プロローグ2
宮本と別れてからそのまま駅前の本屋に来た。
本屋に着いてから宮本に本の題名を聞くのを忘れたことに気づいた。今日発売って言ってたし取り敢えず新刊コーナーを覗いてみるか。
新刊が並ぶコーナーに目を向けると宮本佳奈の文字が目に止まった。
個性豊かなペンネームが並ぶライトノベルのコーナーで、本名が書いてある彼女の本は異彩を放っていた。
本名にこだわる理由でもあるんだろうか。
題名は[ひとりの彼女]表紙には黒髪ショートの女の子が写っていた。その女の子は机に座り悲しそうな表情を浮かべていた。ただ、イラストのタッチが柔らかい事もありそんなに暗い雰囲気は本からは伝わってこない。
そして本の帯には「ラブコメ新人賞受賞!」と書かれていた。
平積みになっている上から二番目の本を抜き取りそのままレジへと向かった。
「本にカバーおかけしますか?」
「お願いします」
いつもはカバーはかけないが今日はかけてもらうことにした。
ーーーーーー
翌朝、あくびをしながら通学路を歩いていた。夜更かしをして本を読んだのは久しぶりだった。
宮本の本は帯にあった通りライトノベルでは定番のジャンルのラブコメだった。
クラスで孤立しているヒロインを主人公が起点となり次第にクラスに溶け込んでいくという物語だ。ありがちな設定かなと初めは思ったがヒロインと主人公のやり取りも面白くて引き込まれていった。
あと主人公は男だったが、心情が細かく描写されていて驚いた。女子の宮本がこれを書いたとはとても思えないリアルな男子高校生がそこには描かれていた。
ふと前方に目を向けると宮本が見えた。
少し迷ったが、駆け寄って声をかけた。
「宮本」
「本読んだよ、すげー面白かった」
「ほんとに?君みたいな不良も本読むんだ」
こちらを見ると、少し驚いたような視線を送ってきた。
「不、別に不良じゃねーし」
食い気味に訂正しておく。おれはタバコも吸わないし、悪い事もしない。ちょっと髪を染めてピアスを開けているくらいだ。
「それより本の感想なんだけどさ」
「おい、鎌谷と宮本が話してるぜ」
「宮本が誰かと話してるとこ初めて見たわ」
「もしかしてあの二人」
周りの生徒からボソボソと声が聞こえてきた。普段ほとんど誰とも話してない宮本と話していたためか周りの視線を集めてしまったらしい。
「ここじゃ目立つから放課後に文化研究室に来て」
「あ、ちょっと、おい」
そういうと宮本はスタスタ先に行ってしまった。