表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

悪役令嬢に花束を

作者: どんC
掲載日:2020/12/03

 私は神殿の屋根に腰掛けて葬式を眺めていた。

 私の葬式だ。

 黒い喪服に身を包んだ人々からすすり泣きが漏れる。

 私の見知った人々と見知らぬ人々。

 見知った人達は学園の同級生達で、見知らぬ人達は父の仕事の関係者だろう。

 彼等は私の棺の上に花を手向ける。

 私の婚約者だった男も、私の棺にそっと花をのせる。

 彼から花束を贈られたのは、初めてでは無いかしら?

 いえ……

 ドレスも宝石も贈られた事が無かったわね。

 私の誕生日には、彼の侍従がカードを送ってきたわ。

 棺に乗せられた花束は、【白いリコリス】だ。

 花言葉は何だったかしら?


【また会う日を楽しみに】


【思うはあなた一人】


 笑わせてくれる。


 元婚約者の隣にあのがいる。

 当然のように彼の隣を陣取っている。


 ずきりと胸が痛む。

 本来ならそこは私の場所だった。


 学園に季節外れの転校生がやって来たのは去年の事だ。

 平民の特待生。とても綺麗な娘だった。

 貴族の子供達と金持ちの子が通う学園で、そのはとても変わっていた。

 平民でしかも彼女は孤児だ。

 なのに彼女は礼儀作法が完璧だった。

 まるで王妃教育の様な高度な教育を受けた事があるようで、違和感を感じた。

 彼女は勉学も王太子を抜いてトップに踊り出たばかりか。

 ダンスも刺繡もピアノも絵画もプロ級だった。

 ハッキリ言って得体が知れなかった。

 他国のスパイかも知れないと。

 再三、王太子(元婚約者)に気を付ける様に言ったが。

 王太子は聞き入れる事は無かった。

 私の王太子(婚約者)は彼女に夢中になって、私達の婚約は解消された。


 彼女も私の棺に花を手向ける。


【赤いリコリス】


 普通葬式には白い花を手向けるものだが……

 或は生前本人が好きだった花だ……


 周りの人達も騒めいている。

 皆私がその花を好きでは無いと知っている。

 私の好きな花は黄色いチューリップなのだから。

 私は何時も温室で黄色いチューリップを植えていた。


 ___ 赤いリコリスの花言葉は【情熱】【独立】【再会】【あきらめ】【悲しい思い出】そして…… ___



 ___ 【転生】 ___



 私の隣に座っている者が、教えてくれた。


 転生か……

 転生しても貴女達とは二度と会いたくないわね。


 私は隣に座っている、男とも女とも分からない存在を見る。

 隣のフラス国の死神は女だと言うが。

 この国の死神は性別がない。

 ボロボロの黒いマントにどくろの仮面に大鎌を携えている。

 気のせいか、どことなく疲れた感じがする。


 どうして私は死んだの?


 私は隣の存在に尋ねた。


 ___ 君は婚約を破棄されて領地に帰る途中で崖崩れに遭って亡くなったんだよ ___


「悪いのだけれど、トマス様とネモフィラ殿の花は受け取れません‼」


 弟が二人の花を突き返す。

 二人は何か言いかけたが、花を受け取り帰って行った。


 そんな二人を神殿の屋根から見ていた。

 やがて私の棺は霊廟に収められた。

 両親や弟が人々と共に夕闇に消えていく。


 ____ さあ行こうか ___


 死神が手を差し出した。


 私が行くのは天国? 地獄? 

 私は彼女を嫌っていたけど、地獄に落ちるほど彼女に酷い事をしたの?


 私は死神に尋ねる。死んだショックのせいか記憶が曖昧なのだ。

 死神は首を振る。

 私はほっとため息をついた。

 どうやら私は悪役令嬢ではないようだ。

 悪役令嬢?

 誰が私にそう言ったのかしら?


 ふと、闇の中に浮かぶランプに気が付く。

 彼女ネモフィラだ。

 赤いリコリスの花束を持っている。

 血のように赤い花。

 彼女は私の遺体が収められた霊廟の前で魔法陣を描き始めた。

 そして……魔方陣の中央に立つと花を周りに散りばめる。


 彼女は何をしているの?


 私は死神に尋ねる。

 死神は指を口に当て黙ってと言うジェスチャーを取る。

 まるで私達の会話が彼女に聞こえる、と言うように。

 彼女は懐からナイフを取り出す、そのナイフは既に赤く染まっていた。

 ゾッとした。

 何十人もの血の匂いがした。

 そしてナイフを深々と自分の胸に突き立てた。


 ひっ‼


 思わず悲鳴が漏れる。

 ネモフィラの体はバタリと倒れて、その体から黒い塊が出てくる。


 あれは何?


 ___ 呪いだよ ___


 死神が囁く。


 ___ 昔勇者が魔王を倒した時、魔王は勇者に呪いをかけた ___


 ___ 勇者が愛した人(聖女)と結ばれない呪い ___


 ___ 幾度転生しても呪いに邪魔されて二人は結ばれない ___


 ___ 呪いは死体に憑りついて目的を果たすと次の転生体(死体)に入る ___


 ___ だからここで決着を付ける‼ ___


 死神は大鎌を振り下ろすと魔法陣と共に呪いを叩き切った。


 呪いは二つに分かれたが、のたうち回り、再び一つになろうともがく。

 だが、死神はそれを許さない。

 畳み掛ける様に大鎌を振るう。

 月の光に照らされて。

 大鎌は妖しく煌めく。

 まるで踊っている様だ。


 綺麗。


 私は場違いにも、そんな事を思ってしまった。


 ぎゃあぁぁぁぁぁぁぁぁー‼


 やがて呪いは悲鳴を上げて、粉々に砕かれ消えていく。

 消えていく呪いを暫く見ていた死神は、瞬きする間も与えず私の隣に姿を現す。


 あの……呪いは死んだの?


