プロローグ1
今日一日気がついたら宮本を目で追っていた。
授業態度は至って真面目、休み時間は読書。昼休みも一人で本を読みながら購買で買ったであろう焼きそばパンを食べていた。普通。それが一日見ていた感想だった。
やっぱり小説家は本をたくさん読むのだろうか。俺も小説は好きだし読むが学校では基本読まない。休日に読むのがメインだ。ジャンルにこだわりはなく本屋で目についた本を読んでいる。
彼女はいつも何の本読んでるんだろう。そして彼女はどんな小説を書くのだろう。とても小説と呼べる代物ではないが文章を書いている身として色々聞いてみたい。
しかし、朝の事があっただけに話しかけづらい。
「はいじゃあテストも近いからしっかり勉強しておくように、では解散」
いろいろ考えている間に帰りのHRが終わった。
次々と生徒達が支度を済ませ教室を出て行く。勿論そのなかに宮本もいた。
急いで鞄に筆箱と宿題のプリントを詰め込む。教科書はそのまま机の引き出しに入れて置く。そして宮本を追いかけようとすると馴染みの声に呼び止められた。
「鎌谷、美緒達とカラオケ行こうぜ」
「あ、わりい今日用事あるからさ、また今度」
「えー鎌谷付き合い悪ーい」
「めずらしいな、用事って何だよ?」
「あーあれだよ今日発売の本買いたいからさ!じゃあな」
若干むりやりだったが高崎達を言いくるめて教室を後にする。しかし教室を出ると宮本の姿はもうなかった。
急いで階段を降りて下駄箱へと向かう。素早く靴を履き替えて校舎の入り口を出ると、ちょうど宮本が校門を出て行くのが遠目に確認できた。
「宮本」
校門からかなり離れたところでようやく追いつけた。
「何か用?」
膝に手を付いてあがった息を整える。宮本を見上げると露骨に嫌そうな顔でこちらを見ていた。
「あの、朝はごめんな高崎が変なこと言って」
「別にいいよ、もう」
そういうとまた歩き始めた。
「いや、ちょっと待って」
「まだ何か?」
「小説」
「え?」
「小説書いてるって本当か?」
「今日私の本が出るから良かったら読んでみて」
そう一言だけ告げると彼女は再び前を向いて歩き始めた。