2話
前回までは、いきなり家にメガネ男が入ってきて「お迎えに参りました」と
男の言葉からは
俺には意味が分からないことばかり。
しかし、おじいちゃんは激怒したけどそれは生まれてこのかた見たことない顔だった
ってか怒られたことないんだった。
読んで頂けると幸いです。
まぁ、とりあえずは家族構成と自己紹介からしよう
俺は、篠戸 凛
この春から中学3年生になるところで
取柄と言えば料理が得意。
「はぁ、はぁ、はぁっ。本当にいつもこの坂はぁ キツイっ!。ってか重い!」
そして俺は、今現在、体を前のめりにして荷車を引っ張っている。
その荷車には大量の野菜が詰まった十数箱のダンボールが載っている。
そんな荷車を十数分程引っ張れば、当然、額や背中から汗を流す訳で、
今は家までの長い坂を登っている。
俺の家 篠戸家は山の上に一軒だけあり、俺が生まれる前は
昔は孤児院をやってたらしいけど今は孤児院は閉め、代わりに離れで喫茶店を営んでいる。
この喫茶店が美味しいコーヒーやランチを出す事といくつかの要因があるけど
そのせいでTVで放送されてお客が増えた為、
足りなくなった食材を、歩いて買い出しに行ったのだけどこれが買い足す量が多い事と
店まで山の一本道を山を回りながら登る為、グルグルと4周近く回らないといけない。
これがマジでキツイ。
しかし、それがTV的には面白かったのだろう。
放送翌日には、遠方からお客が増えて行列が出来るほどだった。
まぁ、従業員としてはお客が増えたことは喜ばしいけど、しかし住人としては
別で母屋にお客が間違って入りそうになるから困る。
そのため、『母屋は立ち入り禁止』の立て札も作る始末だった。
「やっと着いた‼」
息をつきながら、裏から店の厨房に入る。
「ただいまっ!、はぁ、はぁ、買ってきたよ!」
そう言って厨房の調理台の上に一箱ダンボールを置く。
「おう、早かったなぁ。ありがとな 凛」
そう言いながらフライパンを手にして、料理を作っているコックの衣装が
マッチしてないのに料理が上手いと評判で今、オムライスを作っている見た目が
40代後半と言っても通りそうな今年55歳のおっさんは菊馬 陣
陣さんは昔、うちの孤児院でお世話になったって聞いてる。
喫茶店を出すと言った時におじいちゃんにうちの離れを改築して
使っても良いって言われて喫茶店を営むようになったと昔、聞いたことがある。
おまけにプロレスやら剣道やら格闘技や武術が好きで毎朝、
仕込み前に鍛えている。
おかげで昔から毎朝、俺も付き合わされる始末だし、
55歳の癖にどこぞのハリウッドスターですかって言うような筋肉モリモリの体をしている。
そのためか、近所のマダム達は通うのが大変なのに陣さん目当てに通ってくる。
「だったら、バイト代色付けてよ」
急いで手を洗浄し、冷蔵庫から冷えたペットボトルを取り出し、
中の緑茶を全部飲み干す。そしてエプロンを付け、
買ってきた野菜を洗い、切り始める。
「まぁ、考えとこう」
「おい!絶対考えないでしょ。それっ!」
すかさず、突っ込む。
そんなやり取りをしていると、ホールから俺が買い出しから
戻って来た事をスタッフに教えられたのだろう。
料理の受け渡しカウンターから顔を覗かせている女性が、
「あ、お帰り。ごめんね、凛。買い出し任せちゃって。
だけど、もうちょっとでお客さん少なくなるから」
そう、喫茶店の客が多い最大要因はこの人。桜花 美鈴
俺はみーねぇと呼んでる。みーねぇもうちの孤児院最後の出身者の1人で25歳。
テレビのアイドルや女優顔負けの美人でスタイルも良い。町内では有名人の1人。
そのためか、TVの取材時は出演者やTV局の男達から執拗にアプローチされていたけど
そもそも昔から、一緒に買い物してもナンパやスカウトをされることが多かった。
そして、今はTVの影響とネットの情報で前よりも店にみーねぇ見たさに多くの男共が
殺到する始末でもある。おまけに今は店の制服の為、尚更、綺麗さが増している。
「はい、はい。わかってるよ」
そう答えながら、今度は切った野菜を他の厨房スタッフに任せ、
オーダー票を見て、注文された料理を作り始める俺。
そんな忙しない状況下での返事に何が嬉しいのか
俺の返事に満足そうに笑みを浮かべながらホール戻るみーねぇ。
(ホールでは何人の男があの笑顔見て、自分に向けらてたものだと思って勘違いするんだろうなぁ)
