第六百五十話
さーてカトリ先生が審判で忙しいうちに消え……。
ガシリと肩をつかまれた。
「第二回人型戦闘機操縦大会期待してるぞ」
やだ怖い!
全力で先送りにしようっと!
なんて一人で納得してるとローザリア帝国の兵士が目を輝かせる。
「そう言えば陛下はクロノス最強のパイロットだと耳にしました! ぜひ言ってご教授を!」
あらやだ。
「ほ、ほら、壊すなって言われてるし。お高いし。ぼく、機体をだいじにする性格だし」
「お前があまりにも壊すからクロノスに工場のライン作ったってよ。俺らのパーツの価格もかなり安くできるようになったらしいぞ」
カトリ先生満面の笑み。
ガッデム!
専用機なのに量産機のラインで作れるようにまでなってしまったか!
「えーっと。責任者に聞きますね」
京子ちゃんである。
「なんですかー(ズルズル)。いまラーメン食べてるんですけど(ズルズル)」
「一日一個ね~。それよりさー、ローザリア帝国から人型戦闘機での模擬戦闘したいって申し入れあったんだけど」
「いいですよ~。量産パーツの強度と精度見たいですし」
「それは止めてよ!」
「どうせレオくん壊すんだから前向きに検討した方がいいですよ」
「やだー!」
抵抗したが人型戦闘機の総責任者の許可が出てしまった。
「やるの?」
カトリ先生とローザリア帝国民がにっこり。
いいもん、鬼神国人からもエントリーさせるもんね!
つうわけでなし崩し的にローザリア帝国との親善操縦大会が開かれることになったのだ。
さすがに人型戦闘機になると動かすだけでも金がかかる。
外交費で金出してもいいんだけど、少し前にカトリ先生とのバトルロイヤルやったばかりなのだ。
親善大会のスポンサーを探さないと怒られる。
執務室で悩む。
……ルーちゃんママが廊下を通るのが見えた。
これだ!
「ルーちゃんママ! 助けてー!」
「ど、どうされたんですか!」
「人型戦闘機の親善大会やりたいんですけどスポンサーを探そうと思って」
「いいですか陛下。私にご相談なされたのは正解でした。ええ、全力で探そうと思います」
あれ……?
なんか前のめり。
「陛下……できればスポーツの大会も開かれては?」
「こないだやったばかりじゃ?」
「親善交流の名目にいたしましょう」
あれ……大会規模がいきなり想定してたのの数倍に……。
「惑星級要塞には民間人も多く搭乗しているとお聞きしております。時間を取って野球やサッカーバスケなどのスポーツ体験会、逆にローザリア帝国文化の体験・展覧会、民芸や書籍などの物品の展示即売などを開いてはいかがでしょう」
「あ、あのえーっと……妖精さんできる?」
「はいはーい。レオくんの相棒、妖精さんですよ~。少し前に体育祭とか文化祭やったとこが空いてますよ~」
「空いてるの~!」
「だって野球場とか別に作ったじゃないですか。各国でリーグ作ったんでクロノスでも試合は多くないですし。クロノスのリーグはオフシーズンですし。ほら学生の全国大会。あれは夏の終わりの予定なんでまだ時間ありますし」
デデドン!
「では本社に伝えておきます。ご安心ください。国営放送一社で独占などいたしません。民放まで利益を分け合いたいと存じます」
デデドン!
あ、あかん……大会規模がえぐい大きさになってきた。
「く、クレアに。こういうときはクレアに! ルーちゃんママ、よろしくお願いします!」
そう、我が政府。
最強のストッパーにお願いすれば!
クレアの執務室に飛び込んでまくしたてる。
「助けてクレア!」
「無理よ」
「なんでぇ!?」
「だってイソノくん全力で働けないもん」
現在イソノは超時間勤務をさせないようにしてる。
こんなので空中分解したくないじゃん。
だから家族が第一。
うちはホワイト労働国家なのだ!(国王除く)
ということで抵抗もできずに大会規模は膨らむ。
まずは文化系。もう丸投げ。
もはやプロ級の腕前になった元吹奏楽部がパレードをする。
そして軍にいた元プロによる地獄の特訓で飛躍的に上手になった軽音がライブをする。
わかるな。
やるからには全力だ。
このお祭り騒ぎにクロノス王の忠実な臣民を自称するレプシトール企業が参戦しないわけがない。
ニンジャとアーマードリキシの実演に、日本民族的には「少し違うんじゃね」的な着物で「パパ、新しいキモーノ」と喜ぶ女児……。
アーマードリキシはうちの相撲部や銀河帝国軍の元力士とエキシビジョンマッチをする。
ニンジャどもは「クロノス王が頭領ですので」と俺に丸投げしてきやがった!
あ、汚な! おまえら心が汚れすぎてるだろ!
はいはい、手裏剣の体験会にしときなさい!
あとアクロバットのパフォーマンスね!
それとレプシトール鮨のブース……保健所! 大丈夫? あ、大丈夫。はい。
カリフォルニアロールあとで提供するように。
結局、レプシトール人って国のシステムが崩壊してただけで民度高いのよね。
文句言わせないような小賢しい手段使いまくってきてるもん。
情とシステムの両方に訴えかけてきてるのよ。
なんだろうか……オーゼンちゃんと違って「ブチ切れるギリギリ」をちゃんと見極めてねじ込んでくる。
キレながらも「しかたねえな」ってところをちゃんと狙ってくる。
なおシーユンであるが、太極国の推しチームのユニホーム着て野球ブースでグッズの売り子してる。
お兄ちゃんに「あれいいの?」って聞いたらあきらめた顔してた。
太極国皇帝陛下を見にローザリア帝国の民間人の列ができてた。
シーユンは緊急で呼び出した太極国のオールスター選手とわいわい楽しそうに話してる。
こういうときだけはいつものお姉さんではなく年齢相応の女の子になってる。
……本人が楽しそうだからいいか。うん。
野球とシーユン混ぜるな危険。カワゴン知ってるけどいつも思い通りにならない。
パーシオンくんは参加しなかった。
ほら……あそこは全体的に陰キャなので……。
クレアはプロレスで忙しくてかまってくれない。
イソノ夫妻は貴賓席で大人しくさせてる。
人混み多すぎなんじゃ!
差し入れ希望リストはこれね。はいはい。侍従さん、頼みます。
おかしいべ!
まだ本番前の文化祭よ!
なのにこの人だかり!
シャーロットも貴賓席で大人しくさせてる。
「お好み焼きというの食べたい!」
「はいはい! 持ってこさせるから!」
「聖女はどこだ!」
「救護所で看護師のシフト中ですぅ!」
「チョコバナナ!」
「はいはい! 持ってこさせるから!」
「あと野球とサッカーとバスケットボールっていうのもやってみたい!」
「あとでね!」
小学校の遠足の引率気分である。
これスポーツイベント始まったらどうなるんだ?
いや本当に。
おかげさまでわんこの症状安定しました。
ありがとうございました。




