目標
中庭のベンチ。
昼下がりの風が木々を揺らしている。
迅、蓮、玲の三人は並んで腰を下ろしていた。
蓮が息を吐く。
「やばかったな、烈さん」
玲が小さく頷く。
「……圧が違ったわね」
迅は空を見上げたまま言う。
「やれるだけ、やるしかない」
足音。
「よっ」
振り向くと、天城烈。
隣に鳴海翠。
翠が一歩前に出る。
「こんにちは」
蓮が立ち上がる。
「烈さん!」
玲も姿勢を正す。
「お疲れ様です」
迅も頭を下げる。
「お疲れ様です」
烈が腕を組む。
「さっきの話、聞いてただろ?」
三人が頷く。
「お前たちは、俺らが鍛える」
翠が静かに続ける。
「改めて。鬼鋭隊副隊長、鳴海翠」
「よろしく」
烈が蓮を指す。
「蓮。お前は俺だ」
「お願いします!」
翠が玲を見る。
「玲ちゃん。私が付くわ」
「よ、よろしくお願いします!」
烈が迅に視線を向ける。
「迅だろ」
一瞬、目を細める。
「お前は、もう見つけてるだろ」
迅は短く答える。
「……玄さん」
烈は何も言わない。
ただ、にやりと笑った。
「行くぞ。蓮」
翠が玲に微笑む。
「行きましょうか」
蓮が振り返る。
「玲! 迅! がんばろうぜ!」
玲が小さく笑う。
迅が頷く。
「ああ」
三人は、それぞれの師の元へ向かった。
⸻
縁側。
静かな庭。
八雲玄が湯呑みを傾けている。
足音。
「きたか」
視線だけを上げる。
「少しはましになったのか?」
迅が微笑む。
「前よりは」
玄が鼻で笑う。
「ふん。打ってこい」
紋章が淡く光る。
二割。
迅が踏み込む。
刃が走る。
玄も同時に動く。
交差。
すれ違う。
静寂。
ぱさり、と布が裂ける音。
玄の袖が、わずかに切れている。
玄が目を細める。
「……少しはやるようになったようだな」
振り向く。
「だが、俺は厳しいぞ」
迅は微笑む。
「望むところです」
玄が湯呑みを置き、立ち上がる。
「死ぬ気でついてこい」
迅は深く頭を下げた。
「お願いします」
風が吹く。
修行が、始まった。




