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第六百四十六話

 イソノが走る。

 あ、コケた。

 まだ妊娠がわかっただけなのに。

 少子化だしうれしいのわかるけどね。

 嫁ちゃんもお顔がツヤツヤしてる。

 こりゃ銀河帝国から医師団呼ぶレベルだわ……。

 まだ妊娠初期だろが。

 と言いつつ、残った女子たちとプレゼントを選ぶ。

 ちょっと男子ぃッ! こういうときに役立たずになるのやめれ!

 クロノスの王位継承権であるが、子どもができる前に俺が死んだらイソノの子どもに王位継承権が移る。

 エディのとこでしょ、中島のとこでしょ……で、それでもダメならアマダのとこ。

 ちなみに「だめ」というのは断られたときって話ね。

 そんなわけでローザリア帝国どころではなくなったのだ。

 妖精さんが現われてスクリーンを乗っ取る。


「みなさんのアイドル妖精さんですよ~! は~い速報! ハナコさんは順調。このシゴデキ妖精さんは流れるようにイソノくんのご両親に通報……ご報告しました! おもしろ半分で!」


 悪魔かな?


「関係者のコメント読み上げます。まずはイソノくんのご両親『でかした! これで我が家は安泰ぞ!』」


 うーん、典型的帝国貴族のコメント。

 でも跡継ぎがいないと貴族は廃業の憂き目にあうから深刻よね~。


「続きましてレオくんのお義母様」


 待て待て。

 なんでそこでおかんが出てくるの?


「『はよ、子ども作れ』以上です」


「ねえねえねえねえ、なんか短すぎない?」


「えーっと、ご長男にサム兄様と婚約破棄が起こったようです」


 そういや二人とも婚約したって言ってたような。


「なにがあったん?」


「レオくんが王様になったので、ふたりとも平民と男爵家だと家格が合わなくなったようです」


「正直スマンカッタ」


 嫁ちゃんもうなずく。


「妾と軍閥が囲い込むから心配しなくてもいいぞ。あとカミシロ家な。来春から公爵家な」


「なじぇ!?」


 うちは公爵なんて柄じゃねえぞ!

 伯爵に降格なら理解できるが、昇格はねえだろ。


「領地の税収が公爵級になったのじゃ!」


「なじぇ!?」


「新しい高速輸送船の航路のおかげで帝都から通えるようになったのじゃ! ほれこの画像を見よ! 大都会じゃぞ!」


 表示されたのはやたら高いビルだらけの街の姿。

 もはや故郷の面影はない。


「うそーん! ちょっと待って、野生動物は?」


「人慣れしまくってるから人間と共存してるぞ。街作りから自然保護と両立させておる!」


 お、おう。

 動物たちはコンクリートジャングルに適応したか……。


「というわけでな。婿殿! 子ども作るぞ!」


「お、おう来いやー!」


 なんか色っぽさないな。

 ということでイソノは前線に出さない。

 子どもできたら要相談。

 なるべく出さない方向でね。

 毎日「イソノおめでとう会」をしつつ、ローザリア帝国との会談の日になった。

 予定を変更して嫁ちゃんと一緒に会談。

 銀河帝国皇帝の婿だっていう情報を確定してなかったみたい。

 そりゃそうね。

 俺でも「なんかおかしくね?」って思うもん。


「ローザリア帝国第三皇女、ハミルトンの娘シャーロットだ」


 惑星級の移動要塞の責任者は女の子だった。

 タチアナやワンオーワンと同じくらい。

 シーユンより少し上かな。

 服はキラキラドレスだ。


「クロノス王レオ・カミシロ・クロノスです」


「銀河帝国皇帝ヴェロニカじゃ」


 俺を見るとシャーロットは笑う。


「くっ、くくくくくくく、これは傑作だ! ゼン神族の間抜けどもが! 道化の能力者に喧嘩を売りおったな!」


「あ、そちらはジェスターの存在を知ってると」


「うむ、道化は知的生命体の進化系。原初の超能力者、その中でも王の能力者だ」


「はい?」


 自然発生したザリガニの珍種説浮上。

 完全にミステリークレイフィッシュじゃん。


「お主らは疑問に思わなかったのか? 道化などと言われてるくせに、やけに支配者向きの能力だと」


 たしかにそれは思った。

 だって民の幸福量で能力が左右されるなんておかしいじゃん!

 民が不幸になると命に関わるんだぜ!

 つまり善政を行わなければ勝手に死ぬ。

 そのくせ戦争にはめっぽう強い。

 盤面が大きくなればなるほど力を増す。

 この状態で負けるならどんな軍略家でも勝利は無理ゲーなわけ。

 まさに作為的としか思えない生き物なのだ。

 そこまで作為的だからこそ人工生物だと思ってたのだが……。


「先に言っておくが、道化を人為的に発生させる実験はことごとく失敗しておる。発生条件がわからんのじゃ」


「そりゃねー。銀河帝国も一割はジェスター因子持ちだもんね。でも見つかったのは俺たち三人だけだし」


 ってことは……。


「ローザリア帝国ってゼン神族の手先じゃないの?」


「あはははははは! 我らはゼン神族の敵! 新しき友よ。我らこそは道化の支配する帝国。反ゼン神族連盟の国家なり!」


「あー、えーっと、ゼン神族の嫌がらせを防いでたら領土が際限なく広がる悲劇の国家クロノスです」


「同じくゾークを倒してゆっくり子作りしたかったのに、こちらの銀河に進出するはめになった銀河帝国じゃ」


 というわけで敵ではなかった模様。


「ところで質問ッス」


「どうした?」


「シャーロット姫はもしかしてジェスター?」


「我が国は道化にしか皇位継承権はない。つまり我は道化じゃ」


 ジェスターが支配する国家の出現と身内の妊娠ラッシュ。

 って若い男女が暮らしてればこれは普通か。

 とにかく関係者が浮かれまくってるとこにジェスター放り込んだらどうなるか?

 なおジェスターの発生条件だが、因子持ちが多いところで大規模な不幸が発生する気配を感じると覚醒するんだと思う。

 これは言わないけどね。

 根拠がないから。俺が勝手に思ってるだけ。

 学者でも同じようなこと主張してる人もいるって程度の話だ。

 決して有力説じゃない。

 でも俺が完全に覚醒したのはゾーク襲撃が原因だ。

 タチアナはオリジナルが死亡後にクローンとして誕生したこと。

 アリッサも故郷の襲撃が原因だ。

 どれも覚醒理由は単純だ。

 不幸に傾いた世界の均衡を正すためだ。

 この俺の思いつきは自然発生説を裏づけるわけである。

 つまり覚醒したジェスターがいるローザリア帝国は……。


「貴国は戦争中ですね?」


「察しがいいなクロノス王よ」


 つまりそういうことなのである。

2巻4/20発売です!

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― 新着の感想 ―
嫁ちゃんといい感じになると新たな問題が起きるのは気の所為ですかね?最初の女で最後の女公約のせいで他の嫁達がががが・・・。
新しくジェスターに覚醒するような不幸が蔓延しないと継承権者増えないとか、世継ぎに困りそうな継承権制度だな…
ついに四人目のジェスターか……もうすぐトンチキ戦隊ジェスターファイブが完成するなw
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