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第七話

 次の日、嫁と一緒に自動運転の無人車で学校へ。

 前のリムジンよりも外装がゴツイような気がする。

 なぜか俺も士官学校の礼服だ。

 嫁もあのどエロい戦闘服ではなくドレスだ。

 目が合うと嫁がほほ笑んだ。


「ああ、この車な。装甲車じゃ。これに武装はないが前後を親衛隊の戦車が守っておる。安心せい、皇帝の娘と言っても妾を狙うものなどおらぬ。婿殿には妾が狙われるほどの活躍を期待してるぞ」


 前後の車は重機じゃなくて戦車だったか……。

 にしても狙われるほどの活躍って……それは避けたいところである。

 妙な緊張感のまま学校に着く。

 車が止まるとタキシード姿のおっさんたちが出てきて絨毯を敷く。

 その赤い絨毯に優雅に降りるのが嫁。

 俺は本当にテキトーにエスコートする。

 ごっこ遊び感満載である。


「明日から電車にしませんか」


 一応懇願してみる。

 さらし者は勘弁してほしい。


「専用列車をオーダーせよと? 婿殿はスケールの大きい男だな」


「そこまで望んでねえッス」


「冗談じゃ。妾でもさすがに絨毯を敷くのは今日だけじゃ。これはな文章化されてない決まり。慣習というやつじゃ」


「なるほど」


 式典扱いじゃないけど式典なのね。

 教官たちがやってきて脇に並び礼をする。

 俺と嫁はそこを優雅に歩く。


「わかってるな婿殿。妾の婿から這い上がるには婿殿が選んだ最強の軍を作るのじゃ。これから手柄を立てる機会はいくらでもあるからの」


「目指せ結婚式の資金ってね」


「この阿呆め」


 なんて言いながら嫁は顔を赤くして照れてる。

 俺、俄然やる気がわいてきたぞ。

 講堂に案内され、嫁がスピーチする。

 各教室に映像が配信される。


「皇族として生徒の模範になるように心がけます」


 スピーチが終わり拍手が鳴り響く。

 式が終わると教官たちに呼び出された。


「出世したなこの野郎!!!」


 はいヘッドロック!

 そして拳骨グリグリ。

 体育会系の洗礼である。


「教官殿やーめーてー! って、それより戦艦しらなみのクルーは?」


 俺たちの護衛をしていた戦艦だ。

 実習教官でもある。


「全滅だ。バックアップもロスト。直前のクローン作成に失敗した。任務前の状態のクローンは作成できたようだがな」


 この世界は、このゲームの世界は基本的にパーマネントデスだ。

 クローンによる復活はあるが、本人と完全に同じ存在ではない。

 なぜなら周りや社会のための復活であって、本人のための復活ではないからだ。

 これ何が嫌かって、ゲームでも復活すると微妙にパラメーターが違うんだよね。

 本人じゃないから。

 半分オンラインゲームみたいなのにプレイヤーに嫌がらせ仕掛けてくるのやめてくれないかな?


「それは実に残念です」


「お前が気にすることじゃない。それよりも誇れ。お前がみんなを救ったんだ」


「黒歴史でも?」


 性癖大公開は隠蔽されて音声もAIで作成した別な物で吹き替えされている。

 それでも教官たちまでは生で聞いただろう。


「ああ、そうだ。墓場まで持って行ってやるよ。アレを入れたってお前はよくやった」


「あざっす!」


 教官から解放され制服に着替えてから教室に戻る。

 嫁は先にいた。


「婿殿!」


 トコトコトコっと小走りしてきてガバッと抱きつく。


「え、なに?」


 そういうキャラじゃないだろ嫁。

 疑問に思って嫁が来た方を見るとクレアをはじめとする女子たちが俺を見ていた。

 なにが起きた?

 下を向いて嫁を見ると悪い顔をしている。

 ……本当になにが起きた?

 クレアがやって来る。


「レオ、久しぶり」


「あ、うん」


 なぜか不穏である。

 一応誤解しないように言っておくが、クレアと俺はつき合ってないしフラグが立ったこともない。

 首をかしげているとベリーショートのボーイッシュ女子メリッサがやって来る。


「よう、レオ。元気か?」


「うん、元気元気」


「そうか。それはよかったな。でよ、質問があるんだけどよ」


「おう、なんでも聞いてくれ」


「俺で欲情できるか?」


 できマッスル。

 っていうかナイトライフの妄想ローテーションに入ってますが。


「【できるか?】なんて言うなよ。メリッサは男子の隠れ人気が……」


「おうわかった! 殿下ぁ! 俺、親衛隊入るぞ! さっきの約束でいいな。レオが望めば愛人になってもいいんだな?」


 俺は嫁を見る。

 うにゃりと悪い顔している。


「殿下。なにがあったか説明しやがれ」


「メリッサ・館花。かの有名な侍の一族じゃ。婿殿にとっても貴重な戦力じゃろう」


「殿下。その嫉妬とかは」


「するわけないじゃろ。友よ(・・)。悔しかったら妾を嫉妬させるほどの男になってみせい!」


「善処します」


「ふん! 本当に嫉妬したらその場で頭蓋骨たたき割ってくれたわ!」


「たたき割っていただけるような真の男を目指します」


「真の男! いいね! さすが俺の男」


「はははは。がんばるわ……」


 するとクレアがずんずん近づいてくる。


「おっすクレア……」


「デートの約束は? いつ行く?」


 お、おう。

 そういやそんな軽口言った記憶がある。


「あ、いま俺、既婚しゃ……」


「関係ない!」


 お、なに?

