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⑵『虚構の船と、虚構の羽』
⑵『虚構の船と、虚構の羽』
㈠
虚構が悪い訳ではない。俺だって、芥川龍之介の、虚構に、一時期、心酔していたのだ。芥川龍之介の様に、自殺しようとは思わない。ただ、埴谷雄高に縋った、文体も、薄っすらと消失し始めたかのようで、少しヤバい感じだ。
㈡
どうすれば良い、どうすれば、自分で自分を認められるのか。分からないな、虚構を書いても、虚しいだけだと、俺の中の、まだ芸術至上主義への残り火が、ふつふつと、燃えている。炎は、揺れている。形式を持たず、俺は彷徨する。
㈢
虚構で良いじゃないか、そう悪魔が呟く。俺はしかし、今迄虚構を書いて来た節が有ったと思うが、どうかすると、全て真実だった様にも思う。虚構を織り交ぜて来た、と書いたが、案外、そうでもなかった、とも思うのだ。