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メル・モルト・ダンジョン・アタック  作者: UMA20
第一章 第一節 邪念怨龍騎士 バグラアーマード
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第五話 忍び寄る漆黒

 

「ミザ……? 誰だよ、知り合いか?」


「アマンダさん知らないんですか? それなりに有名な冒険者です。特に、一年前は話題になったと思いますが」


「一年前……いや、ワタシは知らない」


「“紅剣こうけんのミザ”。彼は今から一年前、“ᛚᛁᛒᚱᚨ(ライブラ)”攻略の為に百人の冒険者を集めパーティーを組んだ、超人エヴォルの冒険者です。昔……僕もパーティー参加をお願いした事があります」


 ロミアはその時の事を今でも鮮明に覚えていた。


 彼は当時、町を襲った魔物を退治したという話から、よく話題に挙げられた人物の一人だ。

 そんな話題沸騰の彼が、最難関迷宮(ダンジョン)十二の試練ダーウィンズ・ゾディアックの一つを制覇すると公言し、大勢の仲間を引き連れてギースの町にやって来たのだから、印象も強い。


 連れている冒険者も選りすぐりの者達で、ミザの事を尊敬する、信頼に足る者ばかりで構成されていた。

 本来、そんなパーティーの中に飛び込もうとする人間はいないのだが、ロミアは別だった。

 “ᛚᛁᛒᚱᚨ(ライブラ)”攻略前、先頭で大勢を引き連れながら街道を歩くミザの前に立って、何の恥じらいも見せずロミアは、自分もパーティーに参加させてくれと頼んだが、


『すまない……。私は本気でこの迷宮ダンジョン制覇を目指している。君をパーティーに入れる余裕は無いんだ』


 そう断られ、彼のパーティーメンバーから嘲笑を浴びながら、背中を見送った。

 彼の言うことは至極正論であり、反論の余地はない。


 それでも、その後ろ姿に少しでも憧憬や嫉妬がなかったと言えば──嘘になる。


「……? 申し訳ない。人を覚えるのが私は苦手でね。パーティーメンバー百人を覚えるのにも苦労したんだ。私のことを知っていてくれてありがたいが、君のことを思い出せない」


「……いえ、大したことではないので」


 覚えられてない事に怒りはない。

 ロミアはそういうぞんざいな扱いを受ける事に慣れてしまった。

 だから、特に湧き上がるものもなかったのだが。


「…………」


 アマンダは例外だった。

 リュックの上で足を組み、見下ろす顔にはどこか怒りの感情が見えている。


 ──でも、おかしいな。


 アマンダが怒りをちらつかせる中、ロミアの頭には疑問が浮かんだ。

 百人もいたはずの仲間はなぜか二人しかいない。

 服装は統率された革の鎧に二人とも顔を隠すようにマスクをしている。


 しかもその内の一人は奇妙な漆黒のヘルム を持っている。

 どこか竜を思わせる顔付きのヘルムを被るのではなく、大事そうに抱えている(・・・・・)


