4話
久々の投稿です。その為、少し長めにしました。
本当は分割するつもりだったけど戦闘シーンが苦手だから
ずっとどういう展開にしようか、悩んでいましたがなんとか決まりました
まだまだ、稚拙な文章ですがよろしくお願いします
佐々村 美星様 コメントありがとうございます
まさか、コメントしていただけていたとは思いませんでした
今後ともよろしくお願いします
おじいちゃんの激怒する所なんて、初めて見た為、衝撃がハンパじゃない。
その為か、心臓がバクバクしている。
だが、男はそんなおじいちゃんの激怒を、驚きはしていたが無言で受け止めていた。
おじいちゃんはため息をつき、
「やはりと言うべきか。これがお前さん達の丁重と言うべき行為なのかのぅ?」
この緊迫した空気の中、俺の背後からぶわっと男の足元に何か黒い物体が2つ程投げ込まれる。
よく見ると、男か女かは分からないけど全身黒い衣装を身に纏った人間だ。
時折、苦しそうに唸っている。
足元に投げ込まれた、二人を冷ややかな目で見る男。
そして、視線を正面に向けると俺でもおじいちゃんではなくその背後を見る。
思わず、俺も男に同様に背後を振り返ると、そこには部屋の明かりが届いていない
暗がりから出てきたのは陣さんだった。
陣さんが2人の人間を投げたのだ。
陣さんはフンと鼻を鳴らし、
「この程度で暗殺部隊だなんて、まだまだ、鍛え方が足らんぞ。
言っておくが、こいつら以外の連中も気絶しているからな」
えええっ、暗殺部隊!? 陣さん何言ってんの!?ってか強すぎだろ‼
俺は予想外の発言に思わず、声が出そうになる。
正面を向くと、男は陣さんの発言に眉をピクっと一瞬動かすのが見えたが、
相変わらず冷静にそして、頭を下げる男。
「貴方様が、お怒りになるのは無理はありません。
なにぶん我々も帝国に知られる訳にはいきません。
そのため、こうして我々がっ!?」
男が下げた頭を上げる瞬間、
今まで、大した動きを見せなかった男がいきなり、後ろに飛び下がる。
そして何故か、痛みがあったような顔をしている
えっ!? 何で急に後ろに飛んだの?しかも、軽くだけど、痛がってる?
さっきみたいにまた後ろだと思い、
背後を見渡すが、斜め後ろに陣さんがいるだけで何も変わった所は無いように見える。
正面を向き、おじいちゃんの背後から顔を覗かせる時に気付いた。
いつの間にか、おじいちゃんの右手に杖が握られている。
その杖は見た目からして魔法使いの杖そのもので、
長さもおじいちゃんの身長より短いがそれでも長い。
おじいちゃんは再びため息をつき、
「今のは軽い挨拶じゃ。それに嘘をつくな。お前さん達は帝国の人間じゃろう。
いくら、わしらが表舞台に出なくなったとはいえ、服装やそこに転がっているお前さんの部下達の装備を誤魔化しても お前さんの顔くらい、わしらは知っておるぞ」
その口調からして男に呆れているのがわかる。
男は無言でおじいちゃんを見ているが、やがて先程の痛みが無かった様に
笑みを浮かべ、パチパチと拍手をする。
「流石と言うべきか、やはりと言うべきか、貴方様を誤魔化せませんね。出来ればこのまま穏便に
お連れしたかったのですが。一つよろしいでしょうか?貴方様があちらにいらっしゃる時、
私は駆け出し程度だったはずです。貴方様はなぜ私が帝国の人間だと?」
おじいちゃんはフっと鼻で笑い答える。
「何事も経験じゃ。それに教師であったわしに簡単に答えをもらえると思うな。
じゃが、突っぱねるのものぉ。簡単じゃ、お前さんの眼鏡じゃよ」
眼鏡!? どう見ても普通の眼鏡じゃん。眼鏡でどこの人間か分かるかぁ?
俺が悩んでいる間にも、顎を撫でているおじいちゃんの言葉は続く。
「それはお前さんのお気に入りかね、あるいはその眼鏡にこだわりがあるのかね?
