第八十四話
で、対策会議。
いきなりガスを撒いていくと子どもやお年寄りが死ぬんじゃないかとか。
「そのくらいで死なねえよ。だってこの辺の惑星の連中クロレラ処置されてるし。入植初期はガキの病死が多かったらしいな」
大野がさも当然のように言った。
クロレラ処置なんて言ってるがクロレラではない。
クロレラと呼ばれる、とある惑星で見つかった光合成をする微生物群である。
その微生物に感染すると……感染しやすいように胎児のときにDNAの処置を受けて小児の内に感染させると飢餓と感染症に対する強力な耐性をつけることができる。
寄生虫や科学的な汚染にも強い一種の改造人間である。
ただ帝都惑星などでは田舎者の象徴みたいな扱いで就職結婚昇進で思いっきり差別されてる。
またレンのビースト種は労働用の遺伝子操作を受けた人種である。
こっちも筋力が強く、過酷な環境でも生きることができる。
どちらもデメリットとしては人間がかからない病気にかかったり、食べられないものが出てきたりする。
ビースト種のレンが肉ばかり食べてるのもこの影響である。
クロレラの方は除草剤にかぶれやすいっては聞いたことがある。
あ……なんか嫌な予感がする。
殺気じゃなくて真相の方。
「なあケビン。たしかコロニー生まれだったよな?」
「そうだけど。でも帝都近くの治安良いところだよ」
「クロレラ処置されてる?」
「されてないけど。人工照明しかないコロニーじゃ意味ないじゃん」
なんてこった。
そういうことか。
「婿殿、どういうことじゃ?」
「惑星カロンの女子化の原因わかった。ケビンは標準の人間だ。で、ゾークの因子が突然出てくるタイプ。種を残しやすいように美形。ただしゾークは人類への理解度が低いから因子が出てきたやつの性別が女子になったりするわけよ。メスいりゃ増えるやろ的な感じで」
「それがなんだ?」
「クロレラのせいで因子が出やすくなった。だから野郎が次々TSしたわけよ」
「本来の確率より多くがゾークネットワークに接続したのか!?」
「そういうこと。で、ここからが本番。カロンの住民はケビンと違う副作用が出まくってる」
「アルコール吸わせればいいのだろ?」
「そっちも問題がある。アルコールで一時的に接続切ってもネットワークに再接続されちゃ困るわけよ」
風邪で高熱出したりしても接続切れるらしい。
でも死亡したと思われないかぎり再接続できるわけだ。
死亡判定だが接続されない時間で決まるようだ。
「そりゃそうじゃな、じゃあどうする?」
「同時にノードを倒す。ガス攻撃はお願い。俺はボスやってくる」
というわけでまずはドローンで偵察。
レンがドローンで探してくれる。
「あれかな?」
それは鬼だった。
外骨格のある鬼。
それが誰かを待ち構えてるようだった。
ボスクラスじゃね?
カメラを通して目が合ったような気がした。
「ジェスター……コイ」
そう言うと金棒を振りかぶり……映像が切断された。
しゃべった!!!
頭良さそう!
「ドローンロスト」
困ったな。
ありゃリニアブレイザーが必要なやつだ。
有無も言わさず殺さないとダメなやつだ。
大きさ的には戦えないこともないけど。
ま、やってみますかね。
「さーてっと行ってくんベ」
他のドローンには武装した少女の群れが映ってた。
そっちは男子どもに押しつけようっと。
クレアと合流する。
でも連れてけないよね……。
鬼ヤバそうだもん。
ゲームに出てこない新型よ。
「今回ヤバそうな相手なのよ。俺だけで行くわ」
「だったらなおさら私が必要でしょ? ほら行くわよ」
断り切れなかった。
どうしようかなと思ってるとケツをぱーんっと叩かれる。
「隊長、俺も行くぜ」
メリッサだ。
「やだセクハラ?」
「そう、セクハラ」
認めやがった。
「俺としちゃクレアもメリッサも嫁の作戦の方に参加してほしいんだけど」
すると襟首をつかまれる。
にゃーん。
「婿殿行くぞ」
「ピゲット少佐ぁ!? なんでこっちに?」
「そりゃ婿殿が心配だからな。殿下も心を痛めておるぞ」
なおエッジたちは免許ないからガス作戦の方に強制参加だって。
というわけで惑星ごと救うぞーいと。
惑星大野までもこれで解放できそうだ。
防空システムがない惑星だから輸送艇で向かう。
外に出ると通信が入った。
「よう、レオ」
「なによおっちゃん」
大野がニヤニヤ笑いながら通信してきた。
「ここを無視するって手があったんじゃねえの?」
「いや、ありゃゾークも本気だわ。ここで逃げても追ってくるよ」
だからまだ有利に戦える状況でやろうと思ったのだ。
「そうかそうか、うん。俺も行くぞ」
「は? 人型戦闘機使えるの?」
「いや使えねえよ。免許持ってねえし。だからよ。虎の子出すわ」
ああん?
惑星大野の方からなにかがやって来た。
一世代前の戦艦だ。
「ほらお前らも乗れよ。軍からの放出品を海賊からパクった武器でコツコツ改造した船だぜ!」
海賊からパクったのかよ!!!
でも足があるのはいい。
輸送艇で戦艦に乗り込む。
中は最新艦と比べるのは可哀想である。
汚くはないが工場感がある。
「よ、ガキども……とピゲットさん。どうよ俺の船は?」
「武器はどこから手に入れた」
「知らん。海賊は始末したしな」
「威力が高すぎる一世代前のレールガンだ。すべて廃棄されたはずだ。どうして海賊が持ってる!?」
「上が廃棄を決めたからって下が従うとは限らねえって話よ」
怖ッ!
ピゲット少佐とやり合ってる大野も怖いが、レールガンが出回ってるのも怖い!!!
「ま、ここに将来国を動かしそうなやつがいるからよ。頼むわレオ。良い世の中にしてくれ」
「え、無理。嫁ちゃんに言って」
「ぎゃはははははは! ピゲットさんよ。ちゃんと教育してくれよな!」
「ぜ、善処する」
え、今の一瞬でなにがあった?
俺が悪いで終わったぞ。
戦艦が惑星に近づく。
だらけてた俺らも各々の機体に乗り込んだ。
さーて鬼退治だぞいっと。