 いや、そもそもなぜ彼はここに──。


「先生。椅子を」


「あぁいや、良いよ。少し話すだけだ」


 ミザは、ヘルム を持たないもう一人の男冒険者からの申し出を軽く断る。

 しかし、あまりに巨大なリュックサックに座っているとはいえ、身長差も相まってアマンダとミザ、二人の目線は同じくらいだった。


「どうやら、驚かせてしまったみたいですね。申し訳ない、魔物対策として、こんなものを身につけているものでして……」


 そう言って首元のネックレスを引き上げると、小さな水晶が付いていた。

 魔術発動の為の術式が刻まれているが、ロミアには何かわからない。


「……隠密の魔術、か」


「ええ……。やり直しが効かないこの迷宮ダンジョンでは、念には念を入れる事こそ、生き残るコツと思いましてね」


 隠密の魔術。

 自身の気配、自身から出る音、魔力を遮断する魔術だ。

 階位が高ければ高い程、効力を発揮する点から考えて、ミザが着けているネックレスは相当に値がはる高級品なのだろう。

 そうアマンダが判断した後で、ミザはネックレスを仕舞いながら笑顔で言った。


「ところですみません。私達は冒険の途中で小鐘を無くしてしまいまして。もし、よろしければ貸していただきたいのですが……いかがでしょうか」


 非常に丁寧な姿勢は酒場にいた冒険者と比べると、さすがにベテラン冒険者と言ったところだろう。

 アマンダよりも英雄ブレイブが似合う人だ、とロミアは思った。


「小鐘……?」


「商人を呼び出す金の小鐘の事さ」


「ああ、その小鐘ですか」


 エニグマから貰った金の小鐘は勿論大切に保管する為、リュックの中にしまってある。

 しかし、ロミアがそれを取り出そうとリュックに近寄ると、


「待て。渡すにはワタシの質問に答えてからにしてもらおう」


 アマンダがそれを強く制した。


「ちょうど良いじゃないさ。迷宮ダンジョンについて知りたい時に、ベテランさんがそっちから来てくれた。重畳だよ……クク」


 わざとらしく笑うアマンダ。

 その笑みは明らかに悪巧みしてる顔だった。


「ですがアマンダ殿。我々は冒険者同士、ここは助け合いの精神を……」


「そうさ。助け合いの精神だからこそ、ワタシ達を助けてくれよ。ワタシ達は小鐘を貸す、オマエ達は先人としての知識を提供する。良い等価交換……だろ?」


「…………」


 高圧的なアマンダの態度に、ミザは押し黙る。

 硬い表情でミザは一瞬考え、すぐに笑顔で返した。


「分かりました。あまり時間もありませんので、簡単なことでしたら、喜んでお答えしましょう」


「ククク……話がわかる奴は、嫌いじゃないぞ」


 ロミアが話に介入するまでもなく、話は決まってしまった。

 とはいえ情報は貰えるに越した事はない。

 暫く、事の行方を見守る事にした。


「さて、一つ目だ。この迷宮ダンジョンは何階まである?」


「十階層まである……と、私達は商人から聞きました。実際に行ったのは五階層までです」


「……十階層? 雲突き破る程巨大な建造物のこの塔が十階層までしかないって? 魔術的創造空間だからこそ……出来る事か……面白い」


 その点に関してロミアも驚きを隠せなかった。

 ロミアはパーティーを組めない境遇故に、塔への侵入を試みた事がある。

 ある時は塔を登り、ある時は地面を掘って下から、ある時は直接拳をぶち当てて貫通を願ったがどれも失敗に終わった。


「その通り、大きいのは見た目だけですよ。塔の構造自体、巨大な魔術式によって構築された複合空間体ならば、多数の空間を内包するが故に、巨大になる必要があったと……私達は睨んでいます」


 塔が普通ではない事を理解していたが、魔術的なものならば更に合点がいく。

 ロミアはなるほど、とひとりごちた。


「じゃ、次だ。次の階層に行く方法を教えて貰おう」


「ボスを倒す事、コレが条件です。階層には魔物、魔獣が生息していますが、中でも一際強いのがいる。定番でしょう?」


「どこかに強い魔物魔獣が待ち伏せてる、ってこと?」


「いえいえ、ボスは毎回違う魔物です。階層にいる、一番強い魔物・・がボスとなります。ボスには印がついているので分かりやすいですよ。このような印です」


 そう言ってミザは地面にその印を描いた。

 Ωの下に横棒が入ったものだ。


「ボス……ね。まぁ、あらかた予想はしていたけど。じゃ、最後」


「はい、何でしょうか」


「どうしてここにオマエ達が来れる? 階層の行き来は自由なのか?」


 詰問するような視線。

 ミザは一瞬の間を置いて、


「はい」


 と答えた。


「階層の行き来、とは違います。上の階層に行くには必ず自分のいる階層のボスを倒す必要があります。しかし、下がるのは別です。階層を下がるのはいつでも、誰でも(・・・)出来ます。これで、良いでしょうか?」


