第六百四十七話
新しいジェスターである。
さーて、現状わかるのは……。
ローザリア帝国ちゃんはずっと戦争してるのね。
ジェスターがトップなのはいいとして、ジェスターがトップじゃなければならない状況。
つまり不幸が起こりまくってるってわけ。
そりゃさー、病気や災害だったら不幸だけどあきらめるしかない。
前を向いて生きるしかない。
でも戦争は確実に疲弊するからね。
その状態だとジェスターがぽんぽん生まれると。
ただし国民の一割がジェスター因子を持ってる銀河帝国でも三人しか見つかってない。
確率は億分の一より低いのである。
ってことは、ローザリア帝国ちゃん……かなりデカい国だぞ。
うーん、どうやってつき合っていこう。
ゼン神族の敵だとしても味方とは限らない。
ゼン神族と戦わせて弱ったところをいただき……あ、そうか。
ジェスターが皇帝だから、そういうインチキできないのか……。
それやったら最悪死ぬしな。
でもさー、皇帝すら使い捨てにするシステム組んでる可能性もあるんだよね。
ジェスター養殖するシステムが確立されてるとか。
方法は思いつかないけど、例えば巨大な穴掘って子どもを殺し合いさせて生き残ったヤツだけ選別するとか。
そうすると不幸を充填できる。
あ、でもそれやったらジェスターが蜂起して国ごと滅ぼされるか。
俺たち偉い人の言うこと聞かないもんね。
俺がそんなことやられたらゾーク倒した後でラターニアの子になって銀河帝国滅ぼしてたもん。
うーん、迷う。
そんな俺を見て嫁ちゃんが笑う。
「どんな決断でも婿殿がするのなら悪いようにはならんじゃろ。いつまでも悩まずに勘で決めよ」
「それがさー、今回直感ちゃんが働かないのよ~」
なんだろうね?
相手がジェスターだから未来を計算できないのかな?
うーん、いままで俺に敵対してた勢力はこんな気持ちだったのか。
「別に敵対関係じゃないのじゃろ?」
「そうなのよね~。意見も利益も対立してないのよ。相手もなにか要求してきてるわけじゃないし」
挨拶しに来ただけみたい。
ま、仲良くしておけばいいか。
というわけで頭の整理ということで食堂で料理。
なんかジャンクなものを食べたい。
倉庫を漁るといつもの焼きそばがあった。
とはいえソース焼きそばは続いてる。
うーん、あんかけ焼きそばでも作るか。
だいたい八宝菜よね~。
ということで八宝菜作りまくり。
ニーナさんもやって来て手伝ってくれる。
正確には給養担当のニーナさんの手伝いが俺である。
メシを作ってるとシャーロットと近衛がこちらに……。
待ってなんでいるの?
「よう、クロノス王来たぞ」
「待って、聞いてない」
「うむ、強引に入ったからな。それにしても料理が趣味っては本当みたいだな!」
「趣味じゃありません! 船乗りは当番制なんですぅ! もー! 来るなら来るって言ってよ! 何人?」
「十五人だが」
「ニーナさん足りる?」
「うん大丈夫」
「じゃあ席について。いま作るから!」
「お、おう、作ってくれるのか……」
頭の中で完成してたローテーションが崩れたが、このくらいリカバリーできねば生き馬の目を抜く外食産業で働けない。
「あんかけ焼きそば食べられる?」
「う、うむ知らぬ料理だが好き嫌いはないぞ」
「護衛の皆さんは焼きそばだけじゃ足りないでしょ? 炒飯もつける?」
護衛の皆さんはざわついてたがシャーロットが代わりに返事する。
「うむ、たくさん頼む」
「へーい」
炒飯も作る。
もちろんみんなの分もね。
炭水化物過多だけど気にしない。
怒濤の勢いで作っていく。
イソノは嫁さんのところ。
ケビンはお産も手伝うみたい。
どうやらケビンは期待されてるらしい。
本気かつ全力で育てられてる。
そりゃねえ。若くて人間以上の体力があって戦場での治療の経験もあるんだからねえ。
なお、次に目をつけられてるのは看護師の免許を取ったタチアナとワンオーワンであるが……まあ……おいおい話し合おうと思う。
二人とも病院でのシフトでいないけどね。
なんてどうでもいいことを考えてたらセットが完成。
手が空いてる連中が配膳してくれた。
最近はシフトがそれぞれ違うので一斉に「いただきます」はなし。
忙しい順に配る。
シャーロットたちにも配って自分たちの分を作って席に着く。
そのタイミングで嫁ちゃんが来た。
嫁ちゃんの分はすでに作ってある!
「なんじゃ来たのか。婿殿の作ったご飯は美味しいぞ」
「……その……なんだ。いつもこうなのか?」
「我らはもともと宇宙海兵隊の船乗りじゃ。出世したいまでも昼は当番で作っておる……と言ってもたいてい婿殿かニーナが作るがな」
「ふむ……君ら面白いな」
「面白い面白くないじゃなくて。本来だったら下士官に尻蹴飛ばされながら仕事おぼえてる年齢なわけよ。だから偉そうにするのは頭ハゲてきてからでいいよねって話なわけ」
俺は席に座る。
やはり困ったときはあんかけ焼きそば。
冷蔵庫の在庫処分を兼ねて。
「ふむ。レオ王、君はこの世界をどう思う?」
「哲学的問いを考えてる暇なんか誰もくれないんですけど」
なんて俺はぼやく。
シャーロットであるが、周りが平気で食べてるのを見て、近衛に毒味させて、それから料理を口にした。
暗殺の危険を考えたのか、それともそういう決まりなのか。
なおレプシトールで食中毒で死にかかった俺とリコちに発言権はない。
「……レオ王よ。料理上手だな」
「へへーん!」
「婿殿の料理は美味しいのじゃ」
「嫁ちゃんありがとう」
「……ふむ、これが道化の適切な運用か。明るくていいな」
「そっちは違うん?」
「我が国はもうちょっとだけ暗いな。冗談は控えるように指示されている」
「なんでぇ?」
「発言が実現することが多いからだ」
あー、うん。
不謹慎ジョークが的中したことあるわ。
「我も発言によって事象が引き起されたとは思わぬが……心配するものは多いのだ」
なるほどねえ。
発言を重く受け止められすぎなのか。
たしかにそれは楽しくない。
ではどう運用するのかって言われると思いつかない。
俺たちなんてヨゴレなわけでさー。
そこまで上品な存在じゃないし。
そもそも直感は不幸を避けるためのものじゃない。
「そういやシャーロットはなんでこっちに来たの?」
「クロノス王に会いに来たというのもあるがな。聖女タチアナの噂を聞いての」
「いま病院だけど」
「ああ聞いた。聖女と会談したい」
「俺も同席していいならいいよ」
「頼む」
そして気づいちゃったんだな~。
シャーロットの近衛。
若い兄ちゃんが俺を見る目。
それは鬼神国人が挑んでくるときのにそっくりだ。
後で勝負しようぜって顔に出てるわー。




