女子高生と竜2
とりあえず状況を整理したい。
今私が居るのは1LDKの私の部屋、ベッドを背もたれ代わりにテーブルを挟んだ私の向かい側に座るのは銀色の長髪をと蒼色の瞳を持つ綺麗な女性の姿をした竜…。
ちなみに竜だと名乗る目の前にいる彼女は薄いベージュのカーディガンを羽織りショーパンという今風?の格好をしているからどうにも竜だとは信じがたい…まぁこの目で竜らしき影を見てしまってはいるが。
そして、私はどうやらこの竜に選ばれた人間…らしい。
選ばれたってどういう意味だ?基準は?どうして私が選ばれたんだろう…。
当たり前と言われるかも知れないが、コーヒーを啜りながらも私は様々な疑問の答えを考えていた。
一通り話し終えた竜と名乗る彼女は黙りこむ私を心配気に見つめながら黙っている。
「大体話はわかったんですけど…いくつか腑に落ちない事があるんですが…」
「はい。何でしょうか?」
「どうして私が選ばれたんですか?というより基準は?私じゃなきゃいけない理由とかあるんですか?」
矢継ぎ早に尋ねる私に竜は軽く目を見開きながらも疑問に答えた。
「貴女が選ばれたのは貴女に力があるからです。竜と信仰を持つ人間の一族の末裔ならば竜と契約を結ぶ事は誰でも可能です。しかし竜の力は強大です、契約を結んだ者は自分の身を通し竜の持つ力を行使する事が出来ます。ですが竜の力の負荷に耐える事の出来る肉体、力を制御出来る強い精神力、そして暖かい心を持つ人でなければ竜の力に飲まれ暴走…または廃人化してしまいます。だからこそ古来より竜と契約を結ぶ人間は今伝えました者のみ契約を結ぶようにしています。そしてこの全てを兼ね備える貴女が選ばれたのです。」
「そんな特別な力…私にはないよ」
「いいえ、貴女にはあります。貴女が自覚されていないだけです」
ー貴女は特別な方です。だからこそ私は出会えるこの時を待ち望んでいました。
そう言って竜は私の隣に移動し、いつの間にか膝の上で握り締めていた拳に手を重ねた。
竜の掌から伝わる思っていたよりも高い体温、それは不思議と心を落ち着かせるモノだった。
「?…ッ!ヤバッ!もうこんな時間!」
「どうされたのですか!?」
不意に時計を見れば針が日付を跨ごうとしていて思わず立ち上がった。
慌てる私に竜は何事かと驚き見るからに慌てふためく。
「明日朝起きれない!明日も学校なんだよ!」
「学校というものに行かれるのですか?」
「そう!行かないと日数ギリギリだから!」
色々とまだ聞きたい事はあるがとりあえず後日聞く事にし、私はバタバタと寝る支度をする。
そんな私を他所に竜は、なるほどと何やら呟いていた。
「とにかく!えーと……あ、名前知らないや」
「私ですか?」
キョトンとした竜の顔を見ながら今更ながらに名前を聞いてなかった事を思い出した。
「私には名はありません。我々竜は仕えし主が亡くなると同時に死に、転生しますので。名は転生後お仕えする主に授けて頂くのが習わしです」
ですので名付け頂けたらと思います、なんて結構重要な事をこの日付を跨ごうとしている瞬間にさらりと言って退けた竜。
「……何故今それを伝えたんだよ…」
「聞かれませんでしたので」
この馬鹿竜…さっきまでの低姿勢的なのはどこに消えた…。
「…はぁ、まぁもう少し早く言って欲しかった」
とりあえず私は布団に潜り込み、壁に寄りながら竜を呼び寄せる。
寝ながら名前はとりあえず考えよう…明日の眠りにつくまでには思いつくだろうし。多分。
「…とりあえず寝ながら考えようか、じゃないと明日遅刻する」
お隣どうぞと言えば竜は一瞬ポカンとし、次にはクスリと小さく嬉しそうな笑みを溢した。
「ありがとうございます…ではお言葉に甘えて失礼します」
シングルベッドに2人で並ぶと思っていたよりも中々に狭くて目を閉じながら少しだけ苦笑した。
誰かと寝るのはいつ振りだろう…隣から感じる暖かい体温はどこか懐かしさを感じて、不思議と安心していた。
そしていつの間にか私は眠りについていた…。
リリィ…眠りに着く前にふと口から溢れたその名前、英語で純白等を指す時に使われるその言葉。
そううる覚えな解説をすれば竜は気にいったらしく、竜の名前はリリィに決定した。