 ミザは喋り終えると急かすように手のひらを差し出す。

 フン、と鼻を鳴らすとアマンダはリュックの上から降り、中を弄ると金の小鐘を取り出した。

 そしてそのまま手のひらの上まで持っていき──、


「いや、もう一つ質問だ」


 小鐘を渡さず、再びリュックの上に飛び乗った。

 上から見下ろす姿は、大人ぶった子供のように──いや、実際そうか──腕を組んで仁王立っている。


「……四つ目です。それはさすがに、どうかと思いますが? 私は私の責務を果たしました。時間もありません、等価交換の意味がない」


 初めて、苛立ちを見せたミザ。

 額には血管が浮かび、細目もピクピク動いている。

 平静を保ってはいるが、怒り心頭といった具合だろう。


 そんなミザを見ても尚、アマンダは太々《ふてぶて》しく言った。


「仕方ないさ。何せ、最後の質問で新たに質問が生まれたんだから」


「……まぁ、いいでしょう。代わり、ではないですが、これが最後の質問です」


「良いねぇ、臨機応変じゃない。そういう心構えがモテる秘訣かな、ロミアもよく見習うと良いさ。さて、最後の質問だが──」


 戯けながら流れ矢を飛ばしたアマンダに、ロミアはムッと視線を飛ばすがニヤリと笑みだけ返された。

 そんな笑みの後とは思えない──、


「──なんで下に降りて来た? オマエラ」


 冷ややかな視線がミザ一向を貫いた。

 それは辺り一帯の温度が五度は下がったであろう敵意のまなこ

 ロミアはここで初めて、アマンダの考えを理解した。

 彼女は今──ミザ達を警戒していると。


「階層一つ登るにはボスを倒すのが必須、なら降りてくる理由はおおかた想像がつく。仲間割れ、階層環境に適応出来ず準備しに戻った、ボスが強過ぎて逃げたか──。でもね、どれにも該当しないのさ。わざわざ、一階層(・・・)まで降りてくる理由なんざね」


「…………」


 押しかかる重圧に、ミザのこめかみには汗が一筋垂れる。

 ミザはどう言い返すか、冷静に考えているようだったが、後ろの二人は違った。

 ヘルムを持った女は怒りに身体を震わし、それが限界値を超えた時、感情をあらわにした。


「貴様──! 先生は既に為すべき事を為したのだ! さっさとその鐘を──」


「いえ、待ちなさい」


「し、しかし……」


 身を乗り出して怒鳴る女冒険者を、制止する。

 狼狽する女に優しく微笑めば、女は素直に引き下がる。

 顔の良さだけでなく、心の清らかさこそ彼に人が集まる理由の必要なのだろうか。

 少なくとも、ロミアはかっこいいと思った。


「さすがに、英雄ブレイブ相手に隠し事は出来ませんか」


「ああ。もしあれで隠そうとしていたならオマエには才能がない。適当に微笑んどけ」


「ははっ。手厳しい事で──ですがまぁ」


 ミザの細めが薄く開き、微笑む。


「名声ではなく、実績でもなく、|実力だけでその称号を手に入れた《・・・・・・・・・・・・・・・》貴方を……侮るなという方が難しいかと」


「言うねぇ……」


 微笑むミザに、大きな瞳をこれでもかと開いて怒り心頭なアマンダ。


 お前とは違う、と言わんばかりに火花が両者の間で散る。

 二人とも静かに対話をしていたが、水面下では冒険者としての誇りのぶつけ合いが繰り広げられていたのかもしれない。

 なんて、ロミアは思ったが、そもそもアマンダは最初から大分感情を剥き出していたを忘れていた。


 ミザは嘆息しながら、微笑んで言った。


「ですが……特別に、選別としてお教えしましょう。正直、この情報は塔の概念を覆す物なので、一階層で知る人間は相当少ないはずですよ」


 観念したのはミザだった。

 或いは元からそのつもりだったのかもしれない。


「この迷宮ダンジョンは出られないことが前提条件故に、高難易度となっています。しかしでは、おかしいとは思いませんか? 商人が、一体|どうやって商品を仕入れている《・・・・・・・・・・・・・・》のか……」