 死んだと言う言い方は可笑しな言い方だ。

 呪いは元々生きてはいない。


 ___ ああ……やっと終わった ___


 死神はどくろの仮面を取った。

 その顔はさっき私の棺に花を手向けた人だった。


 えっ? 嘘? トマス様? 

 ああ……違うわよね。

 だってトマス様が花を手向けていた時、あなた私の横にずっといたわ。


 ___ そう俺の前世はトマス王太子だった ___


 前世?


 ___ アシュレイの葬儀の後、呪いは俺と護衛騎士達を皆殺しにした ___


 ___ ネモフィラに殺された後、俺は女神の御前にいた ___


 ___ 女神ユリシアは俺達と魔王の呪いの話を語り。俺達は千年魔王の呪いのせいで殺され続けた ___


 ___ 女神は俺に呪いを消滅させたいのなら万の呪いを狩って力を手に入れろとおっしゃり。俺は時を越えて呪いを狩り続け。やっと魔王の呪いを消滅させる力を手に入れ、この時に帰ってきた ___


 死神トマスは寂しげに微笑み、一輪の花を差し出した。


 白いリコリス。


 花言葉は【また会う日を楽しみに】【思うはあなた一人】だ。


 ___ これで君は自由だ。もう呪いに殺される事は無い ___


 彼は手を差し出してくれた。


 ___ さあ。転生の時だ ___


 辺りが徐々に眩しく輝き始める。


 ___ 貴方は? 貴方も転生するのでしょう? ___


 彼は首を振る。


 ___ 女神のしもべになったなら、人間としての転生は……もう無いんだよ ___


 そんな‼ 嫌よ‼ 


 私達やっと……


 私はあなたの事が……


 彼は最後まで言わせてくれなかった。

 最後まで狡い人。





 ~~~*~~~~*~~~~





「アシュレイ、また黄色いチューリップを見ているの?」


「ママ……わたち、きいろいおはなだいちゅき」


 幼い娘に母親は微笑み。金色の頭を撫でる。


「黄色いチューリップの花言葉は何だったかしら」


「めいせいよママ……それと……【望みの無い恋】」


 突然幼い娘の瞳から涙がボロボロと零れ落ちた。


「ど……どうしたの? アシュレイ?」


「わからないの……なぜだか……なみだがとまらにゃいの……」


 幼い娘は蹲る。


「とてもたいせつなひとがおもいだせにゃいの……」


 母親はアシュレイを抱っこして子守唄を歌う。

 子守唄を聞いて娘は眠りについた。



 聖女伝によれば、アシュレイと呼ばれた娘は7歳で、聖女になり。

 その後、誰とも結婚をせず81歳で大往生した。

 癒しの力で多くの人々を救い【リコリスの聖女】と呼ばれるようになった。

 記録によると、【大聖女】はリコリスの花がとても好きだったと言われている。

 彼女が亡くなる時も白いリコリスの花が枕元にあったという。


 人々は噂した。

 彼女が愛した人が迎えに来たのだと。

 この国では、先に亡くなった、最愛の人が好きな花を携えて迎えに来ると言う。

 枕元に残された花は、愛する人が迎えに来た証なのだから。






         ~ Fin ~





 ***************************

   2020/12/3 『小説家になろう』 どんC

 ***************************


    ~ 登場人物紹介 ~


 ★ アシュレイ・ペーメ

 伯爵令嬢。1000年前の聖女の生まれ変わり。

 魔王の呪いに殺され続ける。100年ごとに転生していた。

 前世の記憶は無い。


 ★ トマス・コンヘラル

 コンヘラル国の王太子。前世勇者。

 呪いにより聖女と引き裂かれる。

 女神の力を借り、呪いを狩り続け力を付けて【魔王の呪い】を滅する。


 ★ ネモフィラ・グアロア

 平民。実は死体に憑りついた呪い。

 本物のネモフィラは父親に虐待されて亡くなっている。

 父親を殺し、孤児院に入り勇者と聖女の生まれ変わりを探した。

 そしてトマスを【魅了】しアシュレイを事故に見せかけて殺し。

 その後にトマスと騎士団を殺し、二人の転生先に転移しようとしてトマスに滅せられる。

【魔王の呪い】に感情はないが、最初は魔物に憑りついてサクサク殺していたが、次第に人間の死体に取り付き苦しめて殺すようになった。

 この手の呪いは、転生前の無防備な状態の時でなければ滅する事が出来ない。


 ★ 女神ユリシア

 この世界の神。7柱の一人。愛と多産の女神で時の神でもある。

 トマスに神の御使いになり、呪い狩りをするように話を持ち掛ける。

 神の御使い(死神)はめっちゃブラック。トマスについて行ったアシュレイが心配だ。




最後までお読みいただきありがとうございます。

この物語をハッピーエンドかバットエンドかを決めるのは読者次第(笑)

感想・評価・ブックマーク・誤字報告お願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 昔、曽根まさこ先生の漫画に在った『魔女に花束を』ってタイトルを思い出した。無実の罪で処刑された無垢な少女と重なった。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