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白銀ノ竜  作者: 鏑木
第2章
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竜と人が紡ぎし物語

「……セツナと白桜には悪い事をしてしまった。本当に優しい人の子だったのだセツナは。種族の垣根を容易く超え、誰とでも仲良くなる…だがとても意志の強い人の子だった」



我々がそれを全て壊してしまったのだがな…。

そう言って長は力なく笑いを浮かべた。


リリィは隣で静かに話を聞いている、表情は変わらないがどことなく目が悲しそうに憂いを帯びていた。




「セナよ、こう言われても嬉しくはないだろうがお主はセツナに似ている。意志の強さを秘めた目は勿論だがお主は心の奥底に秘めた他者を慈しむ暖かい心の持ち主だ。お主は気づいていないだろうがな。そしてリリィよ」






突然呼ばれたリリィはハッとしたように長へと顔を上げた。

肩を揺らしたところを見る限り相当思考の深みに陥っていた様子。






「…悪かったな、セツナとの記憶が極僅かしか残っていないとは言えこの話を思い出させた。あの頃の事をお主に許して欲しいとは願わぬが…セナと歩む道を大事にし、何より自分がしたいと思う事をするように」





誰かに言われた事など放って置けば良い。


そう長は優しい顔でリリィに笑いかけた、リリィは少し目を見開き静かに頷いた。





「…セナよ、リリィの事を頼む」


「はい」


「それと漆黒の竜を退けたと聞いた。契約直後でのその結果は見事だったな。やはりお主等の相性は随一という事、一族の反対を押し切り長い時を待った甲斐はあったな?リリィ」


「お、長!」





その話はッ!とさっきまでの表情はどこへやら、含みを持たせた長の言葉にリリィはあたふたとし始める。


だが長は止まらず、ニヤリと悪い顔をする。






「私はこの人しか契約するつもりはございません、この人じゃなきゃダメなんです!そう言って断固拒否していたな。他の候補は全て足蹴にして」


「長ー!!」


「……どういう状況だこれ…」


「我々には予言書という物があってなそこに竜と契約出来る者の名が浮かびあがる。リリィの場合異例な数だったが4名候補がいたのだがお主以外の3名とは契約しないと言って聞かず、誕生するのが1番最後であるお主を待つと聞かなかったのだ」






