実践
ラサールの中心部。
瓦礫を越えた先で、隊長が振り返った。
華がすぐに声をかける。
「隊長、生き残りは?」
短い沈黙。
「いない」
その一言は、重い。
だが隊長は続ける。
「だが――地下の入口を見つけた」
崩れた商業施設の奥。
半ば瓦礫に埋もれた階段が、闇へと続いている。
「行くぞ」
地下は湿っていた。
鉄の匂いと、淀んだ空気。
足音が反響する。
進みながら、隊長が低く言う。
「鬼兵隊隊長、守剛 隆盛だ」
振り返らないまま続ける。
「無駄に死ぬな」
それが自己紹介だった。
迅は小さく頷く。
通路を抜ける。
その先。
鉄格子。
牢。
中に、街の人々。
痩せ細り、怯えた目。
こちらに気づいた瞬間――
村人たちは一斉に首を横に振る。
強く。
何度も。
華が駆け寄る。
「大丈夫、助けに来たよ!」
鍵に手をかける。
その瞬間。
天井が裂けた。
上から、影。
下級悪魔が数体、降り立つ。
迅は即座に刀を抜く。
守剛が斧を構える。
「待ち伏せか」
華の目が鋭くなる。
「……おかしい」
だが思考を止める時間はない。
悪魔が襲いかかる。
守剛の斧が振り下ろされる。
岩が隆起し、二体を叩き潰す。
華が水を走らせる。
刃のように圧縮された水が、ダガーと共に悪魔を切り裂く。
迅の前にも一体。
牙が迫る。
迅は歯を食いしばる。
「力を貸せ――羅刹!」
右手が灼ける。
赤い光が瞬く。
踏み込む。
一閃。
悪魔が裂ける。
守剛が命じる。
「迅、一体抑えろ!」
迅が応戦している間に、
守剛と華は三体ずつ、瞬く間に制圧。
残る二人の隊員は、牢の鍵へ向かう。
「急げ!」
鉄が軋む。
鍵が外れる。
制圧完了。
静寂。
だが。
守剛の目が奥を捉える。
「……来る」
壁の影が、歪む。
闇から現れたのは、中級悪魔。
空気が変わる。
迅の足が止まる。
圧。
動けない。
守剛が一歩前に出る。
「華」
低い声。
「全員を連れて逃げろ」
華が振り向く。
「隊長!」
「命令だ」
岩が足元から隆起する。
守剛の斧が構えられる。
中級悪魔が唸る。
華の唇が震える。
「……っ」
悔しさが滲む。
だが、副隊長だ。
「撤退! 急いで!」
半泣きの声。
だが足は止まらない。
村人を支え、隊員を促す。
迅が一瞬振り返る。
守剛が叫ぶ。
「行け!」
岩が爆ぜる。
悪魔と隊長が衝突する。
華は歯を食いしばり、地下を駆け上がる。
背後で轟音が響く。
ラサールの地下に、戦いの音が残る。