 クレアさんがキレた。


「レオ! あなた私たちを守るために結婚させられたんでしょ!?」


「たしかに皇帝陛下の命令だけど……」


「そんなの不当だよ!!!」


 クレアがまたブチ切れる。

 すると嫁がにまぁっと笑った。


「嫉妬か? かわいいものよ」


 クレアの顔が真っ赤になった。

 同時に怒りが表情に表れる。

 ……逃げていいよね。

 男子たちはすでに距離をとってひそひそ話してる。

 死ね!!!

 クレアはぶち切れながら深呼吸する。

 やだ怖い。それなにかの攻撃の溜めですよね?


「……わかった。私も親衛隊に入れて」


「わかっておるではないか。レオが欲しければ妾から奪ってみせよ。期待しておるぞ」


 はい二人目ゲット。

 それだけじゃない沖田めぐみやニーナ、それにエレナ、さらにはレンまでやって来る。

 別のクラスの女子まで混じってるのだが。

 全員、俺の黒歴史で名前を出した淑女の皆様だ。


「私たちも。レオの部下になる」


「えっと……君ら。はやまるな」


「レオは黙ってて!!!」


「はい!!!」


 怖い。

 女子たちは嫁をにらんだ。


「あんたのやり方は気に入らない。でも私たちはレオに命を救われた。親衛隊に入れて。借りを返すから」


「【それは私の男だ】とはっきり言え」


「隙を見せたら奪ってやる」


「楽しみじゃ。だがお前ら、覚悟しておけ。妾は銀河一のいい女じゃからな!」


 賞品のレオです。

 女子が怖いです。

 あと嫁が恐ろしいくらい自信過剰です。

 俺は恐怖のあまり目をそらす。

 すると男子どもが血の涙を流しているのが目に入った。

 やめろそのベヘリット顔。


「憎い……顔がいいクソ貴族が憎い。万国の労働者よ立て! 薄汚い特権階級を駆逐するのだ!!!」


 やめろ。

 冗談抜きで思想罪で逮捕されるぞ!

 すると嫁がまた悪い顔をする。


「そうじゃ。忘れておった。そこの男子ども。妾の親衛隊は……モテるぞ」


「俺たち士官学校生徒は仲間を見捨てない!!! レオ! 俺たちの心はお前と共にある!!!」


 このアルティメットクズどもが!!!

 次は真っ先に見捨ててやるからな!!!

 死ね!

 クローンも残せずに死ね!!!

 こうして学年のほとんどが俺の部下になることを選択したのだった。

 いいのかお前ら。

 もやもやしながら休憩時間を迎える。

 するとアホどもとは違うグループの男子がやって来る。


「やあレオ」


 清潔感のある小柄な男子が俺に挨拶した。

 たしか自宅から通ってるやつだと思う。

 どこかの男爵家の息子だったかな。


「ああ、えーっと……」


「ケビンだ。バカな連中だけどみんなを怒らないでやってくれ。キミみたいな上位貴族と違って僕ら下位の貴族は将来が絶望的だからね。なまじ貴族だから民間にもいけないし。かといって軍で出世なんかできるはずもない」


「悲惨だな……」


「だけど同級生に出世頭が現われた。しかも皇族の配偶者だ。僕らは君に賭けようと思う。それだけの価値が君にはある」


「でも運がよかっただけだぞ」


「僕らにはその運すらない。君には化け物じみた度胸と強運がある。ヴェロニカ殿下の船が近くの宙域で訓練していたのも。式典用の近接戦闘装備だったのも。君の運がもたらした奇跡だ。レオ、僕は君に人生を賭けたい」


「お、おう」


「じゃ、期待してるよ。……それと、素早い撤退判断。お見事でした。艦長」


 どうやら俺は自分で思ってるより期待されてるらしい。

 俺の痴態を生で見た人数数十億人なのにな。

 そのとき拡張現実に通知が入る。


「なんだ?」


 通知を開くと病院の検査結果だった。

 超能力タイプ【ジェスター】。


「嘘だろ……」


 最悪じゃねえか。

 リアルガチの最弱じゃねえか!!!

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道化師…最低ランク?でも最強?ふむ…
>>ベヘリット顔 なんぞそれと検索して2度笑かされる。お見事です。
ジェスター…トップガン??
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