「つまり、あのお化け……もといエニグマが商品を仕入れているのは──外からと言いたいのか?」


 顎に手を当て考えるアマンダの言葉に、ミザは拍手で返す。


「さすがに、英雄ブレイブの冒険者」


「はん、心にもないくせに」


 そのミザの様子にアマンダはご機嫌斜めだった。


「商人である幽霊族ゴーストらは外に出れる。そしてこの結論にはその先がある」


「……? ──まさか」


「商人はあらゆる物を売っているといつものたまう。それはつまり、不可能とされる、塔からの脱出(・・・・・・)でさえも、販売してると言う事です」


 塔に入って数時間。

 ロミア達の冒険は始まったばかり、ドキドキワクワクの展開を妄想し、活躍していく自分の姿を夢見るそんな時に伝えられた衝撃の真実は、あまりにも冒険者として夢のない話だった。

 アマンダは驚愕し唖然と、ミザはどうだ驚いただろうと言わんばかりの迫真な表情だったが、ロミアは一人悲しみに暮れていた。


 ──脱出不可能がウリなのに、出れるんだ。


 脱出が出来ず、その場その場で対応を迫られる超難関な迷宮ダンジョン

 それが“ᛚᛁᛒᚱᚨ(ライブラ)”が、“ᛚᛁᛒᚱᚨ(ライブラ)”たる所以だ。

 迷宮ダンジョンは一度入り、困難な敵が出たなら帰ってやり直す。

 そう言う“当たり前”が出来ない迷宮ダンジョンだからこそ、勇者になる為の初冒険にふさわしいと考えていたのに。

 拍子抜けだな、と一人ガッカリしていた。

 勿論、頭の中には、母を探すと言う目的も入ってはいるが、それ以上にロミアにとって目標である“勇者”の看板は大きかった。


 一人場違いに落ち込むロミアを置いて、二人の話は加速する。


「勿論、代償も大きい。商品としての価値は一億ギル! これが払えなければ、結局我々は外には出られません」


「一億……? それは冒険者が一生掛けてやっと手に入れられる程の大金じゃないか。どうやってそんな大金……」


 アマンダは飛び出た額の大きさに頭を振ったが、何かに気付いたように目が開いていった。


 視線はミザの、その背後。

 パーティーメンバーが持っているヘルムを見て、漸く正体に気付く。


「まさか……それ、オリハルコン、か?」


「その通り。これは私達が五階層で見つけた秘宝、世界三大希少鉱物に指定され、100グラム数千ギルで取引されるオリハルコン製のヘルムです。このヘルム、十キロはあります……数億、いや、数十億はかたい」


「そんな宝を一体どこで……、いや、それよりもまず現代にオリハルコン丸々使用したヘルムなんて存在するわけ──」


「──存在しない。とは、言えませんよね? 何せ私の手元にあるのだから。私はこれを売り払い、この塔から出る為にここまで来たのです。さぁ、これで役目は充分のはずです。早く鐘を……」