全く、あの時は大変だったな。

とクツクツ声を漏らしながら笑う長、そして顔を真っ赤にして怒るリリィ。





「そうしてまでリリィはお主に会いたかったのだろう、お主と運命を感じたのだな」


「…何かそこまで言われると気恥ずかしくも思えますけど…そんな器じゃないですし」


「謙遜するでない、己の事は自分ではわからぬモノだ。他者を通して初めてわかる事も多い、今は理解出来ずともいずれわかるだろう」


「そう、だと良いです」


「ああ、心配するな。様々な経験をすればいずれわかる」


「はい、ありがとうございます」




まだわからない事ばかりだけど、長の言葉を聞いてきっといつかわかる気がしてきた。


リリィが私を選んだ、私もリリィと共にいる事を選んだ。

今はなにもわからずとも、ただ今はそれだけわかっていれば良いとそう思った。




あの後長が時間は調整するから滞在し訓練していくと良いと言われ、私達は神殿とは別にある場所へと案内された。


そこはリリィ曰く普通の訓練では余り使わない場所。

そんな場所で待っていたのは長と同じ赤色の髪を持つ女性だった。リリィはあっ!と声を上げ、女性はリリィの声で顔を上げて私達を見るなりニコッと笑顔を浮かべた。






「カグヤさんっ!お久しぶりです!」


「久し振り、今はリリィだったよね」





カグヤと呼ばれた女性はリリィから私に顔を向けて、君がリリィの選んだ人だね。と手を差し出した。





「私はカグヤ、一応紅耀(コウヨウ)の竜と呼ばれてるんだ。まぁ紅い竜って事だね」


「白崎セナです。よろしくお願いします」


「セナか、よろしく」




差し出された手を握り返すとカグヤさんはニコリと爽やかな笑みを浮かべた。




「カグヤさん、ここにはどのような用事で?」


「あぁ、叔父さんからリリィ達に稽古付けてって頼まれてね。まだ契約したばかりでしょ?という事はセナはまだ力に目覚めてないって事だから」


「なるほど、だから長はここに私達を…」


「そう言うこと、セナは良くわからないと思うから。詳しくは中に入って説明するよ」





そう言い扉の中に入って行くカグヤさんの後に私達も続いて行く。


扉を潜ると中は一見武道館のような造りで、四隅に大きな火の着いた蝋燭が置かれている。

中央辺りでカグヤさんは立ち止まり、私達もその近くで立ち止まる。






「まず、契約と力についてかな。契約はもうわかっていると思うけど、血の契約だね。血の契約をすることにより人と竜はお互いの血を取り込む事で魂で結びつき一心同体になる。竜には死というモノはないけど、契約者が死ぬ時には竜も体が消滅し眠りにつきながら転生を待つ。竜は1世代前の記憶の一部を持ちながら新たに生まれ変わる。ここまでは大丈夫?」


「はい、大丈夫です」


「じゃあ力について。契約した人は竜の力を使う事が出来る。まぁ力と言っても契約者の潜在能力と共鳴率で強弱が変わってくる。その2つが低いと契約者だけでなく竜の力も弱くなるんだ、2つが共鳴率が高いとそれだけ竜との魂の結びつきが強いという事だから竜の潜在能力を全開まで引き出せるし、潜在能力というのは竜の力をどれだけ自分の体を通して使役出来るかという事だから高ければそれだけ強いというだね」





ここまでは理解出来た?

そう訊ねるカグヤさんに頷き返す、カグヤさんは中々飲み込み早いねと楽しそうに笑う。





「じゃあここからが本番だね。まず今のセナの状態としてはまだちゃんと力に目覚めてないんだ。これからきっと二人を狙う輩が増える、それに対抗するには力に目覚めるのが必要になる。だから今回、私達の役目はセナを契約者として完全な状態にすることなんだ」


「力の目覚め、ですか。それはどうすれば…」


「うん。これから教える、その前に今回のセナの講師役を紹介するよ」





あれカグヤさんじゃないんだ…。

そう思った直後、私達が入って来た扉が開き茶髪の女性が現れた。


凛とし涼し気な表情をしたその人は私とリリィを交互に見ながらゆっくりと近づいてくる。






「セナの講師役を務めるのはこの人、咲夜って言うんだ。私の契約者だよ」


「あ、この子が例の新人さん?」


「そうセナって言うの」


「どうも、咲夜です。よろしく」


「白崎セナです、よろしくお願いします」





まだ若いね。と涼し気な笑顔を浮かべながら私を見る咲夜さん。

ふと目に入った咲夜さんの鎖骨には何やら魔法陣に似た印が刻まれていた。


タトゥーかな?と思いつつ咲夜さんが差し出した手を握り返した。







「あ、ホントにまだ契約結んだばかりなんだね。印がない」


「そうだよ。こう言うのは咲夜の方が適任かと思って」


「あの、印って?」


「あれ?カグヤ説明してないの?」


「あ…それ忘れてた」


「……だと思った」



全く…と苦笑いを溢すカグヤさんに呆れつつ、咲夜さんは先程目についた鎖骨にあるタトゥーに似た印が指さした。




「これが竜と契約した者に刻まれる印。竜陣と呼ばれるモノ。力に目覚めた時にちゃんと契約が発動するの、その時竜と人両方に発動するの」




その時初めて人と竜は1つになるの。


そう咲夜さんはカグヤさんの方を向き、ふわりと笑った。


それは言葉を交わさずとも、心が通じあっているのだと思わせる光景だった。

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