第六百五十七話
ほほ笑ましい野球の練習を見てると嫁ちゃんが俺に聞いた。
「なあ婿殿……なぜそこまで善政にこだわるのじゃ?」
「ま、麻呂みたいになりたくない……」
ガクガクブルブル……。
だって麻呂が目の前で暗殺されたもん!
上層部に使えないと思われたら最速で暗殺されるの見たもん!
ああなりたくないもん!
「それか~……妾の父上が原因じゃったか……」
「し、幸せで満たさなければ……」
ガンギマリした目でブルブル震える。
「怖いから! 落ち着け婿殿!」
だって怖いじゃん!
だから俺は雇われのコンビニ店長だって言ってるのよ。
普段から「クロノス社会が俺を必要としなくなったら退位するよ」って言い続けることで暗殺を回避してるのだ。
だってさー、俺が年取って能力低下で悪政し始めたら、たぶん直感さんも働かなくなるのよ。
六十歳定年制を本気で考えよう。
「また退位することばかり考えておるな」
「うん!」
「……させてもらえないと思うがのう」
なんかボソッとつぶやかれた。
七十歳くらいまでは働きたいからなにしよう。
やはり電気設備の管理だろうか。
銀河帝国でもクロノスでもいいから雇ってくれないかな?
しばらく働いたら軍人年金アテにしてカフェか町中華やるから。
「また変な妄想してるな……銀河でも指折りの資産家じゃろうが……」
「嫁ちゃん。俺たち子ども多いから(予定)」
「なんで婿殿の妄想は異常なまでにディティールが細かいのかのう?」
「……将来が不安なんだ」
「あー、もう、ほらローザリア帝国の練習を見よ!」
運動能力の高い軍人中心のチームのせいか町内会の野球チームくらいの出来にはなってる。
こちらのチームは銀河帝国の高校の有力校に届かない感じだ。
クロノスだけ高校野球の有名校レベルかな?
実際、士官学校の野球部って有名校だし。
まあ試合は成立すると思う。
銀河帝国も元プロや高校野球経験者の混成チームだし。
クロノスは元士官学校野球部とクロノスのプロチームの混成だ。しかもイソノがいない。
なのでローザリアも恥はかかないだろう。
さすがに銀河帝国のプロチームの派遣は無理よ。
心を折る勢いで叩きつぶされる。
来たら来たで地獄になるのがわかってるのよね……。
嫁ちゃんとピクニック気分で野球を見学。
ああ、こんな穏やかな日々が続けば……。
なんて思ってたら妖精さんがドアップで現われる。
「な、なに!」
「たいへんです! サイバー攻撃かけられてます!」
「ふぁ?」
もしかしてローザリア……と思ったけど軍人さんは楽しそうに野球やってる。
シャーロットも応援してる。
シャーロットのところに行く。
「どうしたクロノス王」
「なんかサイバー攻撃されてるんだって」
「どこが?」
「うちの国」
「さっさと宮殿に帰って仕事しろ! 私もすぐ戻る!」
ですよねー。
はい、ローザリア帝国は容疑者から除外っと。
「宮殿、こちらレオ。戻るから車回して」
ということでやって来た自動車というか装甲車で移動。
「妖精さん、一級警報発動」
「もうしました!」
「へーい。いまどんな状態?」
「インフラや銀行システムは関連は一時的に回線遮断したよ」
「うぃーっす。関連国に連絡と。ポリーナと通信」
「陛下。いったいなにが……」
「サイバー攻撃されてる。ラターニアに問い合わせて。無事な回線持ってるでしょ?」
「わかりました……」
あ、把握されてると思ってなかったのか。
ごめんね。
サリアきゅんにはズッ友回線で連絡。
すぐにサリアが出た。
「ちょっ、いま鬼神国チームの応援に出るとこなんですけど!」
怒られてしまった。
「サリアきゅん、こっちはサイバー攻撃まみれだけどそっちはどう?」
「え? ちょ、すぐに調べます! うわーん応援間に合わないよ~!」
ごめんね。
さて……。
「シーユンに連絡しないと……」
「あー……なんかすまんな婿殿」
「大丈夫……シーユン、ちょっといい?」
シーユンを呼び出す。
「どちくしょおおおおおおおおおおおおおお!」
あ、ホームランされたっぽい。
「なんですか! レオお兄様!」
目が血走ってる。
「あのね……サイバー攻撃されてるのよ、太極国にも言ってくれないかな」
「ふざけんなあああああああああああ! 誰だぶち殺すぞおおおおおおおおおおッ!」
くすん……うちの子、野球のときだけ人格変わっちゃうの……。
普段は誰にも優しいおしとやかなお姫様なのよ。
いや本当に。
「てめえらあああああああああ! 犯人ぶち殺せ!」
「うおおおおおおおおおおおおおッ!」
殺意高めにブチ切れていらっしゃる……。
もう知らにゃい!
宮殿に帰ると緊急会議。
ローザリアのシャーロットも急いで宮殿に来た。
「妖精さん、報復攻撃!」
「もうやってます~♪ ねー、シャーロットちゃん」
シャーロットを呼び出す。
「クロノス王、どうしたのだ?」
「あー、うん、俺の相棒が用事あるんだって」
「はじめましてー! 電子の妖精、ルナちゃんです!」
「……お、おう。AIか?」
「あー、うん、説明が難しいんだけど、電子の妖精」
「電子の……?」
「そういう生き物なんですよ~。あ、レオくんの妻の一人ッス」
「だいたいそんな感じ?」
妻と言われると違和感あるが、関係性を説明できない。
「よくわからんが、道化の本能がヤバい逃げろとささやいてるのだが……?」
「敵対しなきゃ大丈夫」
これは断言しておく。
妖精さんは誰彼構わず迷惑かける狂犬ではない。
俺を殺しかけただけだ。
「お、おう……そうか」
「あのね、シャーロットちゃんの船の処理能力貸して」
「あ、ああ、計算機の使用だな。わかった」
「ありがとう! シャーロットちゃん大好き!」
そう言う妖精さんであるが、どう考えても正義の側ではない表情をしてた。
あー、うん、ブチ切れていらっしゃる。
どうすんのこれぇ!
犯人誰よ!?
バカなの!
一番怒らせちゃいけない人怒らせたじゃん!
「レオくんレオくん、太極国が暗殺部隊を組織したって」
「もうレオくん止められないよおおおおおおおおおおッ! もう生きてけないよおおおおおおおお!」
もうなにもかもわからんのである。
わかるのは犯人死んだなってことだけだ。