と思いながら目の前の作業に集中する。
数時間後、お客も少なくなり、
なんとか一日の営業時間も終わった為、スタッフ全員ホールで休憩中。
「あ~~~っ!疲れたっ!マジで足がパンパン」
「もう、立ってらんないよぉ」
「帰るのが辛いなぁ。これは」
仕事の疲れを口にし、
他のみんなと談笑しながら
椅子に座って足を伸ばしてだらけていると、
店の窓から外を見たスタッフの一人が、
「あれ、美鈴さんまたお客さんに告白されてる‼」
「何っ!またかよっ。今月入って何回目?。もう20近くされてないか?」
「何言ってんの?もう確か30に入るところよ。」
「マジでっ!?こないだの芸能人も断ったんだっけ」
目の前の告白イベントに凝視しているスタッフ達に俺は背後から、話に入る。
「こないだのプロデューサーなんて『ぜひ女優になりませんか?』とか言ってたし、
芸能人は一目惚れしたのか電話や母屋にまで来てさすがにみーねぇも困るくらい
しつこすぎて陣さんにめっちゃ怒鳴られたし、それであの人、店への出禁をくらってたなぁ」
みーねぇが取材後もTV関係者からアプローチを受けていた事と
しかも、出禁まで行っているとは知らなかったスタッフ一同は驚愕な顔をしてる。
「えっ!?凛君それマジ!?」
「うん、店が休みの日にも来てたし、
俺にもみーねぇにTVに出ないか説得してとか芸能人はみーねぇのSNSアプリのIDを
教えてほしいって聞かれたし」
そんなみーねぇの凄さを話しているうちにみーねぇへの告白は終わったみたいで、
いつものように、告白した男は肩を落としながら帰っていく。
その背中は、もの凄く寂しさが出ていた。
店に戻ってきたみーねぇはため息をつきながら、椅子に座り
「もう、ほっといてくれないかなぁ」とぼそりと呟いた。
それを聞いた俺たちは苦笑いするしかなかった。
それから、店を掃除し、スタッフは全員帰宅。
喫茶店の締めは陣さんに任せ、俺とみーねぇは母屋へ向かう
ちょうど母屋の玄関から一人出てくるのは
こちらもうちの孤児院出身の井野 千奈22歳
俺はちーねぇと呼んでいる。
何より美人なのだがスタイルはというより胸では若干、みーねぇに負けてるらしい。
(本人がぶつぶつと呟いていた)
しかし、それでも他の人よりも大きいらしく、
女性スタッフからは羨ましがられるのを見たことがある。
おまけに、高校時代は、周辺の不良を束ねたヤンキーだった為、
時々うちに喧嘩の助っ人を頼みにどこぞの世紀末のモブキャラみたいなのがやってくる。
その度に嫌々ながらも助っ人をして行くのは面倒見がいいんだろう。
今は看護学校を出て、現在、町の大学病院で働いている。
また、つい最近は喧嘩が強いのと美人な上、男にも啖呵を切る性格が惚れられて、
ヤの付く若頭から結婚の申し込みを受けたけど断ったと聞いてる。
それを聞いた時には報復されるんじゃないかと焦った。
まぁあんまり考えない事にして、何も無いことを祈ろう。
疲れ切った顔をしてる俺たちに近づいて、
「2人共、お疲れさん。今、先生達にお客さんだから離れで待ちなさいだってさ」
「先生に?そう」
みーねぇとちーねぇはそれだけの会話でお客が誰かわかっているみたいだった。
お客が帰るまで、暫く離れで時間を潰すことになった。
ちなみに陣さんとみーねぇとちーねぇは、
俺のおじいちゃんとおばあちゃんの2人を先生と呼ぶのは孤児院の時かららしい。
二人が一緒にいる時は、おばあちゃんをみく先生って区別するために呼ぶけど。
うちで唯一、俺と血が繋がっているのは
俺のおじいちゃん 篠戸 海斗68歳
おばあちゃん 篠戸 深紅 68歳
おじいちゃんは大学の教授でおばあちゃんも大学の職員だったけどある日、
この山に建っていた今の屋敷を見つけて、当時はボロだったため改修工事をしてから
2人共、大学を辞めて孤児院を始めたけど、それも年のせいを理由に辞めたみたい。
でも、どう見たって見た目からしても若く見えるためか、年のせいで孤児院辞めたって感じがしないけど
また俺の両親は、俺が3歳の時事故で死んだらしい。
そのため、全く覚えていない。
以前、それとなく両親の事を聞いたがあんまり聞いて欲しくなかったみたいだったし、
別に両親が居なくても、みんな俺を可愛がってくれる。
そのため、それっきり聞かないことにしている。
そんなこんなで俺の家族構成はこんな感じ