第七十八話
船に戻ると嫁が待っていた。
「よくやった婿殿! 要救助者全員収容じゃ!」
「奪還できなかったのは残念だけどね」
「それも時が解決するじゃろう」
「なぜに?」
「電力が切れたらバリアも消える。そしたらゾークは現地生物の餌じゃ」
過酷すぎる。
ゾークすら生きていくのは難しいか。
「超大型を用意できれば違うがの。ゾークもあの程度の惑星にリソースを割けんじゃろ」
そうか。
原作でも敵が弱い惑星と強い惑星があった。
エッジの村が低レベルの敵しか出ない理由。
侵略する価値がないからなのか。
例外は惑星サンクチュアリくらいだろうか。
そりゃそうかリソースの限界があるもんな。
嫁とブリッジに行こうとすると大野男爵がやって来た。
「さすがレオ大尉ってところか」
いや今回は地味に危なかったっすよ。
「で、やたら高貴なオーラを発してるそこの若いのは……サイラス殿下!!!」
「あ、紹介しますね。こちらはサイラス・シャーアンバー男爵?」
俺がテキトーなことを言うと嫁が口角を上げた。
どうも俺は意図せずホームランを打ったようだ。
「おう、そうじゃな。サイラス・シャーアンバー男爵じゃ」
「……あんたら……俺まで暗殺されるってことはないんでしょうね?」
「トマス兄様も反対せぬじゃろ」
「でもサイラス殿下の顔は知れ渡ってますぜ。もし告発されたらどうするんですかい?」
「一時的な措置じゃ。それに誰も命は惜しいじゃろ?」
要するに協力者がたくさんいるのだ。
嫁とトマス殿下の描いた画を邪魔したら消されるってことだ。
やだ貴族怖い!
さて救助者の皆さんは客室に通される。
基本雑魚寝の部屋である。
布団毛布とネットはあるので数日は快適にすごせるだろう。
シャワーとトイレは共用だけどきれいだし。
いつもの冷凍食品や自販機はあるし、兵士用と別のランドリーもある。
ホテルってほどじゃないが貨物船の旅客スペースくらいの快適性はある。
超大型船……恐るべし……。
目指すは次の惑星……と言いたいところだが先に大野男爵所有のコロニーに向かう。
救助者を降ろさないと。
大野男爵も嫌とは言えないだろう。
「ではコロニーに向かうぞ」
嫁も同じ考えのようだ。
というわけでコロニーへ。
一応、看板倒れではあるが俺も士官。
個室でゆっくりする。
上位の士官用の部屋は広いらしい。
……いらんな。
今の部屋で充分だ。
一息つくと腹が減った。
食堂にGO!
一応、艦内のルールで部屋では飯を食わないことになってる。(コーヒーやお茶は許されてる)
においがつく。
儀礼用の軍服からカレーのにおいが漂うという事態は避けたい。
(とは言っても部屋で食うヤツ多数のため、ランドリーには殺菌消臭用の装置が置かれてる)
食堂は上級士官用とそれ以外に別れてる。
上級士官用は嫁や大野男爵みたいな貴族との会談用。
これらの人員である給養員もいる。
上級士官用の【レストランそら】は小粋なジャズが流れ外食経験者の兵士が担当するウェイターもいる。(雰囲気は)本格的なレストランだ。
で、俺たちの名無しの食堂は超大型船だけあってフードコート風。
むしろ寂れた市場の食堂風。
嫁や俺はどちらを使うかというと当然一般用である。
というかレストランが開いているのを見たことがない。
しかも大野男爵……あのおっさんは自分の船じゃなくて戦艦に入り浸ってる。
こっちの方が飯がうまいんだってさ!!!
外観を整える手間を惜しんだのか、それとも単にセンスが死んでるのか。
食堂の壁には紅白幕が張られていた。
こういうとこやぞ! 寂れた市場食堂風なのこういうとこやぞ!!!
担当者のセンスが死んでる説に一票。
食堂は拡張現実から基本セットを注文。
ご飯や煮物やサラダなんかは置いてあるやつを勝手に取っていく半分バイキング方式。
スープはスープ用の機械で好きなものを注文。
容器をセットしてボタンを押すとフリーズドライの素が出てきてお湯が注がれる。
なお我々はバリバリの肉体労働者のためカレー用の機械もある。容器を入れてボタンを押すとレトルトのカレーがそそがれるやつ。食べ放題。
プロテインもある。
怪我したときにお世話になるやつだ。
あと各種おやつの自販機がある。
俺はハンバーグのセットを頼む。
カウンターでハンバーグを受け取り、あとは自分で盛る。
ご飯山盛り、カレーをつけて、野菜も大盛り。
野菜はヤングコーンを多めに。……好きなんだよ。
スープはコーンクリームスープをチョイス。
味噌汁も捨てがたかったが今回はこれで勘弁してやろう。
「おっす」
メリッサが来て俺の前に座った。
メリッサも同じメニューだ。
「ういーっす」
挨拶して食事。
と思ったら、大野男爵が来た。
「おいっす!」
「ちわっす」
焼き鯖のセットか。
さすが漁師。
カレーをつけないあたりに加齢の重みがずしりとくる。
雑な挨拶を交わすと今度は嫁が来た。
「婿殿来てやったぞい」
ハンバーグセット、ご飯少なめ。
野菜なし。
そして後ろからサイラス義兄さん。
「やあ」
プロテイン、鶏肉の照り焼きセット、タンパク質添加のパンに野菜多めで茹でたブロッコリー山盛り。
各種サプリ。
ボディビルダーの食事か?
「旦那様!」
レンも来た。
山盛りステーキ。以上。
さすがビースト種。
「あれ? みんなそろってるんだ」
自立型おっぱいのケビンが来た。
サラダ。しらすのピザとアヒージョ。
「女子か!!!」
「な、なんだよ!」
するとサイラスが笑う。
「ふふふ、みんな仲いいんだな。私には友人なんていなかったからな」
「妾も婿殿に会うまでは友と呼べる存在はいなかったの。友がいると暗殺の危険が増すからのう」
「そうだな。私たちは常に暗殺と隣り合わせの人生だったからな」
「皇族も大変だな……」
「そうでもない。今は友に囲まれて満足してるからの」
「私もだ。士官学校の男子。彼らが気さくに接してくれてうれしいよ」
あいつらも気を使ってるんだな。
少しほっこり。
こうしてグッダグダの雰囲気のままコロニーに向かうのだった。




