6話
暗がりから現れた、男を先頭に森の中を歩く俺達。
周りには、男と共に現れた何人かの男女も俺達を守るかのように付いて歩く。
皆、無言で歩くため、喋るのが場違いなので喋らずに歩く。
暫く森の中を歩くと正面に周りの木と明らか違う、2回り程、大きな木がそびえたっていた。
その木の前で男が止まった為、全員が止まる。、
なんで、止まったんだろうと、考えていると
男がスーツの内ポケットから何かを取り出し木にかざすと、
いきなり、ゴゴゴゴゴッと音を立てて、木が縦に割れ、割れた左右の木が離れる。
左右に割れた木の中心から光の門が現れる。
目の前で起こった出来事に目をパチクリさせながら、小さい声で
「スゲェっ」と呟いてしまった。
男は俺からどうぞと言うように門へ促す。
不安になり、おじいちゃんを見ると笑みを浮かべて頷く。
恐る恐る意を決し、門をくぐり抜けると目の前に森の中にある以外、どう見ても普通の駅が建っていた。
しかも、ホームには黒いSLが停まっているのが見える。
不安になり、背後を振り返るとおじいちゃん達も門から現れる。
全員、門をくぐった為か門がスッと消える。
そして、再び男を先頭に駅の中に付いて歩き始める。
駅は無人の様で人の気配は一切感じられず、そのまま改札を素通りしていく。
ホームには近くで見ると年代物だと分かるSLが客車を2両連結して停まっている
男が、SLに連結されている客車の1つの扉を開け、
「さあ、どうぞお乗りください。お席はご自由に」
と客車に乗るように俺達に言う。
男に言われたとおりに乗り込み、中は至って普通の車両でだった。
しかし、よく見ると車両の中央の席で先に乗車している2人の乗客がいた。
2人は向かい合って座っている。
奥に進むにつれてその乗客が見知った人物である事に気付く。
「おばあちゃん!それにみーねぇも!2人共、どこに行ったのかと思ったよ」
「ごめんね。ちょっと私達は先にここに来て準備をしていたの」
「準備?」
何を?と聞く直前に車内に取り付けられたスピーカーから車内アナウンスが流れる。
「ただいまより、発車致します。お立ちのお客様はお席にお付き下さい」
そのアナウンスで俺はみーねぇの隣で窓際に座り、おじいちゃんはおばあちゃんの隣へ
通路を挟んだ席に陣さんとちーねぇが向かい合って座ると同時に
SLの汽笛が鳴り、汽車は暗い森の中を走り始める。
車内から見る景色は真っ暗で辺り一帯は木々がそびえ立つのが車両の光で薄ら判別できる程度だが、
窓から見える景色がSLの速度に合わせて徐々に速くなっている。
自分以外、今の状況を知っているであろう全員に向け質問をしようと、口を開きかけた瞬間
窓から眩い光が差し込んで一瞬、目を閉じた。
再び、目を開けると、先程まで窓の景色は真っ暗だったはずなのに窓から見える景色は
まるで様々な色で覆われた不思議な空間だった。