 渋々、アマンダは手に持っていた小鐘を放り投げる。

 バランスを崩すどころか冷静に片手でキャッチするミザは、さすがの一言だろう。


「乱暴な人だ」


「ふん、さっさと鳴らして出ていけば良いさ。知りたい事は充分知れた」


「……ふ、そうさせてもらいますよ」


 そう言って、ミザはパーティーメンバーの方へと帰って行った。

 この迷宮ダンジョンから脱出する為に。

 話が終わるのを見届けたロミアは、リュックの上で機嫌悪そうに胡座を組むアマンダに訊いた。


「何をそこまで機嫌悪そうにしてるんですか?」


「……オマエには、分からないか? あの男の臭さが……」


「まぁ……そうですね。鎧の所為か、少し臭いがキツいのはあるかも知れませんが」


「体臭とは言ってないだろ!? ……そうじゃなくてだな、これはもっと精神的な話さ」


 アマンダは大きな金瞳を動かして、ロミアを見る。

 何でも見透かしそうな、そんな力を持っている気がした。


「アイツの表情、ぜーんぶ嘘っぱち。まるで人間の皮でゴミを包んだみたいな臭いがすんだよ。動作一つ一つに、真実みを感じない」


「つまり、本性を見せてない、と」


「そゆこと。交渉、には向いた才能かもね。冒険者なんかやるより、よっぽど商人の方がお似合いさ。案外、元は商人だったりしてな……クク」


 そう言うアマンダの予想は意外にも的中していた。

 紅剣のミザ、彼は冒険者になる前に商人として働いていた。

 その事実を知る者は、この世に数人しかいない。


「そう言えば喋り方……少し変わってました?」


「ばーか。ありゃ交渉中だぞ? 初っ端が肝心なのさ。舐められないことが重要」


「その割には、大分下に見られてた気がしますが……」


「そゆことは思っても言うもんじゃないぞ! ワタシはこれでもか弱い乙女なんだからな!」


「か弱い乙女(40歳)ですか……」


「今ボソッとなんか言ったな!? 良いだろう、別に40歳でも! 文句あっか!」


 プンスカと怒る姿はどうにも40を超えた大人とは思えない。

 姿は勿論、精神まで子供とは、小神族エルフ系の種族は育ちが遅いのかも知れない。

 故に百歳で成人。

 あり得ない話ではなかった。


「……まぁ良いさ。知れたい事は知れたし、後はアイツらがさっさとやるべき事をやってくれれば────」


「──バカな!!!」


 と、背後で怒鳴る声がした。

 その声の主は、ミザ。

 身体を震わして、細目を極限まで開いて、摘む小鐘を睨んでいる。


「鳴らないんですか?」


 興味本位で気軽に訊いたロミアだったが、振り返ったミザの表情はとても先程までアマンダと交渉をしていた、冒険者ミザのものではなかった。


「……小鐘が鳴らない要因は二つある。一つは商人側に何かしらの来れない理由がある場合。だがこれはまず無い。彼らは身体を幽体化して魔物から逃げる事が出来る。接客をしている場合は、魔術で声が届く仕様になっている。それすらないということはもう一つの理由……」


 ぶつぶつと呟くそれは、ロミアへの返答ではなかった。

 青白く、汗が噴き出している。

 パーティーメンバーの二人も同じく、顔色は良くなかった。

 要領を得ない話に嫌気がさしたか、アマンダがリュックから降りて不満げな顔で言った。


「煩わしい奴だ。さっさと言えよ。その理由とやらを」


「……っ。つまり、私達の近くに、商人が来れない理由があるという──────」


 ミザが怯える様に呟いた、その瞬間。


「────誰だっ!」


 誰よりも早く、夜の闇に向かってロミアが叫んだ。


 そう──失念していた。

 いや、今回に関して言えばアマンダに非はない。

 単純に商人のミザが、アマンダよりも交渉術が上手だったというだけの話。


 話を逸らされた。

 アマンダが本当に訊きたかった内容を、ミザは口にしなかった。

 ミザが話したのは、鐘を欲する理由。

 その理由が衝撃的過ぎて、アマンダは失念してしまっていた。



 五階層まで登り詰めた冒険者が、なぜ一階層まで降りて来たのか、を。



 そしてその理由は、隠れる事なく、ロミア達の前に姿を現した。


「なんだ──アレは」


 五人の視線の先、悠然と草原を歩く漆黒の首無し騎士の姿が、そこにはいた。

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