立ち上がる理由
養成学校の地下。
特訓施設。
迅の体が床を転がる。
石の床に血が落ちた。
それでも迅は立ち上がる。
刀を握る。
目の前には――
鬼の気配を纏った“もう一人の迅”。
次の瞬間。
影の迅が動く。
拳。
腹に突き刺さる。
迅の体が浮く。
そのまま壁に叩きつけられる。
床に落ちる。
息が詰まる。
立ち上がる。
踏み込む。
刀を振る。
軽く受けられる。
蹴り。
迅がまた転がる。
地下の施設に鈍い音が響く。
何度も。
何度も。
迅は叩きつけられる。
膝をつく。
肩で息をする。
刀を支えに立つ。
そのとき。
背後で――
低い声。
羅刹。
「それじゃ、自分も守れないぞ」
迅は何も言わない。
ただ前を見る。
歯を食いしばる。
足に力を込める。
そして――
踏み込む。
振り絞った一撃。
刀が走る。
しかし。
影の迅が受ける。
そのまま拳。
迅の体が吹き飛ぶ。
床に叩きつけられる。
動けない。
羅刹が静かに言う。
「何故そこまでできる」
迅がゆっくり顔を上げる。
息を吐く。
「……何回も言わせるな」
血を拭う。
「みんなを守りたいからだ」
羅刹が鼻で笑う。
「綺麗事だな」
迅の視界が揺れる。
力が抜ける。
意識が――途切れる。
暗闇。
その中に。
一人の男が立っていた。
父。
「じん!」
笑っている。
「大丈夫か?」
迅は言葉が出ない。
父が近づく。
肩を叩く。
「強くなったんだな」
「大丈夫だ」
「お前は俺の息子だ」
笑う。
「絶対強くなる」
少しだけ寂しそうに言う。
「悪いな」
「一人にしちまって…」
そして――
真っ直ぐ迅を見る。
「負けんじゃねーぞ!」
その瞬間。
迅の目が開く。
地下の特訓施設。
迅は床に倒れていた。
呼吸が荒い。
それでも。
ゆっくりと立ち上がる。
刀を握る。
影の迅を睨む。
戦いは――
まだ終わっていない。




