。


サッちゃんが拒否するのならば、道中で見かけた死骸を回収すればいいだろう。


質は落ちるんだろうが、そこは量でカバーするという事で。


「あー、サッちゃん。久しぶり。元気だった?」


と、オレは、まずはご無沙汰の挨拶をしてみる。




ォオオオオォオオオオオ!




すると、サッちゃんは伏せていた頭をあげ、手のように見える部分をゆらゆらとかかげて咆哮した。


……うん。


多分、機嫌は悪くないと思う。


「それで早速なんだけど……マンドラゴラを何株かわけてもらえないかな? 出来れば枯れていない新鮮なものがいいんだけど。ああ、もちろんサッちゃんがイヤと言うなら無理には……」


さすがに仲間を差し出せと言っているようなものなので、怒るかもと思いおそるおそるたずねかける。




オォオオオオオォオ!!




だがサッちゃんがオレに振っていた手を仲間たちに向けると、それを受けたマンドラゴラたちが家の中へと走り出し、すぐに戻ってきた。


その手には、拘束されているマンドラたちを何体かひきずっていた。


そして縛っているツタの先をオレへと差し出す。


二十株ぐらいあるだろうか。


「ああ……このマンドラゴラたちをもらっても……いいわけね?」


サッちゃんが嬉しそう……だと思う無表情で、うなずいた。


一方で引きずられてきたマンドラゴラたちは、怯えた表情をしている、気がする。


わかんねぇよ!


この人面草たち、表情ないんだからさぁ!


顔に穴が三つあいてるだけなんだよ!


そんなオレの内心をよそに、外野たちの驚きはますます大きくなっていた。


「仲間を拘束している? マンドラゴラには社会性が存在するのか?」

「いまだによくわからない生態だとは聞いているが……さすがに少々、おかしくないだろうか?」

「殿方は難しくて無駄なお話がお好きですわね? お金になるならいいじゃないですか?」


社会性ねぇ。


多分、アレ、敵対勢力の下っ端だろう。


社会性があるかどうかはともかく、仁義はないな。


けど、それを解説した所で信じられないだろうしなぁ。


そうして混乱の最中にある悪友たちの中で、ただ一人。


「二十三株。加えて瑕疵のつけようがない極上品。これだけあればまったくもって問題なし」


しっかりと数と状態を確認している老司祭の姿があった。


神に仕えると精神面的に色々とタフになるんだろうか。


それはともかく、オレはサッちゃんに近づき、かがんで目線を合わせる。


う、こわい……。


「か、代わりに何かあげたほうがいい? といっても今は何も用意してないし、何が欲しいかもわからないけど」


もらうばかりでは心苦しいので、言葉がしゃべれないとはわかっていも聞いてしまう。


サッちゃんがゆらゆらと左右に揺れる。


もしかして考えている仕草?


そもそも何かを考えるって脳みそとかあるのだろうか?


結局、サッちゃんは何も考えつかなかったようで、ゆらゆら揺れたままだった。


「……じゃ、そろそろ帰るよ? これもらっていくね?」


では、おいとましようと別れの挨拶をすると。




オォオォオォオォォ……ォオオォ……




という、今まで咆哮とはややトーンが下がり、どこか悲しげな咆哮を漏らすサッちゃん。


「ちょくちょく顔出すから」


また生贄をもらいにくる事になるだろうしね。


せめてこれくらいはとサッちゃんの頭を優しく撫でてみた。ちょっと湿ってる。


すると。


髪に咲いていたバラが蒼く輝きだし、つぼみだったものも全て満開になった。


「あ、ツッチー! サッちゃん、喜んでる! すごく喜んでるわよ!」

「お、おう、引くほど喜んでるなぁ。じゃあ、また満月の夜に来るよ?」




オォオォオオォオォォオォオォ!!




と、ひときわ嬉しそうな? 咆哮でサッちゃんが返事をした。


もはや満月でなくとも動ける彼女たちだが予定を伝えておいたほうが、いつ来るの? と待ちぼうけをしなくてすむだろう。


こうしてオレは新鮮なマンドラゴラを手に入れ、老司祭との取引をかわしたのだった。


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主従そろって出稼ぎライフ!
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[気になる点] 主人公の能力は砂にも影響を与えることはできるのでしょうか?できるなら海底のところも支配できて、いずれは世界中を支配できるのでは!?
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