それにわしらの命を狙う者の事など調べはついておる。
ネグロマール帝国軍人暗殺部 ギーズ大尉」
そう言うとおじいちゃんは懐から束になった紙を取り出しそれを放り投げる。空中でバラバラになり、
床に転がっている黒服2人を覆い隠すように散らばる。
その紙に書いて内容は見えないものの、何人かの男や女であろう顔写真が載っていた。
ギーズと言われた男は、おじいちゃんの解答を聞いて納得したのだろう。
「なるほど、眼鏡ですか。確かに私のお気に入りでしてね。
身に着けるものには注意を払うのですが、まさか眼鏡でお分かりになるとは。いやはや、脱帽ですよ
おまけにその紙には、私の名前と顔写真があるというわけですね」
ギーズは、眼鏡を外し、胸ポケットからハンカチを取り出し、レンズを磨き掛け直す。
そして、真剣な顔つきになり、おじいちゃんを睨みつける。
「ですが、私も軍人の端くれです。正体が明かされたからと言って、陛下の御前に
手ぶらで帰還する訳にはいかないのですよ‼」
言い終わる前に、腕の左右の袖から1つずつナイフが出てきたと
思った瞬間には、2つのナイフがおじいちゃんに目掛けて向かって来ている。
距離がある為、俺でもナイフが見えるが近くならば確実に気付いた瞬間には刺さっているだろう。
おじいちゃんに当たる‼
「おじいちゃんっ‼」
俺は絶叫のような声が出る。
おじいちゃんの服の裾を握り、おじいちゃんの顔を下から見るが笑みを浮かべている。
その直後、背後から耳にブワッと音がした時には、
今まで背後にいた陣さんがおじいちゃんの前に立ち、投げつけられたナイフを
先程、振り返った時には持ってなかった刀身の広い剣(一見するとブロードソードみたい)を
右手に持ち、ガチンと2回音がして覗いて見て見ると、
投げつけられたナイフを剣で叩き落とした。
床に叩き落としたかと思うと陣さんは無言のまま、ギースに向かって突進した。
再びガチンと音がし、陣さんの剣をギーズはナイフで受け止めるが、突進の勢いでギーズは
居間から外に吹っ飛ばされる。
その後、直ぐにガチンと金属がぶつかる音が何度もし始める。
二人が外に出た為、闘いを見ようと俺も外に出ようとするが、
おじいちゃんは一向に外に出ようとしない
「ねぇ、陣さんを助けなくていいの?」とおじいちゃんに聞くと、
おじいちゃんは笑みを浮かべ、
「もうじき、陣の勝ちで終わる」
外を見るとギーズは凄まじい速さで陣さんを中心に周りを走りながら、
切りつけようとしているが、
陣さんはその全てを捌いているのだろう。金属がぶつかり合う音が鳴りやまないし、
どう考えても、もうじき終わりそうな気配が見えない。
おじいちゃんがようやく動き出したと思ったら、
今度はギーズのスピードが見る見る落ちていき、
あっという間にギーズが四つん這いの姿勢になって息を切らしている。
ギーズ自身もこの状況に違和感と疑問が生じたのだろう。
「何故だ、何故、魔力が切れかける?この世界でもまだ魔力の余裕は十分あるはずだ」
その答えを知っているであろう、おじいちゃんを睨みつける。
おじいちゃんはその視線を気にせず、フッと笑みを浮かべ、答える
「分からぬか?魔力切れじゃよ」
その解答に苛立ったのだろう。
「そんな事は分かっている‼ 何故、こうも早く切れるんだ‼」
ギーズはおじいちゃんに対して声を荒げる。その声に最初の清楚さは、もはや微塵も感じられない。
おじいちゃんは意にも介さず、手の内を明かす。
「答えは、魔法陣の影響じゃよ。」
ギーズはその解答に納得できないのだろう。
「馬鹿な!? 魔法陣は、この屋敷や離れ、敷地内にはなかったはずだ」
そんなはずはない、ありえないという顔をしている。
おじいちゃんはギーズの疑問に対して、してやったりという表現が合う顔をする。
「なんじゃ?下調べが足らんのぅ。この山、自体にわしら以外の者の魔力消費が
増大する魔法陣を施しておるのじゃ」
その言葉に、ギーズは本当にありえないという顔をする。
「なっ!? そんな、この世界でそんな広範囲で魔法陣を発動すれば、魔力回復が容易ではなく、
最悪、貴方は自分がどうなるか分かるはずだ。」
その言葉に俺もおじいちゃんを見る。
おじいちゃんは俺の不安な視線を感じたのだろう。俺に言い聞かせるように
「大丈夫じゃ。孫を守るとっても死ぬ気もない、それにまだ種明かしは終わってはおらん」
俺に対して優しげな顔をする
再び、おじいちゃんはギーズに顔を向けると、
「お前さん、わしらが何年この世界に、此処に住んでいると思っている。確かにこの世界では
魔力の回復が遅い上、マナも少ない。だがのぅ、その魔方陣を構築したのはこの世界に来てすぐじゃ。
まぁ、最初は屋敷の周囲じゃったがそれを大きくして、毎日、少しずつ魔力を魔法陣に注げば、
今回のように、少量の魔力で発動も出来、消費を抑えられる何の問題もない。
それに運よくカモフラージュも出来たしのぅ」
そう言うと、おじいちゃんは俺を見る。
ギーズは横に転げて大の字なった。息はまだ切れてはいるが、それを聞いて納得したのだろう。
「ククク。まさか、そんな事をされていたとは。はぁ、はぁ、そんな考え思い付きませんよ。普通は」
苦笑いしながら、ギーズも俺を見る。
「なるほど、彼の垂れ出ている魔力で自分の魔法陣を気が付かないようにするとは。確かに我々は
彼の魔力を感知して来るのだから、周辺に彼の魔力があっても不思議ではない。はぁ、はぁ、寧ろ、
我々は彼という餌に喰いついた愚か者と言うべきでしょうね。部下たちが早々に倒される訳だ」
そしてギーズは目を閉じ、自分の最後を求めた。
「こんな格好と立場で厚かましく、申し訳ありません。どうか、私の首だけでお許しを。
その代わりに、部下の命だけはお見逃しを何卒お願致します」
おじいちゃんはその言葉を聞き、真剣な顔で一言
「約束は守ろう」
その言葉を聞いたギーズは
「ありがとうございます。感謝いたします」
と言い、次の瞬間、ギーズの意識は闇に落ちた。