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水晶の駒  作者: 南溟道人
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「棋士」が成れば「名人」

朝の匹夫、夕の覇王

水晶の駒。

価格は3万円。

本来。時給950円の介護職員に過ぎぬ余が購えるものではない。

だが。駒などを刻んだのは惜しいと思えるほどに透明な水晶。

サイズは…駒の底から頂点まで約15cm。厚みは3cmもある。

しかも。表は漆の「棋士」、裏は朱の「名人」が…盛り上げられている。

材料費だけでいくらした品だろう?

この奇貨を置かずにたかが3万の生活費が何になろうか。

余は駒を購入した。

他にいかなる品があったかを余は記憶していない。その店を余が見たのはそれが最初で最後であっただろうか。

駒は手に入った。

だがどうしたものか。

とりあえず所持金が心許ない。

やはり売るべきか。

漆と朱の盛り上げだけでも(字が「棋士」と「名人」ということは措いて材料と手間は)相当な価値があるはずだ。

しかるべく売れば何十万になるか解らないが薄給の余では足元を見られる。

そもそも…なぜたかが3万で余は購えたのか?

…帰宅した余が机の一点を見詰めていたら。

背後に気配があった。…そんなもの…たかが二酸化珪素の塊がどうしたのですか…

(誰か?)

何者かの声が響く。

人型の影…虹色の光の揺らぎが見えたような…気がした。

…あなたはその宇宙における将棋の覇者です。水晶でもダイヤモンドでもいくらでも手に入りますよ

(??)

…あなたには駒を並べる段階から全ての駒を「成る」ことが許されています。

(意味が解らぬ)

将棋に勝つだけなら初型で「と」が3枚もあれば十分。銀桂香の成りは飾り。

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